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180. 氷の盾

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 ブレンダも、自分のテントをとても気に入っているそうだ。

 わたしが、他の家では部屋の中に自分のテントを張って寝ていると教えたらおどろいていた。

「よっぽどテントの中の方が、暮らしやすいんだねぇ」

「ブレンダ、パールの持ち物は普通じゃない。 便利すぎるから、向こうの人ができるだけこっちの人には教えるなと忠告してくれたそうだ。自分の子どもに引き継ぎさせないと、何かと面倒で危険だろ? パールの子どもも、長生きになるようだしな」

「ああ、そうだね。 王家でも今はそうしているよ。  早くに寿命がくる人族の王にしたら、ホントに 何回も跡取りと相続で、もめていたからね…… すぎた遺産は、たいへんなんだよ」

「見てきただけに、説得力があるな……」

「ハッハハ まあね……」

「わたしがそばにつくまでは、アラクネを人に見せるのは我慢しな。 王妃様の持ち物だって、紛失するなんてこと、前は何度もあったんだよ」

「王妃様の持ち物なのに?」

「ああ。 人族の寿命は短いからか、短慮性急な人も案外いたのさ。 マークの言う通り、いまはテントの中だけにしな」

「はい……」

 やっぱりか。
 あきらめて、いま思いっきりベッドで スルスル スベスベ しておこう!


  ♢♢♢


 さあ、今日も薬草を採るぞ! 
 どこに薬草を探しに行こうかなぁ?

「パール、わたしたちでゆっくりできるのは今日までらしいじゃないか? 明日から東に冒険しながらボードで帰っていくんだろ? 一応、余裕をみて 二日の予定だと聞いたよ。 それにマークはこれから当分のあいだ、冒険できないそうだね?」

「うん、赤ちゃんが生まれてくるからね。 宿屋もあるし、しばらくは無理?…… もしかしたら、最後なのかも?」

「最後ではないぞ! 子どもが大きくなったら、また冒険するさっ!」

「うん、そうだねっ」

「だからね、パール。 明日からは冒険しながら帰るなら、ゆっくり教える時間がないだろう? それにメルの洞窟をでたら、わたしとは用事が済むまで会えない。 パールひとりの時間も多くなるだろ?  護身のために、魔剣の使い方を少し勉強しないかい? せっかくのいい魔剣みたいだからね。 薬草は、これからわたしと 一緒にボードで、いつでもここに採りに来れるさ!」

「パール。 ここはそう人が来ない。 強い魔獣もいない。 パールに ピッタリ のいい練習場だ」

「えっ! マーク今日は、魔剣の練習になるの?  ふぇ~っ……  わかったよ」

 少しひらけた、草もあまり生えてない場所にいく。
 
 ブレンダが聞いてきた。

「パール、その魔剣はもしかして雷と氷の 二種類使えるのかい?」

「違うよ」

「そうか、雷を使っているのは見ていたんだが、マークがわたしが使った氷の盾をパールに教えてほしいというから、もしかしたら使えるのかと…… そうだね、普通そんなすごい魔剣は、そうお目にはかかれない。 パールだからもしかしてと思ってしまたよ。 ハッハハ!」

「違うよ 二種類じゃない。 五種類なんだ」

「「五種類?!」」

「パール! その魔剣は、雷と氷の 二種類じゃなかったのか?」

「違うよ、五種類だよ! あと 三つかな?」

「あとの 三つを使ったことは、あるのかい?」

「まだ……」

「「ハアーっ!」」

「もうホントに、おどろくことに慣れてきたね」

「おれもここまでとは…… 思わなかった」

「だいたい氷と雷でこと足りてしまうからね…… あとは何があるんだい?」
 
 ブレンダが少し呆れている。

「さすがはカリンパニさん。 カリンパニさんの魔石カバー のおかげで、わかりにくくなっていたんだよ……」

「へぇーっ そうだったんだ……」

 それからブレンダとマークで魔剣を調べて、雷、氷、火、風、土の魔石が入っているとわかった。


 まずは、氷の魔剣の使い方を教えてもらう。

 モノを凍らすことはできるけど、魔剣で氷の矢を飛ばしたりはしたことがない。

 魔剣を握って強くイメージすることが大切だとブレンダに教えてもらう。

「アイスッ!」

 木に矢が、何本も刺さる?!

 ヒィ~っ こわい!!

「パール、すごいよ! 一度で、これだけ矢を飛ばせるなんて! この魔剣がすごいのか? でもそんなにこわがっていたらダメ」

「ブレンダ、パールは人はもちろん 魔獣や動物でも傷つけることに抵抗があるんだよ! 捌くのも苦手で、血がダメなんだ……」

「あぁーっ 貴族の女子に多いタイプだね。 この子は、ホントに平民かい? 王家の姫さまを思い出すよ」

「そんな、おとなしいもんじゃないが、ある意味あっているな。 『前世の記憶』を聞くと、姫様以上の暮らしだったみたいなんだよ」

「そんなことないと思うけど…… 血は苦手かな?」

「マークの苦労が、わかるね……  じゃあ、氷の盾を先に覚えようか……」

「それなら、安全でいいね! 頑張るよ!」

「「ハアーッ」」


 構え方は、なんでもいいそうだ。

 ある程度の時間ふらつかない姿勢をとることが大切だと教えてもらう。

 わたしもブレンダと同じく片膝をついて、あとはイメージ……


 ブレンダが、安全な風をわたしに向かって飛ばしてきた。

 これを避ける、氷の盾を作るのか……

 風がきつくなってきた。
 
 あわてて、唱える。

 「アイスシールド!」

 イメージは、氷の家。
 あっ、これは『前世の記憶』だな?

(チェリー、この頭の中にある椀をひっくり返したような家は『前世の記憶』だよね)

(はい、そうです。 氷の家は、いろいろあります)

 頭の中にいろんな、氷の家が出てきた。
 すごいな?!
 でも、いまはこれでいいよ!

 椀をひっくり返した形で、氷がわたしを包み込む。

 「パール!? パール! 大丈夫か!!」

 なんだか、マークたちが騒いでいる……

 アレっ? 
 これ出口は、どこ?

(パール、ドアを忘れています)

「ホントだ! チェリー、ありがとう!」

 チェリーが、頭の中にドアの映像を出してくれる。

(はい。 すぐに作りましょう)

 外では、マークとブレンダがまだ騒いでいる。

 危ないから、後ろ側に魔剣を向けて、ドアをイメージしてみた。

 何の魔法だか、わからないけど四角く氷の壁に切れ目がついた。
 押せるかな?

 無理……

   魔剣をドアに向けて、さっきブレンダから受けた風を思い出す。

 ブワッ!! ゴトゴトッ……

 四角い氷のドアがゆっくり動いて外に飛び出した。

「パール! 大丈夫か!」

 マークがすぐ、中に入ってくる。

 そのまま外に連れ出された。

「パール! これはなんだ? 盾じゃなかったのか?」

「えっとー この方が、どこから攻められても大丈夫かなって思ったら……こんな風に」

「「はあっ?!」」

 呆れたような大きな声が、二人から漏れ出した。


「しかしまあ、無事でよかったな」

「マークありがとう……連れ出してくれて」

「ハッハハ! マーク! なんだか妙にやる気が出てきたよ! すごいじゃないか? こんなすごい子 初めてだ!」

「ブレンダ……    大丈夫か?」 


 アレレっ?

 ブレンダが急に、うれしそうだよ??

 


 
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