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成長期の12才 

24. 騎士団さんに経験値稼ぎに行きます

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「じゃあ、聖力を使う際に注意する点はわかるかい? イヴ?」
「あ、えっと。空っぽになるまで聖力を使い過ぎない。使いすぎると命に関わる……です」
「そう。だから、自分の聖力を上手くセーブし、無駄なくコントロールできるようにならないといけない。
 限界まで聖力を使い果たし、気絶するなんてもってのほかだよ。
 特に戦場では。」

 がたごと馬車に揺られながら、聖女であるおじさまの『聖魔法』の授業が始まった。
 向かいに座るイヴくんが、虚空を見上げ思い出しながら答える。
 おじさまのありがたいお話を真剣に聞き入るイヴくんが、おずおずと質問する。

「そのコントロールする秘訣って……」
「実践あるのみ。言葉で表すのは難しいんだ。
 聖力自体が見えないものだから、体で理解していくしかない。
 そのため、私達『クレイドル』はこうして定期的に騎士団の治療院を訪問する。
 様々な程度の怪我の治癒を経験することで、自分の『聖魔法』技術を磨くんだ。
 そうして確かな経験を重ね、自身の力量を見極めることも大切な技術の一つ。
 それに、ここなら騎士しかいない。
 身元がはっきりしていない人間を君たち『クレイドル』の宝に触れさせるなんてありえないしね」

 意外に家の家系ってスパルタ教育なんだよね。
 クレイドル家は『聖魔法』に絶対的な自負? 自信を持っている。
 そのため、生半可な技術の『聖魔法』を使うことを嫌悪する。特に本家直系であれば。

 だからこうやって『聖魔法』の座学だけでなく、定期的に実践授業というのか修行に行く。
 今日は、「聖女さまが神殿からの慰問」という名の王家に恩を売る形での騎士団へ訪問。
 おじさまが未だ『聖力』コントロールがおぼつかないイヴくんに『聖魔法』の実践経験をさせたいってことでの参加だ。

 ちなみに王家と神殿の仲は、ばちくそ険悪。
 表立って争ってはいないが。
 こうやって、お互いに寄付やら聖女の派遣だとかで恩を売り合うくらいだ。牽制が大人気ない。

 僕達『クレイドル公爵家』は中立だ。争いを好む家柄ではないからさ。
 神殿の象徴である聖女さまを担ったり、しきたりで王族と結婚したりね。
 このどっちつかずな派閥でいられるのは『聖魔法』『聖力』を唯一血縁で継承可能だから。

 そんな御大層な肩書をもつおじさまは、浮かれた表情で大げさな身振り手振りで僕を褒めだした。

「ラズはもうコントロールも完璧だし、無駄のないキレイな『聖魔法』をつかえるよね!
 あのゴリ押しで大雑把な『聖魔法』しか使えないリヒトとは全然違う!
 天才でかわいいなんてラズは天使!!」
「さすがラズ兄様!! 大好きです!!」
「あはは。ありがとう」

 聖女さまであるおじさまくらいスキル的に優れると、他人の『聖魔法』に巡らせた『聖力』を感じとれるらしい。

 僕は天才でもなんでもないんだよ。
 おじさまでさえ見えない『聖力』や怪我が黒いもやもやとなって視覚で判断可能。
 見えるものを抑えたり、増やしたりしているだけなんだ。
 だからそれを能力として評価されてしまうのに、少し後ろめたさがある。嬉しいんだけどね。

 けれど、色々なものが見えてしまう不思議な瞳の力は内緒。
 お母さまと約束したし、『色無し』である僕がこんな力を持っていたと知れたら……。

「あっ! そうそう! 最後に確認だ。『聖魔法』の欠点は?」
「「病気と毒には効果が無い」」

 イヴくんと声を揃えて答えたところで、馬車は王宮内にある王立騎士団訓練場に到着。
 
 
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