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28話・クリスマス

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「おい赤井。まさか西村とへんな事はしてないだろうな?」

 と、クリスマス当日の待ち合わせ場所でそれを風祭に言われていた。今日の風祭は勝負服と決めているのか寒い中でも白いミニスカートだ。グレイのコートを着ていてインナーはブラック。慣れないであろうヒールも履いていて、薄く化粧もしておりナチュラルなメイクが似合っている。

「……あのな。お前が心配してる性行為はしてない。お前こそ俺と唯を追っかけてねーだろーな? それこそへんな事だぜ?」

「昨日は自宅で筋トレしていただけだ。私はもうストーカー行為はする必要が無いからな」

「そうかよ。なら行くぞ。お前が行きたい所がどこか楽しみだ」

「そう言われると……照れるな」

 どこがだ? と思いつつ、誠駅から風祭と歩く。誠駅のイルミネーションも夜になれば、かなり光り輝いて綺麗なんだ。今日は昨日の夜のようにホテルから見下ろす事は無いだろう。唯が天なら風祭は地だ。それは底辺という意味じゃなく、しっかり地面に足がついているという事。

「誠駅の中も今日は混んでるな。離れるなよ」

「手! ……手を繋いでいいのか?」

「唯とは繋いでるから風祭とも繋ぐ。嫌なら離すぞ?」

「いや、頼む! 私ははぐれる可能性のある女だからな!」

「痛いぞ風祭。少し力を弱めろ」

 興奮している風祭は手の握る力が強かったが、今は安定している。俺達はデパートで風祭に似合う洋服を見たり、二人でイベント会場のクリスマスソングを聞いたり、ケーキバイキングに入ったりした。
 華やかなクリスマスモードの誠駅ナカ施設を楽しんでから、風祭の目指す次の目的地に向かっている。しかし、電車に乗るわけでもなくバスにも乗らない。むしろ、自宅からの道を戻ってさえいる。

「あれ? 何で誠駅から俺達の住むマンションに戻ってんだよ?」

「私のデートコースは自宅だ。外では会った事があるが自宅ではまだ無いからな。どうせなら誰にも見られない自宅もいいんじゃないかと思ったんだ。外は人が多くて……落ち着かない」

 確かに、カップルだらけだと風祭も落ち着かないんだろ。俺もそうだけど。電気工事車両が止まるマンションに入る。そして風祭の部屋に向かった。

(てーか、何故唯と同じパターンなんだ? やはり似た者同士という事か……)

「どうした赤井? 誰もいないし入ってくれ」

 そうして、自分の住んでいる別の階の部屋に入った。風祭の部屋に通されると、そこは普通の女の子の部屋だった。かわいい小物が多く有り、ウサギのぬいぐるみまである。筋トレグッズはおそらくベッドの下あたりに隠してあるんだろ。不自然にボードで塞がれてる。そして、壁にある一枚の額の中のレシートを見てしまった。

「おい風祭……何故レシートが額に飾られている?」

「あれは赤井との初デート記念のカフェのレシートだ。あんな紙切れでも私にとっては大事な物なんだ。今日は二人で買い物をしたからコレクションが増えたぞ」

「そう……か」

 思っていた以上に風祭は俺との思い出を大事にするようだ。こんな事をするまでとは思わなかった。やはり大人しい女の子が、筋トレに励んで風紀委員会をするまでになる気持ちの強さとは凄まじい。

(愛され過ぎて怖いぐらいだ。風祭も暴走しないといいがな)

 そうして、風祭は飲み物とお菓子を持って来ると言い、俺は座布団に座った。マンションの外には電気工事をしてる音がした。

「そういや、今日はマンションの電気工事の日だったか。クリスマスだってのにご苦労様だぜ」

 すると、風祭が部屋に戻って来た。

「お、お待たせ……」

「おう……え? あ……うぇ!?」

 肌が露出した赤いクリスマス衣装に着替えてやがる! 胸元は大きく空いていて、肩は丸出しだ。まるでエロいキャンペーンガールのようなクリスマス衣装に着替えていた。

「どうした風祭。攻め過ぎてるぞ」

「昨日は西村の奴が攻めてるだろうからな。私は西村のような余裕もオシャレさも女子力も無い。なら、このだらしない身体を使って攻めるしかないと思ったんだ。気に……いらないか?」

「いや、最高だ」

 前かがみになる風祭の巨乳のプレッシャーは核兵器だ。アレを見続けていたら理性が飛ぶぞ。変な空気にならないように、早めにジュースで乾杯をしてから雑談をした。
 風祭は本当に俺を思っていてくれて、大人しい自分を変えてくれた恩人だと言われた。俺個人としては何もしていないが、風祭にとってはレッドだった頃の俺は英雄だったそうだ。

「……こんな俺をそこまで好きでいてくれて感謝するよ。今日は色々話そう。そして風祭がしたい事をしよう。今日は風祭の愛に少しでも答えたいと思うよ」

「ありがとう赤井。なら……抱き締めさせてくれ」

 身を乗り出した俺は風祭を抱き締めた。こんな事でいいなら今日はいくらでもしてやる。愛が詰まったような風祭の肉体は俺の心を癒してもいた。そして、風祭お手製のチーズケーキとアップルパイなどを食べながら普通の恋人のようにくだらない話などをして盛り上がった。

