黒き死神が笑う日

神通百力

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AV

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 俺は最近できたビデオショップでAVを購入した。
 帰宅の最中、足取りが軽くなるのを感じた。なにせAVを購入するのは今日が初めてだ。いったいどんな感じなのだろうか?
 ビデオショップから家までは歩いて五分ほどの距離であり、すぐに家に到着した。
 俺は早速ビデオデッキにAVをセットし、電源を入れた。
『は~い、私はAV女優の南雪希みなみせつきです! 今回紹介するAV機器はこちら!』
 テレビ画面の中で若い女性が両手を盛大に広げ、台の上に置いてあるテレビを指した。
『一見何の変哲もないテレビに見えますが、なんと防水加工がされているんですね』
 若い女性がテレビに触れながら、説明した。
「はぁ? 何だよこれ?」
 俺は改めてAVのパッケージを確認した。そこには『可愛いAV女優(AV機器を紹介する女優のこと)が最新のAV機器を紹介』と記載されていた。ちゃんと確認しなかった俺も悪いが、パッケージに水着姿の若い女性を起用するのもどうかと思う。騙す気満々だろう。紛らわしい事しやがって、金返せ。
『風呂場に持ち込めば、入浴しながらテレビが観れるんです!』
 壁に設置するタイプで良くないか? これならわざわざ持ち込まなくていいし、手間が省ける。本当にこのテレビは最新なのか?
『もちろんそれだけじゃありません!』
 若い女性はいきなり服を脱ぎ、水着姿になった。なるほど、それで水着姿だったわけか。わざわざ服を脱ぐくらいなら、最初から水着姿で良かったのではないかと思うけれど。
 若い女性はお湯で満杯の水槽にテレビを沈めた後、水槽に入って湯に浸かった。それからテレビに肘を乗せた。
『ご覧のとおり、肘掛けにも使えるんですよ』
 浴槽に肘を乗せれば済む話だろ。ってかそれだとテレビが観れねえじゃねえか。それにコンパクトサイズならまだしも、そこそこ大きいテレビを浴槽に沈めたら邪魔で仕方ないだろ。
『それじゃテレビが観れないじゃんと思うかもしれませんが、テレビ画面を上にすればノープロブレムですよ』
 問題だらけだわ。頭を下げないと観れねえだろ。ずっとそんな体勢をしていたら、首が痛くなる。そもそもお湯の中に入れて音は聞こえるのかよ。いくら防水加工されているとはいえ、果たして聞こえるものなのだろうか? 水に濡れても壊れないってだけなのではないか?
『さらに座ることだってできるんですよ!』
 座ってどうするよ。そんなのテレビの使い方じゃねえだろ。椅子の使い方じゃねえか。
『今なら私の写真集もついてきます。テレビと写真集がついて、ちょうど4444円です!』
 それのどこがちょうどなんだ。4が4つ並んでて怖えし。あと写真集って何だよ。誰得なんだよ、それは。テレビにしては安すぎるし、赤字になるんじゃないのか?
『私がお宅まで配達し、手取り足取り教えちゃいます! お申し込みは×××まで。お申込みお待ちしてます!』
 そこでAVは終了した。……申し込めば、南雪希とやらが配達しに来て手取り足取り教えてくれるのか。けっこう可愛かったよな。
 俺は覚悟を決め、ポケットから携帯電話を取り出し、電話を掛けた。

「テレビを申し込みたいのですが――」
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