上 下
177 / 221

177. びっくり箱のような子?!

しおりを挟む
 ブレンダはわたしの魔法剣をじっくり見つめて尋ねてきた。

「この剣の木の皮のカバーは、誰が作ったんだい? まさか、カリンパニさんじゃないだろう? あの方はピアンタに住んでいるからね。 でもなんだか、カリンパニさんぽいねぇ~」

「これ? カリンパニさんが誰かは知らないけど、この剣のカバー    ふ、ふっ かわいいでしょう? これは、ピアンタのアストの森、入り口付近にお店を持っている、細工師の親方が作ってくれたんだよ! すごく気に入ってるんだ」

「アストの森入り口付近?! じゃあ、やっぱりカリンパニさんじゃないか!?」


 カリンパニさん? 

 あの親方の名前…… 初めて知ったかも?!

 マークもいっていたけど、親方ってすごい人なんだ……

 今度、ケルスさんに 聞いてみよう?

「しかし、よくあの方が作ってくれたねー! あの方は、気に入った人にしか注文品は作らないんだよ。 すごく頑固だけど、腕がいい! あの方が特別に作ったモノには、なにかしら少し付与が付いているからね! 長生きの人だろ…… 細工師の神さまみたいな人だよ。 まさか、まだ他にもあの方の作品があるのかい?」

「えっと、ブレンダが寝ていたベッドもそうだよ? お客様用に作ってもらったんだ」

「なんだってーーっ!?」

 ブレンダは、まさか自分がそんなすごい人の作ったベッドに寝ていたなんてっと、おどろいていた。

 親方の名前をはじめて知ったよ。
 カリンパニさんっていうんだ……

 ホントにすごい人のようだから、覚えておこう!


 順調に、魔牛も狩った。

 チェリーが教えてくれる魔牛が、大きな個体ばかりでおどろいている。

「マーク、これはどうなっているんだい? 出合う魔牛が全部大きな個体なんだけど? なにか秘訣でもあるのかい?」

「パール、ブレンダは信用できるおまえの味方になってくれる人だ。 ちょっと、テントで話をしようか」

 湖の安全な岸に降りて、空のテントを張る。
 中には家族用のテントとブレンダもテントをだしていた。
 二つのテントの前にテーブルセットを用意して 三人で座って休憩する。

 侍女長に教えてもらった、よい香りのお茶を淹れてみた。
 それとカベルネから買った干しブドウもだす。

 ブレンダは、お茶を 一口飲んで。

「これは?! すごくいい茶葉に、おいしいお茶だよ」

「へへっ これね、知り合いの侍女長に淹れ方を教えてもらったんだ! おいしいでしょ。 この干しブドウも特別なモノだからおいしいよ、食べてみて」

「もしかして、あのワインと 一緒のモノかい?」

 一口食べて、うなずいていた。

「ブレンダ、あのワインもこの干しブドウも知っているようだけど、すごいモノなのか?」

「もしかして、パールたちは知らないで飲んだり食べたりしているのかい? そうか……」

「あのワインはおれが今まで飲んだワインの中で 一番うまいワインだが、おれはもともとそんなに高いワインは飲んだことがないから…… な。 何かあるのか?」

「あのワインは、特別な地域の数量限定のワインだ。 王室御用達だぞ」

 やっぱりねっ!
 そんな気がしてたんだよ~。
 おいしいもんねー!

