黒き死神が笑う日

神通百力

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廃病院

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「心霊スポットに行こうぜ!」
 佐伯さえきは家に来るなりそう告げた。佐伯は心霊スポット巡りを趣味にしており、頻繁に俺を誘ってくる。俺が心霊系を苦手としていないからだろう。
「別にいいけど」
「決まりだな。それじゃ行こうか」
 佐伯は言うなり家を出た。俺は慌てて追いかけ、佐伯の車に乗り込んだ。
 目的地に向かう道すがら、佐伯に心霊スポットの情報を聞いた。心霊スポットは廃病院らしく、ほんの十年以上前までは経営していた。しかし、火事により半焼してしまい、廃墟と化したそうだ。
 しばらく道路を走っていると、廃病院が見えてきた。建物は半壊しており、全体的に黒ずんでいた。
 佐伯は車を路肩に停めて、足早に敷地内に入っていく。俺も後に続き、敷地内に足を踏み入れた。
 建物の中に入ってみると、辺り一面に瓦礫が散らばっていた。
「ネットによると二階のナースステーションで女性の声が聞こえるらしい。まずはナースステーションから見ていこうぜ」
 佐伯は瓦礫を避けながら進んで階段を上がる。階段にも瓦礫が散らばっていたため、俺は慎重に階段を上がった。階段の斜め先にナースステーションがあった。
 俺たちはナースステーションの内側に入った。この場所で女性の声が聞こえるらしいが、本当に聞こえるのだろうか? 

「……助けて」

 訝しんでいると、突然女性の声が聞こえた。俺は佐伯と顔を見合わせる。その瞬間、誰かに肩を掴まれた。俺は驚いて後ろを振り返った。そこには全身が焼けただれたナース服姿の女性が立っていた。
 俺たちは同時に悲鳴をあげ、その場から逃げようとした。しかし、強い力で肩を掴まれてしまい、逃げることができなかった。
 女性はジッと俺たちを見ていた。

「……熱いよ」

 女性はどこか物悲し気な表情で呟いた。
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