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はじまりの10歳
5. やり直しの初めまして1
しおりを挟む目が覚めたら、また知らない天井で。
しかも黒色と金色をふんだんに使用した繊細な模様が描かれる、厨二病チックな趣味の悪い天井。
ちょーっと、いや、かなり引きながらその天井を見ていた。
あの自分の成長した姿を見た瞬間に、目が眩むほどの眩しい光に包まれた。
同時に耳に流れ込むウインドウの通知音と機械的な音声。
たしかログインボーナスとか言ってたよね。
ということは、あの悲惨極まりない世界を見せられたことが、ゲームでいう報酬的なものなのかな。
じゃあ僕は、やっぱり良くラノベとかであるお話の『ゲームの世界へ転生』したってこと?
あのウィンドウや変な指示は、この世界がゲームの中だからなのかな。
『ラスボス』
そう言うにふさわしい禍々しいオーラを纏う成長した僕の姿。
僕はこのままだと未来はラスボスになっちゃうのかな。
いやだな。
お父様やお屋敷の使用人さんたち、唯一のお友達のアッシュとか皆を殺したくもないし、この世界も壊したくないよ。
どうしたらいいんだろう。
「お、起きたのか?」
小さな掠れた声が落とされ、声の方へ向くと、僕の目の前には婚約者の彼。
きれいな夏空色の瞳が暗く曇って、今にも大雨が振りそうなくらい。泣きそうなお顔。
「う……ん。ごめん……ね。けほっ」
なんだか喉がすっごいイガイガして、声を出すのにもたついた。
喉に言葉がひっかかったみたいに咳がでた。
「ま、まだ、苦しいのか? く、薬師を……」
なんでこの子のほうが苦しそうなお顔をしているんだろう。顔色も悪いし、目の下に隈もあるしさ。
大丈夫だよの意味を込めてにこ、と笑いかけた。
「ば、ばか! 無理して笑うなっ! か、かわ……」
今度は笑いかけたらお顔を真っ赤にして、怒りだしちゃった。この前のお茶会の時とは全然印象が違う。
冷たい子なのかと思っていたら、心配してくれたり、プンプン怒り出したり表情がくるくる変わって面白い。
それに……、さっきからずっと手を繋いでくれているんだ。
手がぽかぽかするなぁって思っていたら、ぎゅうと包み込むように優しく握ってくれている。
「えへへ、ねえ。手を繋いでいてくれてありがとう」
「あっ……、離すなっていったから。ら、らずがぁ……」
お名前呼んでくれた! すっごい照れ臭そうにだけど! 嬉しい。
この子ともお友達になれるかな。
よいしょっとなんだかすっごい重い体を起こす。
まごまごと赤ちゃんに戻ったみたいにぎこちなく体を動かしていたら、さっと背中に腕を差し入れて支えてくれた彼。
そのまま手をまたつなぎ直してくれる。さりげない優しさが嬉しくて、ついついへらりと頬が緩む。
とても温かい繋がれた手に視線を落とし、彼を見ると照れ臭そうに真っ赤なお顔を逸らされちゃった。
「あのね。僕もお名前で呼んでもいいかな?」
ちゃんとこっちを向いてほしくて、繋いだ手をふりふりしながら首を傾げのぞき込んだ。
「いい、ぞ……」
「ありがとう! レオン? レオ? どっちにしよう……」
「どっちでも……」
「あー、じゃあ、だれも呼んでいないのはどっち?」
「……レオ」
良かった。答えてくれた。真っ赤なお顔がさらに、赤くなっちゃったけどお部屋が暑かったかな。
「じゃあ、僕だけが『レオ』って呼ぶね! レオ!」
「あ、ああ。」
「ふふっ! 仲良しさんの婚約者みたいだね!」
「ぴっやぁ」
レオがお顔真っ赤にして、変な声出したらお布団にぽすんって音を立て顔を埋めちゃった。
レオは眠かったのかな。だからさっきから、口数も少なかったのかも。
ん? それはさっきと一緒かも。
でも、レオが眠いんだったら僕だけが寝ているのも悪いし、一緒にベット入ればいいよね。
大きいベットだし、レオは大きいけど大丈夫。
「レーオ。僕と一緒に⸺」
「ラーズ!!」
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