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◆第一章◆
Episode04: 夢ニ想フ
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「アニキ! イイもの盗ってきた!」
満面の笑みを浮かべるは武東慎司――俺の弟だ。
俺は何も答えず、頭を撫でてやる。
あの頃は充実していた。
やっていたことは人の道を外していたかもしれない。だが、下層には家族の温かさが確かに存在した。
「兄さん、私も」
妹の結良が持ってきたのは、何枚かのコインだった。
結良には追いはぎなんて所業はできないので、下層の隅々を回って猫糞させていたのだ。
「よくやった」
これで今日もメシが食える。
メシが食えなくなった時、人間は終わる。
おとなしく死ぬか――もしくは抗って誰かを犠牲にするしかなくなる。
その頃の俺は、誰も殺さずにメシが食えるのなら、それでいいのだと思っていた。
義父が、俺だけをを拾うまで……。
下層――当時はまだ第二十五層まで存在した下層区域の底辺層、第二十二層。
今も昔も変わらない――変わらないことでしか生きられない者たちの区画。
俺は、こうして生きていたのだ。俺が拾われて、そして弟妹を見捨てるまで――。
* * *
夢から醒める。
酷く喪失感を覚えた。
「…………」
在りし日の記憶。
最近、また夢に見る頻度が増えてきた気がする。
第二十二層が水没すると聞いた日から――。
今日もクロノスへ行かなければならない。
気怠い体に鞭打って適当な朝食をとると、俺は家を出た。
満面の笑みを浮かべるは武東慎司――俺の弟だ。
俺は何も答えず、頭を撫でてやる。
あの頃は充実していた。
やっていたことは人の道を外していたかもしれない。だが、下層には家族の温かさが確かに存在した。
「兄さん、私も」
妹の結良が持ってきたのは、何枚かのコインだった。
結良には追いはぎなんて所業はできないので、下層の隅々を回って猫糞させていたのだ。
「よくやった」
これで今日もメシが食える。
メシが食えなくなった時、人間は終わる。
おとなしく死ぬか――もしくは抗って誰かを犠牲にするしかなくなる。
その頃の俺は、誰も殺さずにメシが食えるのなら、それでいいのだと思っていた。
義父が、俺だけをを拾うまで……。
下層――当時はまだ第二十五層まで存在した下層区域の底辺層、第二十二層。
今も昔も変わらない――変わらないことでしか生きられない者たちの区画。
俺は、こうして生きていたのだ。俺が拾われて、そして弟妹を見捨てるまで――。
* * *
夢から醒める。
酷く喪失感を覚えた。
「…………」
在りし日の記憶。
最近、また夢に見る頻度が増えてきた気がする。
第二十二層が水没すると聞いた日から――。
今日もクロノスへ行かなければならない。
気怠い体に鞭打って適当な朝食をとると、俺は家を出た。
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