おれのツガイ

青空ばらみ

文字の大きさ
上 下
19 / 23

19. タヌキなのか?

しおりを挟む
 ここ国境沿いの集落は、どちらかというとドワーフ族よりだということ。

 もう純粋なドワーフは少なく、人族やエルフ族、あとハーフの人と結婚しているドワーフが大半だと話してくれた。
 それによって背の高い者が多くなり見た目でわかりにくくなったと、カベルネたちにペクメズが教えている。

「まあエルフ族だけは、純粋なエルフ族を一族で代々守っているところがあるけどね。それは寿命が長いからしょうがないのさ。どこもいろいろ、たいへんなんだよ」

 そこで、カベルネが反応して。

「そういえば、ひい爺ちゃん。サンジョ爺ちゃんの奥さんはもう死んでいないよな? ひい爺ちゃんは元気なのに、ひい婆ちゃんが死んでいるのは寿命の違いなのか?」

 孫の質問にガメイがこたえていた。

「ああ、そうだ。ワシの母親は人族だったから寿命が短い。九十八歳で死んでしまった。父さん、サンジョ爺ちゃんはそれから、四百三十五年間ひとりだ」

 サンジョの子どもガメイが、孫のカベルネに説明すると。

「うわーっ それはサンジョ爺ちゃん、つらいな……」

 おれも、そう思う。

 竜人はツガイ、相手の寿命も引き上げるから寂しくないが、他の種族にはそれがない。
 純粋なエルフなら千年は生きるし、ドワーフ族でも八百年は生きる。
 人族は長くて百年…… やっぱり、つらいだろう。

「んっ、なんともないぞ。ヴェーゼはワシの心の中にずっといる。子も残してくれた。カベルネ、おまえの目はヴェーゼに…… そっくりじゃ。結婚してからの八十一年。知り合ってからだと、八十二年の間がワシのすべて、宝なんじゃ。ワシらはいつでも二人でひとつじゃ」
「そうだった…… 母さんはそう…… よく父さんとのことを二人でひとつだと言っていたな…… 思い出したぞ……」

 ガメイがうっすら目尻を光らせていた……

 いろいろ話していたようだが、ペクメズが最後パールに教えている。

「パールさん、迷い人は『歴史の証人』といわれているんですよ。迷い人はエルフ族より長生きでしょ? だから、あなたはこれから、エルフ族にもドワーフ族にも大切な友として扱われます」

 大切な友…… それはおれも知らなかったな。

「そうなのか? じゃあパールは、オレより長生きなのか?」
「たぶんね」
「そうじゃ、パール殿! カベルネの嫁にきますかな? 歳も近いし気も合っているみたいじゃしな」
「「「それはない!!」」」

 なんてことをガメイは言うんだ?!

 わざとだな!? 

 そうだ、そうに決まっている……
 おれと重なった言葉に、パールとカベルネがおどろいているじゃないか!

「カベルネ、きみはコウジュと仲がよかっただろ? だから、パールとは、それはない ね……」

 ソードーっ! ありがとう!!

