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兆す15歳→16歳

55.ボーナスステージはR18テンプレ触手魔物とともに 1

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「あ、あああー!」
「なんなんだよ! ぁあんっ! んっ! ひっ!」
「ふ、服だけ溶けた?! 良くやった!!」

 こんにちは。現場はいきなりの阿鼻叫喚です。
 イヴが襲来した訳ではありません。
 そう、突然のスライム触手モンスターの出現です。

 つるりと不気味な光沢感があるゼリー状の体をどろどろと流動させながら蠢くそれ。
 ずるずると粘着音を響かせるスライムは、グニグニと形を変化させ沢山の突起を生やす。
 次の瞬間には、爆発するようにその突起を四方八方にのばした。

 触手は小柄で可愛らしい生徒の両手足に巻き付き固定すると、すぐさま他の触手が粘液をびゅっと浴びせるという完璧なコンビネーションを見せる。
 粘液はじゅわわ、と音を立て、小柄な生徒のなめらかな肌を焼くことなく服だけを溶かした。

 小柄な彼はもう布を纏っているのはぎりぎり股間部分だけ。
 触手はしっかりと股間の中へ。
 股間のもりあがっている部分がぐにゅにゅ、とうねっている。

「や、め………っんあ、……あッ! あ!」

 顔を真っ赤にした小柄な彼は涙目で堪えきれないとばかりに、熱く甘い声を漏らす。
 鮮やか過ぎて、賞賛さえ贈りたいくらいのテンプレえろ魔物の手口だ。

 突如として出現したえろ魔物に悲鳴を上げながら逃げ惑う生徒たち。
 しかし、視線は小柄な彼の乱れた肢体に釘付けだ。

 僕はアッシュとレオの背中越しにえろ魔物を眺めながら、現実逃避するように昼食後の光景を振り返った。

 たしか、かつらと眼鏡を取った僕の制服姿に興奮したレオとアッシュが絵師を呼ぼうと騒ぎ出した。
 そこでエリアスがクレイドル公爵邸にもう飾ってあることを説明し、その絵師を紹介することで落ち着いたんだ。
 あとは、学院の図書館を見学に行った。
 僕が探していた冒険小説の初版が置いてあって、初めて学院に入学しなかったことを悔いたよ。
 でもね、レオがこの小説は王宮の図書館にもあるからって、今度貸してくれるって約束してくれたの。
 学院よりは王宮のほうが近いから返却するのも楽だからよかった。

 あ、あれは面白かったな。
 薬草学教室の一番うしろの席に4人で座ってこっそり講義を聞いたり。
 本当にあっという間に時間が過ぎていったんだ。

 日が傾き始め、もう帰宅時間になったから、御者のマルゴーとの待ち合わせ場所である正門へと向かうことに。
 正門前の広場には巨大な噴水があり、その水しぶきにオレンジ色が溶けとてもきれいだったんだよ。
 今日は楽しかったなあ、とか思いながら4人でてくてく歩いていた。
 その時、ひりり、と皮膚がひりつく感じがしたんだ。
 なんとなく、ふと学院の学舎の方を振り返ると、噴水の前にドドメ色したもやもやがふわり浮かんでいる。

 見間違い?
 じっと目を凝らすと、もやが一気に広がり出す。

 僕が立ち止まったことに気がついたレオたち。
 でも、この禍々しい色をしたもやもやは誰も見えていない。

 疑問の声を上げる彼たちへ説明しようと唇に力を入れた瞬間。

 ビリビリと空気が震えだす。

 地響きとともに、ドドメ色のもやもやが集まり、凝縮し、どろどろとした形を取り始めた。
 気がついたときには、ぽよんっとした推定4mくらいの巨大スライムが噴水広場に出現。

「ヴァあああーーー」

 生まれ落ちた産声のように巨体を揺らしながら咆哮を轟かせる魔物。
 スライムって鳴くっけ?
 茫然とその見たこともない禍々しいスライムを見ながら、ぞぞぞと肌が粟立ち始めた。