 マークが、そんな高価なワインだったのかとおどろき、ガバガバ飲んでいたことを後悔していた。

 もっと味わって飲むワインだったんだと、頭を抱えている。

「パールはこれらを、どこで手に入れたんだい?」

「これは、ピアンタとの国境近くの 二軒の宿屋に卸している人たちから買ったり、もらったりしたモノなんだ」

「そうか。 あの集落の人たちに気に入られたんだね」

「ブレンダ、その集落の人たちっていうのは特別な人たちなのか?」

「ああ、代々王室に仕えている特別な人たちさっ」

「へーっ?! そうなんだ……  知らなかった。 なんだか、閉鎖的な村ではあったけど、いい人たちばっかりだったから……  でもやっぱりすごい人たちだったんだね」

「まあ、パールもすごいからね。 向こうもおどろいたんじゃないかい? ふ、ふっ」

 それから、マークがブレンダにわたしのことを話してくれた。

 シーナやトムさんたちにも話した内容。
 わたしに『前世の記憶』があること、ステータスレベルが高いことなどを隠さず話してしまう。

 マークからはブレンダに頼んでいた、わたしの護衛兼教育係をブレンダが引き受けてくれたことを教えてもらう。

 報酬が格安だった。
 住むところと食べることはマークの宿屋で、マークが生きているあいだは、辞めた後もずっと提供されるそうだ。
 マークとしては、できれば結婚するまでは護衛をしてほしいと頼んだようだった。

 ホントにルート様とアース様の関係だな……
 
「王室の護衛を長くしていたのなら、これからパールがどこに行っても恥ずかしくない教育をしてもらえる。 もうおれたちだけでは、パールに教えてやれることが限界だったからな。 ブレンダが引き受けてくれて、ホントに感謝しているよ」

「思っていた以上に、重要人物の護衛だね…… 『前世の記憶』かい? 聞いたことがあるような? ないような? それからわたしの魔法の適性は、火と風だよ。 ステータスレベルは、最後に見たのはもう 四十年ぐらい前。 十代目の王妃様に仕えるときに調べたのが最後だけど、そのときでレベル29だったかな。 パールは高いっていうけど、どれくらいだい?」

「えっと、すごく高いんだよ……」

 マークを チラッと 見るとうなずいている。
 言っても大丈夫だということだろう……

「レベル50は、あるんだ……」

「レベル50?!」

 やっぱり、おどろくよね?

 ブレンダも、マークを チラッと 見ていた。
 同じようにまたマークがうなずいている。

「それはまた…… マーク。 ホントにたいへんだったんだね……」

「ああ。 共感してくれる人ができて、うれしいよ」

「ちなみに魔法の適性は?」

「うんっ、全部かな? アッハ!」

「それは…… パール…… いま 何歳だい?」

「この前やっと 十歳になって、冒険者登録がちゃんとできたんだ。C級スタートだよ!」

「マーク、マークは人族だったね? 間違いないかい?」

「ああ、そうだ。 おれもパールも人族だ。 でも、パールは迷い人になって、寿命が伸びてしまんだよ…… だから、おれの代わりに寿命の長いブレンダに少しでもパールの味方になってほしくて頼んだんだ……」

「寿命が伸びた? 迷い人は、寿命が伸びるのかい?」

「うん、行って帰って来たら大体 千年伸びるかな? わたしは、ちょっと多くて 千五百年は伸びたんだよ」

「千五百年?! それは、ホントかっ? 王様よりも長生きな人を、初めてみたぞ!」

「そうなんだ…… へ、へっ」

「マーク! おまえよくひとりで、こんな びっくり箱のような子を支えてきたなっ! すごいぞっ!」

「そうか……」

 なんだか、ちょっと失礼な感じだけど……  
 マークがわたしを支えてくれていたのは、事実だし……

 まあ、いいかな?

 ブレンダだしねっ!
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

かわいいは正義(チート)でした!

孤子
ファンタジー
 ある日、親友と浜辺で遊んでからの帰り道。ついていない一日が終わりを告げようとしていたその時に、親友が海へ転落。  手を掴んで助けようとした私も一緒に溺れ、意識を失った私たち。気が付くと、そこは全く見知らぬ浜辺だった。あたりを見渡せど親友は見つからず、不意に自分の姿を見ると、それはまごうことなきスライムだった!  親友とともにスライムとなった私が異世界で生きる物語。ここに開幕!(なんつって)

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

処理中です...