24 / 74
成長期の12才
24. 騎士団さんに経験値稼ぎに行きます
しおりを挟む「じゃあ、聖力を使う際に注意する点はわかるかい? イヴ?」
「あ、えっと。空っぽになるまで聖力を使い過ぎない。使いすぎると命に関わる……です」
「そう。だから、自分の聖力を上手くセーブし、無駄なくコントロールできるようにならないといけない。
限界まで聖力を使い果たし、気絶するなんてもってのほかだよ。
特に戦場では。」
がたごと馬車に揺られながら、聖女であるおじさまの『聖魔法』の授業が始まった。
向かいに座るイヴくんが、虚空を見上げ思い出しながら答える。
おじさまのありがたいお話を真剣に聞き入るイヴくんが、おずおずと質問する。
「そのコントロールする秘訣って……」
「実践あるのみ。言葉で表すのは難しいんだ。
聖力自体が見えないものだから、体で理解していくしかない。
そのため、私達『クレイドル』はこうして定期的に騎士団の治療院を訪問する。
様々な程度の怪我の治癒を経験することで、自分の『聖魔法』技術を磨くんだ。
そうして確かな経験を重ね、自身の力量を見極めることも大切な技術の一つ。
それに、ここなら騎士しかいない。
身元がはっきりしていない人間を君たち『クレイドル』の宝に触れさせるなんてありえないしね」
意外に家の家系ってスパルタ教育なんだよね。
クレイドル家は『聖魔法』に絶対的な自負? 自信を持っている。
そのため、生半可な技術の『聖魔法』を使うことを嫌悪する。特に本家直系であれば。
だからこうやって『聖魔法』の座学だけでなく、定期的に実践授業というのか修行に行く。
今日は、「聖女さまが神殿からの慰問」という名の王家に恩を売る形での騎士団へ訪問。
おじさまが未だ『聖力』コントロールがおぼつかないイヴくんに『聖魔法』の実践経験をさせたいってことでの参加だ。
ちなみに王家と神殿の仲は、ばちくそ険悪。
表立って争ってはいないが。
こうやって、お互いに寄付やら聖女の派遣だとかで恩を売り合うくらいだ。牽制が大人気ない。
僕達『クレイドル公爵家』は中立だ。争いを好む家柄ではないからさ。
神殿の象徴である聖女さまを担ったり、しきたりで王族と結婚したりね。
このどっちつかずな派閥でいられるのは『聖魔法』『聖力』を唯一血縁で継承可能だから。
そんな御大層な肩書をもつおじさまは、浮かれた表情で大げさな身振り手振りで僕を褒めだした。
「ラズはもうコントロールも完璧だし、無駄のないキレイな『聖魔法』をつかえるよね!
あのゴリ押しで大雑把な『聖魔法』しか使えないリヒトとは全然違う!
天才でかわいいなんてラズは天使!!」
「さすがラズ兄様!! 大好きです!!」
「あはは。ありがとう」
聖女さまであるおじさまくらいスキル的に優れると、他人の『聖魔法』に巡らせた『聖力』を感じとれるらしい。
僕は天才でもなんでもないんだよ。
おじさまでさえ見えない『聖力』や怪我が黒いもやもやとなって視覚で判断可能。
見えるものを抑えたり、増やしたりしているだけなんだ。
だからそれを能力として評価されてしまうのに、少し後ろめたさがある。嬉しいんだけどね。
けれど、色々なものが見えてしまう不思議な瞳の力は内緒。
お母さまと約束したし、『色無し』である僕がこんな力を持っていたと知れたら……。
「あっ! そうそう! 最後に確認だ。『聖魔法』の欠点は?」
「「病気と毒には効果が無い」」
イヴくんと声を揃えて答えたところで、馬車は王宮内にある王立騎士団訓練場に到着。
92
お気に入りに追加
806
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる