大きなトラさんに捕まった

01ー出会い

05

ヤバいと思った。
本能的な恐怖で自然と体が震える。
冷や汗が吹き出てくる。

(そ、うだ…彼らは会話できるし、人に近いと思ったけど獣でもあるんだ…。
しかもトラって肉食っ…)

私は「なぜオズワルドさんが殺気を放ち始めたのか」を疑問に思う暇なく失神した。


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「うっ……」
「よかった。気がついたんだね…」

次に目が覚めると、扉の前にハイザックさんがいた。部屋を見渡すがオズワルドさんの姿がない。

「あの…オズワルド、さんは？」
「あぁ、ちょっと頭冷やすように外に出しているよ。」
「何故イスに縛られてるんですか…？」
「うん。まぁちょっとね………」

そう言ってハイザックさんは曖昧な表情を浮かべる。そのままではやはり窮屈だろうと思い、ベッドから起き上がり、ハイザックさんに近づこうとすると 

「だ、大丈夫だから！本当！だから近づかないでくれっ！！」

私は病原菌か何かか！？と思い、少しムッとする。それに気づいたようで慌ててハイザックさんが弁解し始める。

「あっ、いや君に問題があるんじゃなくて、これ以上近づくとオズワルドに怒られるから…」
「そういえば、さっきもオズワルドがオズワルドがって一体全体何なんですかっ！？」

「えっと。いや…。そのね…」

我慢できなくなり、声を荒げて言うと、ハイザックさんが少しつっかえながらも、真面目に話し始めた。


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ハイザックさんが言ったことをまとめると、 

・迷い人、つまり異世界人は割とハイペース(数十年に一度)で現れる。
・迷い人の返し方はわかっておらず、元の世界に帰ったという話しは聞いたことがない。

・獣人には一生のうちただ一人の相手と番う。
・番とは運命により決められた花嫁のような者。
・獣人のオスは番と出会えないor番を失うと亡くなってしまう。(冗談ではない)
・獣人が18～22歳の間に番と出会うのが一般的。
・30歳までに出会えないと一人身、つまり一生お一人様が確定する。
・オズワルドさんは番探しに4年も旅し続けた。
・オズワルドさんは今日30歳を迎える。
・オズワルドさんの番は私である。

「……………。」

『帰れない』ことは、召喚とかではなかったから納得だった。
家族や友人ともう会えないことは、実感が湧かない…。
ただ感傷に浸る間もなく、獣人こちらがわの情報がどんどん入ってきた。

思った以上に重かった。
特に番を失ったり、番に出会えなかったりした人の下りがヤバかった。
もはや狂人じゃないかと思うぐらいだった。

あと、だからさっきオズワルドさんからあんな殺気が放たれたのか…と思った。

(長年探し続けて、もう見つからないのかと諦めかけてたんだもんね…。
まるでドラマみたいに、time limit ギリギリで見つかったら、絶望の淵から舞い戻ったようなもんよね…。
なのにあんなこと言われたら、拒絶されたと思っても仕方ないし。もう一度どん底に落とされるようなもん…いや、私の場合帰るってことは二度と会わないってことだから、オズワルドさんにしたらもっと重いことなんだ…)

何となくオズワルドさんの状況を理解すると、自分の発言を思い返し謝りたくなった。

(私はこちらの人間じゃないから、帰れるか聞いてしまったことは仕方なかったと思う。
でも、だから傷つけても仕方ないってことはないと思う。

それに…もう帰れないなら…前を向かないといけないよね……っ)

自分なりに気持ちを整理し、まっすぐハイザックさんを見て告げた。

「…わかりました。とりあえず、オズワルドさんと話をさせてもらってもいいですか…？」