「風祭は唯や東堂と話していた時に、俺と一緒に仕事をしたいような事を言ってたよな? 俺はおそらくスポーツインストラクターを目指すと思う。風祭もその為にジム通いとかもしてるのか?」

「そうだ。私もスポーツクラブなどのインストラクターに興味がある。赤井の仕事と同じ夢に興味があるんだ」

「本当にそれが風祭にとって興味があるならいい。だけど、まだ高校一年だ。それにお前は俺に影響され過ぎてる面がある。しっかり自分の心で未来を決めてくれ。そうじゃないと、俺は風祭を選ばないと思う」

「……」

 え……? と風祭は奈落に突き落とされた顔をしていた。けど、この時だからこそ言わなきゃならない。風祭は適当な恋愛掃除相談の相手じゃないからだ。

「キツイ意見かも知れないが、大事な事だから言った。互いの未来の為にな。それだけはわかってくれ」

「そう……だよな。確かに私は赤井に影響され過ぎているのかも知れない。私は東堂さんのような自分の世界も、西村のような社長になろうなんて欲も無い。でも、普通の私でも赤井を望んだんだ……そして、今その願いは目の前にある」

「あぁ、わかってる。大丈夫だ風祭。お前はお前のままでいい」

 そっと泣きそうな風祭の両手を取り、ゆっくりと伝えた。そうして、俺はグレイになった俺を知った時の事を聞いてみた。

「誠高校に入学してまさかの再会になっただろう? そこで憧れの俺がグレイと知った時、風祭は幻滅しなかったのか?」

「……少しはな。けど、それには何か理由があると思った。その理由をそれとなく探ろうと同じマンションを理由に近づいていたが、あまり効果は無かった。二学期になって西村が現れた時、私は凄く西村が羨ましかった」

 風祭は唯にかなり嫉妬していたのを告白した。二学期から現れて、昔の知り合い程度で女に反応しない俺を混乱させていたのが気に入らなかったようだ。そして、元カノというショッキングな事を聞いてから絶対に唯には奪われたくないと思ったらしい。そうこうしてる間に、東堂まで現れてたからどうにかして勝たないといけないと思い、最近は化粧の練習もしていたようだ。そして、風祭は凄く大事な話をした。女にとって大事な話だった。

「私は処女だ。初めては赤井じゃなきゃ嫌だ。私は……セックスする相手は赤井がいい。例え遊びでも性欲処理でもいい。この私のだらしない身体は、赤井に抱かれる為にある。だから赤井……未来の赤井が愛していなくてもいい。いつか私を抱いてくれ」

「風祭……」

「赤井……お前の子をくれ」

 そうして、俺と風祭は風祭のベッドへ入る。互いに服を脱いで下着姿になった。暖かい風祭の身体をそっと抱く。全てを告白して震えている風祭を優しく包み込んだ。

「風祭。ここが今の限界だ。これ以上は無理だ。唯にも東堂にも嘘をつく事になる。キスと抱き合うまでで許してくれ」

「でも……下の硬くなった赤井は私を求めていないのか?」

「当然魅力的な風祭を求めてるし、セックスしたいさ。でも俺は風祭をこのまま抱いても、虚しさが残る。確かに唯には先を越されてるかも知れないが東堂もいるんだ。そこを考えてくれ」

「なら……私も下の赤井が見たい。西村は見たんだろ?」

「そうだな。なら……仕方ないから見てくれよ。ただし、パンツは自分で下ろしてくれ」

 そのまま布団の中で俺は風祭にパンツを下された。そのパンツをじっくり観察する風祭は股間のシミを見て匂いを嗅いでいた。嗅ぎすぎだよ……と思っていると、俺の匂いを覚えた風祭は布団の中に潜り込んだ。

 とうとう見られるのか……と思っていると目の前がブラックアウトした。

「停電!? これは部屋の停電だな。風祭、ブレーカーは……」

「えーと、玄関の方だ。私が行こう」

「いや、俺の住む部屋と同じ作りなら玄関の左上だろ? 俺が行くよ。安心してベッドで待機してろ」

 そう言うなり真っ暗な部屋からゆっくりと動いた。数歩歩くと、電気がまた付いた。

「お! ラッキーだったな……あ、そうだ。そういえば今日このマンションの電気工事があったな……」

「赤井……感謝する」

「……え?」

 真っ赤な顔をした風祭は一つの場所だけを凝視していた。電気が付いた事で下半身丸出しの俺は風祭の願いを叶えていたようだ。すぐにパンツを履いてエロモードから脱出する。そして、風祭の処女の件についての答えを話す。

「……とりあえず風祭が初体験は俺じゃなきゃ嫌な気持ちはわかった。俺は三人の中で風祭を選ばなくても抱く事を約束する。だから今日はここまでだな」

 ベッドに風祭を押し倒してキスをした。

『……』

 互いの唾液が絡み合うような、濃厚に愛し合うなキスをした。風祭の気が……俺の気が済むまでベッドの上でキスをし続けた。

「赤井……もっと……」

「俺ももっとしたい」

 風祭朱音という女は俺に愛を与えてくれた。そして、俺も風祭朱音に対しての「愛」が芽生えていたんだ。
 そうして、クリスマスの夜は俺を愛する女をキスで愛して終わった。
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