上 下
190 / 221

190. アビエス商会の失敗

しおりを挟む
 いいのかな?
 ホントに思ったこと言うよ?

「パール大丈夫です。 言葉を選ばずホントに思ったことを言っていいのですよ。  それが商会の商品になりパールに配当される売り上げにも繋がるのですから」

 商会の兄妹もうなずいている。
 そうなの?

「フーゥ あのね。 まずは、安全第一! わからないけど、この水着まだ女の人にはそう受け入れられてないんじゃないかな? だからまずは子どもで、女の子だと思うんだけど……どう?」

「パール様、その通りです。 男性ほどご婦人からは支持されておりません。 わたしは着てみましたが、商会の中の女性にもまだ着る勇気がない者がおります。 水に入っていただけたら、この素晴らしさがわかるのですが……」

「そうだよね。 大切なお子さんが水に入って泳ぎを教わったり遊ぶときには、安全であることが 一番大事なの。 オシャレはその次の段階だよ。 まだ早いと思う。 小さくても宝石があると、水の中では生地の薄い水着に、男の子たちは上半身はだかの人もいるでしょ? それだと宝石が危険な凶器になることもあるからね」

「凶器ですか?」

 たまらずアベートさんが聞いてきた。

「そう、水の中で誰かに接触したときだとか、この袖の石なんて、自分の顔を知らずに傷つけそうだよ。 それに、生地がその分重くなるし、弱くもなる。 今のところはメリットがないかな」

 うっ!

「パール様。 いまのところとおしゃいましたが、いつかメリットがあるような時がくるのでしょうか?」

「うん、くる。 まずは、お金持ちの女の子でしょ。そして平民の女の人あたりに流行ってきて、だんだんと水着が浸透してきたら、泳がないけど海にいるからと水着を着るご婦人が出てくる。 その人たちには、オシャレなモノがいいんじゃないかな?      その時まで女の人の水着は、ぜったい焦ってはダメ。 まずは、安全かつ可愛らしさで、貴族の女の子に着てもらって慣れてもらう。 タンネさんも言ってたけど、水に入ったら良さがわかるからね」
 
「そうなんです!」

 タンネさんが大きくうなずいているから、お兄さんのアベートさんにもそう話していたんだろうな……

「女の子の水着は、それまでぜったいに 安全! 破れたり、動きにくかったら水着が浸透するまでに、悪いウワサが流れてしまう。 それに、水着が気に入った女の子は、いつまでも女の子のままじゃないんだよ! 立派なレディになる。 そのときまで、これは投資だと思って続けたらアベートさんのお子さんの代には、水着といえば安全と信頼のアビエス商会ってなっていると思うよ」

「「おーーっ!!」」

「そうですね、 その通りです! これは新しいかたちの生まれたばかりの商品でした。 長い目で大切に育てさせていただきます」

 アベートさんの言葉に妹のタンネさんもうなずいている。

 続きで、アベートさんがその水着の流行らせ方をどうしたら 一番いいかをそれとなく尋ねてきた。

 どこまでも グイグイ くる……
 さすがは商売人。

「それは……」

「パール! やはり、マークのところに 一度顔を出した方が良さそうですね。 新しい水着もありますし、見せに行ってはどうですか?」

「えっ、そうなの?」

 侍女長がソードに軽くうなずいて、サッと 前に出て、わたしを部屋から出そうとする。

「パール様、マーク様のところに着て行くお召し物に着替えましょう」

 アレっ? 
 話の途中だけど、いいのかなぁ?

 なんだか侍女長に手を取られて、あっという間に自分の部屋まで戻ってきた。

 お茶が出てきて、なぜかリンゴのパイもある。

 気分良くいただいていると、侍女長が話し出す。

「パール様には、また教え足りないところがあったようです」

 商会のあしらい方らしい……

 どうも、あのときのアベートさんはやりすぎたそうだ。
 わたしが子どもだからか、少し商会としては失敗したみたい。  
 おいしい話が聞けると思ったのかな?
 まあ、ホントにおいしい話をするつもりでいたし……

 侍女長が、あの時のアベートさんはやりすぎていたけど、それに乗ったわたしも悪いと教えられる。

 上になればなるほど、ああいう儲け話に群がる人が増えてくる。
 もしホントに儲け話があったとしたら、一商会だけに独占させるような情報は、もめるもとだからそう簡単に話してはダメだそうだ。