 はい。あのときの現場からでした。
 高い壁もといアッシュとレオは鋭く魔物を見据えながらもう剣を構えている。
 エリアスも逃げ惑う生徒が落としたであろう剣を拾い、いつの間にか僕の背中を守るように剣を握っていた。

「なあ。魔物はあの巨体を動かし、なにかを探していないか?」
「たしかに。あの赤く光っている部分は目なのかもな」
「……先程から小柄かつ見目麗しい少年のみを捕らえていますね。ラズ様には劣りますが」

 アッシュとレオ勢い良く振り向き僕に強い視線を向けた。エリアスからも視線を感じるよ。
 なぜこのタイミングで睨みつけられたのか、よくわからず首をこてりと傾げた。

「「「ありうる!」」」
「魔物までもが……さすがラズだな」

 口元を引くつかせたレオがぽつりと呟く。
 3人が神妙に頷く姿がシンクロしている。

 背中から垣間見える魔物は触手を無数に伸ばし、本体はぐちょぐちょの半液体状へ形を変えていた。
 形をなさないそれは、何かを探し求めるように赤く光る目を巡らせ、グネグネと不気味に這いずり続けている。
 その間にも捕らえた体を欠かさず貪るぬるついた触手。

「いやあッ! ひっ、あうッ、ああぁぁ……」

 触手まみれの少年は悲鳴交じりに艶やかな声を叫びおわると、ぐったり気絶した。
 魔物は、大口を開けるように体をぱかぁと真っ二つへ分裂させ、食中植物のような動きでぐっちょリ濡れた彼を捕食した。

 ゴクンと丸飲みし、満足気にぷるるんと体全体を揺らす魔物。

 ひいやぁぁ。僕よりもラスボス感満載じゃないか。
 絶対勇者が最後に倒し、エンディングは感動的な夕日をバックに主題歌が流れるやつだな。

 でも、捕食した際、動きが止まったために半透明かつ不定形な本体内部にドドメ色した部分が確認できた。
 透けた体へ写りこんだ景色の色では無く、体の内部に形を持ちながら色がついている。
 考えられることは、魔物の核であり、あいつの弱点なのか。

 ピコンっ!

『Lv4《ボーナスステージ》をクリアしよう!』

 とんでもなく間が悪いウインドウの出現だ。

 ピコンっ!

『R18えろ展開を阻止するために触手魔物を討伐しよう!』
『クリア後step2回分の報酬を獲得できるよ! 頑張れ!』


 いやいや。R18えろ展開とか、R18えろ展開とか、よくわかんないな。
 速やかにあのえろスライムを討伐しなければならないのは理解した。

「ぐ……ッ! なぜか力が入らない……」
「っはぁ! これは瘴気か?!」
「……っラズさま?! ……大丈夫ですか?」
「え? 逆に聞きたいよ! みんなどうしたの?!」

 突然、苦しげな声を上げるレオやアッシュ、エリアスだ。
 僕を心配してくれているが、僕は至って健康だ。

 額に汗をかき前髪がくっついているレオ。剣を握る手が震えかなり苦しそうだ。
 アッシュも眉間にシワを寄せ、呼吸が不規則で乱れている。
 珍しくエリアスも何かを耐えるように目を細めている。

 それだけじゃない。
 いつの間にか淡いドドメ色のおどろおどろしいもやもやが辺り一帯に満ち覆っている。
 逃げ惑っていた生徒たちの多くが崩れ落ちるように倒れていく。

 最も濃いドドメ色のもやもやを纏うはえろスライムだ。
 そいつの体からドドメ色のもやが絶え間なく吹き出している。

 愕然としながらも、悔しいほどに僕しかこの魔物を倒せないと悟る。

「魔物の……瘴気は僕に効かないよ」

 見えないから。
 皆はこの瘴気の色を。
 魔物の弱点さえも。

 ピコンっ!

『R18えろ展開を阻止するために触手魔物を討伐しよう!』
『クリア後step2回分の報酬を獲得できるよ! 頑張れ!』

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