 無理があるような気もするが、なんとかなったか……

 おやっ?
 カベルネの顔が赤いぞ……

「ソードさん、なにを急にいうんですか! そんなことないですよー」
「そうか、カベルネには もうおったのか……」

 サンジョが良いタイミングで、つぶやいてくれた。

 ガメイとサンジョは親子だからか、二人はタヌキなんだな…

 ボケたふりをして? 核心をつくのがうまい。

   ハァー つかれた……

 年寄りには、かなわない……

 ♢

 今日も朝からおれたち四人とカベルネ兄弟に、その父親と祖父でもある村長ガメイの八人で、岩や石を片付けてまわっている。

 ここらへんの家には、少し ゴツゴツして ザラっとした丸い石が多い。
 粉っぽいのか、持つと手についてしまう。
 
「このへんの石は、ガントの顔の大きさぐらいのモノが多いね!」

 パールに言われて、笑いながら。

「ハッハハ! おれの顔はこんなに大きいか?」

 ソードも笑いながら、ガントの顔の大きさはこれぐらいあるといっていたので、おれも笑ってしまった。

「でも、パール。金の塊はこれぐらいがいいぞ」

 ガントがカベルネたちに聞こえないように、コソッとパールに話している。

 ガントの顔の大きさか、おれも見てみたいよ。

 ソードは少しまじめ顔で……

「そうですね。これぐらいの大きさだと、持とうと思うと持ててしまい、量があるとお年寄りには少し腰にきますね」

 その言葉に、家にいた年寄りが反応する。
 
「そうなんじゃ! はじめはいいが、段々と地味にくるんじゃよ」

 んっ 耳が良すぎだろ?
 この爺さんもタヌキなのか?!
 さすがだな……

「じゃあ、ここらへんの石も片付けてしまいましょうか?」
「おーっ! よろしく頼むよ」

 パールは庭の端のほうによけてある石と、家の横にある石もすべて片付けてやっていた。

 村人たちがよろこんでいる。

 どの家も同じような感じだな?
 持つと手が汚れるじゃまな石だ……

 昼食後も サクサク進み、夜の宴会までだいぶ余裕ができたと思っていたら、カベルネがパールに何かお願いをしだした。

 三、四歳の頃、岩の間から チラッとみえる洞窟を見つけ中に入ろうとして岩に挟まれ動けず、大泣きして大勢の村人に迷惑をかけた場所があるそうだ。

 なに? 

 その岩をどかして洞窟の中がみたいと言っているのか?

 そこはカベルネが挟まれてから危険区域になり、子どもの立ち入りが禁止になっていたようで、カベルネの父親がそこにまだ行っていたのかとカベルネを問い詰めている。

「違うって、行ってないよ…… でも、忘れてもいない…… 中が、どうしても 気になるんだ……」

 おい! カベルネ。
 めんどうそうなお願いをパールにするなっ!

 んっ まてよ?!

 おまえ…… 

 はじめから、これが狙いか!?

 さすがは、ガメイの孫だな……
 おまえもタヌキなのか?!

 りっぱな知能犯、子ダヌキじゃないかっ!!

 少し考えたような顔をした後、パールが話しだす。

「いいよ! カベルネ。その岩を一度どけて、中を見てみよう。危なそうなら、もっと隙間がないぐらいに置き直すよ。そうしたら、カベルネみたいに興味を持った子どもがまたでてきても挟まれないし安心でしょ?」

 あーっ 
 パール……

 カベルネの思うつぼだな。

「ホントか! 行ってくれるのか! パールありがとう!」

 こらっ! カベルネ!

 またパールに触れる気か!
 今度は、飛びつこうとしたのか?

 ……よし。

 ギリギリ思い出したな。

 よく踏みとどまった。
 よほどうれしかったようだが。

 しかし、パールは……チョロい。

 みてみろ、ソードの顔を……

 苦虫を噛み潰したような顔をしているぞ。
 
 ガントは……

 ハッハッハーッ!!
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

私だけが赤の他人

有沢真尋
恋愛
 私は母の不倫により、愛人との間に生まれた不義の子だ。  この家で、私だけが赤の他人。そんな私に、家族は優しくしてくれるけれど……。 (他サイトにも公開しています)

夫が大変和やかに俺の事嫌い?と聞いてきた件について〜成金一族の娘が公爵家に嫁いで愛される話

はくまいキャベツ
恋愛
父親の事業が成功し、一気に貴族の仲間入りとなったローズマリー。 父親は地位を更に確固たるものにするため、長女のローズマリーを歴史ある貴族と政略結婚させようとしていた。 成金一族と揶揄されながらも社交界に出向き、公爵家の次男、マイケルと出会ったが、本物の貴族の血というものを見せつけられ、ローズマリーは怯んでしまう。 しかも相手も値踏みする様な目で見てきて苦手意識を持ったが、ローズマリーの思いも虚しくその家に嫁ぐ事となった。 それでも妻としての役目は果たそうと無難な日々を過ごしていたある日、「君、もしかして俺の事嫌い?」と、まるで食べ物の好き嫌いを聞く様に夫に尋ねられた。 (……なぜ、分かったの) 格差婚に悩む、素直になれない妻と、何を考えているのか掴みにくい不思議な夫が育む恋愛ストーリー。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

処理中です...