「今回あの商会は、パール様のおかげで 金 を手に入れたも同然です。 それなのにまだ、欲をかいたのですよ!」

「そうなの?」

「はい。そうです」

 難しい……

 頭が グチャグチャ するから、ちょっと息抜きしにマークのところへ行くことにした。

 裏庭の囲いまで行かず、もうベランダから サッと 外に出る。


 そのままマークのところに飛んでいく。


 今回のことをマークたちにそのまま話すと、マークは片手で顔を押さえていた。
 シーナも片手を頬にあて、ちょっと顔を傾けて話し出す。

「パール? あなたは特別いろんなモノを持っているし知っているわ。 だから、そうやってあなたのモノや知恵にあやかろうとする人たちはこれからも、もっといるはずよ。 そこは、しょうがないと思ってあきらめなさい」

「あきらめるの?」

 今度は真っ直ぐわたしの目をみて話してくれた。

「そうよそしてあなたも、したたかに生きなければ……  長い人生なんだから、そういう人たちを逆に利用するぐらいしたたかにならないとダメ! まだ 十歳だから、ちょっと傷ついたかもしれないけど……  わたしたちもそうだしソードさんや侍女長さんもパールの味方よ! 一生懸命守ってくれているでしょ? パール あなた、自分のベランダから飛び出してきたのよね? きっと侍女長さんがすごく心配してるわよ! すぐ帰って、ベランダから出ていってごめんなさいって謝ってきなさい」

「うぅうん……」

「時間が経てば経つほど、めんどくさいことになるわよ!  急に飛び出してしまった。 そこはいけないことだから、そこだけ謝ればいいのよ。 他にはパール何も悪くないんだからね。 利用しようとする人たちがいるとわかっただけでも、パール進歩だわ ねっ?」

「そうだね、きっと侍女長もおどろいたはず…… 帰って謝ってくるよ」

 そうと決まれば早い方がいいと、すぐボードで裏庭まで帰っていく。

 アレッ?!

 慌てて侍女長が走ってきた。
 後ろからセバスチャンがやって来る。

「侍女長……」

「パール様!」

「侍女長…… 急にベランダから飛び出してごめんなさい。 ちょっと頭を整理したくなって……」

「いいえ、わたしがいけないのです。 まだ  十歳のパール様に…… 何も悪くないパール様に、言い過ぎてしまいました…… でしゃばった真似をしてホントに申し訳ありません」

「そんなことないよ! 全部わたしのためじゃない。 飛び出して心配かけてごめんね」

「パール様……」


 侍女長が涙ぐんでいる……

 心配かけたんだ。

 帰ってきてよかった……

 シーナ 正解だよ!



 
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

かわいいは正義(チート)でした!

孤子
ファンタジー
 ある日、親友と浜辺で遊んでからの帰り道。ついていない一日が終わりを告げようとしていたその時に、親友が海へ転落。  手を掴んで助けようとした私も一緒に溺れ、意識を失った私たち。気が付くと、そこは全く見知らぬ浜辺だった。あたりを見渡せど親友は見つからず、不意に自分の姿を見ると、それはまごうことなきスライムだった!  親友とともにスライムとなった私が異世界で生きる物語。ここに開幕!(なんつって)

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。

辺境貴族の転生忍者は今日もひっそり暮らします。

空地大乃
ファンタジー
※3巻の発売が決まりました詳細は近況ボードを見ていただけると幸いです。 かつて最強の名を恣にしていた忍者は気がついた時、魔法が当たり前に存在する異世界に転生していた。しかし転生した直後彼は魔力0とされ失格者の烙印を押されてしまう。だが彼は気がついていた。この世界でも日ノ本で鍛え上げた忍法が使えることに。そしてこの世界の魔法は忍法と比べ明らかに弱々しい代物であることに。そう転生した異世界で彼の忍法はあまりに強すぎたのだった。魔法が当然の異世界で魔力なしの落ちこぼれとされた彼の忍法が炸裂!忍術が冴え渡り馬鹿にしてくる連中を一網打尽!魔法?関係ないね、そんなことより忍法だ!今天才忍者と称された彼の第二の人生の幕が異世界で開かれるのだった―― ※アルファポリス様にて書籍化が決定いたしました!春頃に刊行予定です。応援いただいてくれた皆様本当にありがとうございます! ※書籍化にともないタイトルを変更いたしました。 旧題:最強の忍者が転生したのは魔法が全ての異世界だった~俺の忍法が強すぎて魔法じゃ全く相手にならないわけだが~

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

処理中です...