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6章 二人暮らし
25話
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「志田くん、どうしてバイトしてるの?」
土曜日も関わらず、志田は出かける支度をしていた。
「大学進学のため」
「え? お父さんが出してくれるんじゃないの?」
志田は母が出てしまっているけれど、父から家を預けられ、生活費をもらっていた。
「そうだけど、それくらい自分で出さないとな」
さすがは志田。
独立心の高さはこういうところにも出ている。
普段からしっかり自炊。平日は塾や予備校に通わず自分で勉強。土日はこうしてバイト。
きっちり自分で完結しようとしている。
「私もバイトしないとな……」
今は完全に志田家の居候。
いや、寄生虫。勝手に居座り、おいしいところだけ吸い上げている。
「バイトしたいの?」
「したいかと言われると、そうでもないけど……」
新しいことを始めるのは正直こわかった。
どこでも誰に対しても最高な自分を出そうと思うようになってしまっていて、それが多いだけやっぱり負担になっていた。
バイトとなると、それは大人の仲間入り。子供が必死に頑張ったところで、大人に勝る活躍なんて簡単にできない。
「じゃあ、やらなくていいんじゃないか?」
「そういうわけにもいかないよ。せめて食費ぐらいは出さないと」
「別にいいよ」
「ダメダメ! 私甘えすぎじゃん」
「それなら、返したいときに返してくれればいい。高校生なんだから無理にバイトすることないだろ。するにしても、自分のために取っとけ。これからどうなるかわからないんだし」
志田の言う通りなのもしれない。
家出をしてしまった真理子はほぼ一文無し。お小遣いなしで生きていくのはちょっと厳しい。
「じゃあ、バイト行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい!」
手を振って志田を送り出す。
その様子はまるで新婚夫婦のよう。
うれしくて恥ずかしい。さすがに行ってらっしゃいのキスをする勇気はないけれど。
「見せかけの私と違って、志田くんは将来まで考えていてすごいな……」
自分のことは全部親任せだったから、先のことは全然考えたことがなかった。
その親から離れてしまった以上、あとは自分で決めないといけないが、これで大学進学はかなり厳しくなった。
国立大学を狙うなり、奨学金をもらうなり、方法を考えておかないといけない。
「まずはお金、って思うけど、ちゃんと調べてからだ」
土曜日も関わらず、志田は出かける支度をしていた。
「大学進学のため」
「え? お父さんが出してくれるんじゃないの?」
志田は母が出てしまっているけれど、父から家を預けられ、生活費をもらっていた。
「そうだけど、それくらい自分で出さないとな」
さすがは志田。
独立心の高さはこういうところにも出ている。
普段からしっかり自炊。平日は塾や予備校に通わず自分で勉強。土日はこうしてバイト。
きっちり自分で完結しようとしている。
「私もバイトしないとな……」
今は完全に志田家の居候。
いや、寄生虫。勝手に居座り、おいしいところだけ吸い上げている。
「バイトしたいの?」
「したいかと言われると、そうでもないけど……」
新しいことを始めるのは正直こわかった。
どこでも誰に対しても最高な自分を出そうと思うようになってしまっていて、それが多いだけやっぱり負担になっていた。
バイトとなると、それは大人の仲間入り。子供が必死に頑張ったところで、大人に勝る活躍なんて簡単にできない。
「じゃあ、やらなくていいんじゃないか?」
「そういうわけにもいかないよ。せめて食費ぐらいは出さないと」
「別にいいよ」
「ダメダメ! 私甘えすぎじゃん」
「それなら、返したいときに返してくれればいい。高校生なんだから無理にバイトすることないだろ。するにしても、自分のために取っとけ。これからどうなるかわからないんだし」
志田の言う通りなのもしれない。
家出をしてしまった真理子はほぼ一文無し。お小遣いなしで生きていくのはちょっと厳しい。
「じゃあ、バイト行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい!」
手を振って志田を送り出す。
その様子はまるで新婚夫婦のよう。
うれしくて恥ずかしい。さすがに行ってらっしゃいのキスをする勇気はないけれど。
「見せかけの私と違って、志田くんは将来まで考えていてすごいな……」
自分のことは全部親任せだったから、先のことは全然考えたことがなかった。
その親から離れてしまった以上、あとは自分で決めないといけないが、これで大学進学はかなり厳しくなった。
国立大学を狙うなり、奨学金をもらうなり、方法を考えておかないといけない。
「まずはお金、って思うけど、ちゃんと調べてからだ」
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