おれのツガイ

青空ばらみ

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13. 重要人物

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 まずは全体の稽古の様子を少し上からながめる。

「すごいな、前来た時より若手が増えたか……」
「ハッハッ、ガントリー正解だ。今年戻ってきた者たちは多い。優れた者たちばかりだぞ。わたしの大叔母様の孫であるガントリーおまえと勝負したいと楽しみにしていた一族の者たちだ。相手してやってくれるか?」 
「ああ、いいぞマヌカ。祖母の一族にはさからえないな。はっはは、楽しみだ! ライ。あっちへ、いってきてもいいか?」
「ほどほどにな……」

 ガントはうなずくとすぐ部屋を出て行った。


「マヌカ、少し話したいことがあります。いいですか?」
「では、わたしたちはこちらの席で、茶でも飲みながら話しましょうか」
「ああ、ガントたちが見えるところにしてくれ」
「はい。ライアン様」

 場所を少しだけ移動する。
 そこもガントたちが見渡せる少し高台の席だった。
 お茶が スッと出てくる。
 良いタイミングだ……

「ありがとうございます。良いタイミングですね。城勤めの研修が終わっているのですか?」
「はい、終わっております。お褒めいただきありがとうございます」

 ソードに褒められてうれしそうに若い侍女がこたえていた。

「マヌカ、実はライアン様の大切なことです。人払いを……」
「ソードリー。ここにいる者たちは皆ライアン様のしもべ。大丈夫、口のかたい者ばかりだ」

 ソードが チラッとこっちを見てきた。
 軽くうなずいておく。
 
 信頼できる者たちばかりだからな。
 
「わかりました。マヌカ、まだはっきり決まっていませんが、ライアン様にツガイ様候補が現れました」
「な、なんとっ! 待ちに待ったツガイ様が現れたのですか!」
「慌てるなマヌカ。まだ候補だ」

 あまりにうれしそうなので、念をおしておく。

「そうなのです。はっきりしないのですよ…… 相手は、まだ十歳にもなっていないのです」
「それは、お若い……」
「ラメール王国にとって大切なライアン様のツガイ様候補ですが、それ以外にも重要人物となるお子様なのです」
「重要人物ですか?」
「そうです。そのお子様はピアンタの王族から逃げてきた、当たり人でもあるのですよ」
「これは、これは、ダブルでめでたい!!」
「マヌカ、だからまだ、はやまるな……」
「ええ、わかっております。まだ、十歳にもなってないとは…… 九歳なのですかな? 小さなお方なのですね。わたしが生きているうちにライアン様のツガイ様に会えるとは…… そのお方を影からお守りすれば良いのでしょうか?」

 そうか。
 マヌカは生きているうちにはもう、おれのツガイに会えないかもと思っていたのか……

「……たぶん、近いうちにそうなるだろう。ツガイでなくても当たり人だからな」
「マヌカ、ですから女の影を育ててください。王妃様になるお方が現れたとしたら女性は必要です。人族ですが当たり人でもあるのでどちらにしても長生きです。たぶんエルフ以上…… ツガイ様なら千四百歳ぐらいは、長生きされます」
「わかりました。それを考慮し、他の基地とも連携をとり人選しましょう」

 マヌカの笑顔が怖いぐらいすごいぞ。
 
 こいつらにしたら、待ちに待ったおれのツガイか……
 やっと、支える者が現れたかも知れないのだから、気持ちはわかるが……

 もう一度、ツガイ候補だと念をおしておく。

「わかっておりますとも…… まだ、九歳。あと六年は何事も辛抱ですね、ふ、ふ、ふっ ライアン様。ダメですよ」
「っ!!」
「マヌカ、そのへんで……」

 ソードが、マヌカを戒めてくれた。

 そうか、成人といわれる十五歳まであと六年いや、もうすぐ十歳らしいから、あと五年か……

「長いな……」

 思わず声にだしてしまった。

 マヌカから、あと六年。
 いや、五年我慢だといわれて少し考えさせられた。

 ソードが話だし、気分を変える。

「それから、そのお子様ですが名前はパール。メルの町で伯父たちと宿屋を経営することになると思います」
「それは、それは……では、伯父たち家族も重要人物対象になるのでしょうか?」

 やはり、そう思うか……

「ああ、その子は伯父たちのために宿屋を買い与えるぐらいだからな……血の繋がった、たった一人の伯父になるそうだ。大切なのだろう。弱い人族だ……もしその伯父たちを狙われたら、やっかいなことになる」
「わかりました。それも含めて話し合います」
「よろしく頼む」

 マヌカと侍女の目が輝いているような……

 視線が少し気になるが、そんなことを考えているとソードが思い出したように話しだす。

「そうでした、マヌカ。ツガイ様候補だということをガントリーはまだ、気づいていないのですよ」
「えっ、それは……」
「ああ、そうだった。自分でもその子の前だと、少しおかしくなっているのはわかっているのだが……父上のような…… あんな強烈な感じではない。ソードリーはすぐ気づいたが、ガントリーはまだおれのツガイなのかもっというところにもたどり着いてない。しばらくその子と一緒に行動するからツガイなのかを確かめるためにも、ガントリーにはあえて教えないことにした。あいつが気づいたら、相当わたしはおかしいのだろう」
「……目安にするのですね」
「ああ、あいつはこういうことには鈍いから、ちょうどいい」
「ガントリー…… ハァー わかりました。了解です」


 はっはっはぁー!!

 テラスの下では、ガントが基地の者たちをバッタバッタと倒して笑っている。

「あいつらしい……」

 マヌカが ポツリと、もらしていた。

 あとは残りの報告を部屋に入って聞こうとしたとき、ガントたちの様子に変化がおこる。

「んっ、どうした? 下の様子がおかしいぞ?」
「調べさせます。しばらくお待ちを……」

 空気が流れる……
 だれかが、動いたな。

 しばらくすると、ガントがやってきた。

「ライ! 一族の子、エントが木から落ちて意識が戻らないそうだ! 中級ポーションしかなかったらしい。おれはいまから、上級ポーションを持ってエントのところまで走っていってくる。また帰ってくるから、ここで待っていてくれ」
「わかった…… ひとりだと馬車より走った方が速いか…… 少し多めにポーションを持っていけ」
「ああ。ポーションならある。いってくる」
「ガントリー、エントをよろしく頼む!」
「マヌカ任せておけ、大丈夫だ」


 ガントは そのまま……

 走って行った。
 
 
 
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