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115. 当たり人を選ぶ

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 ライがこれでは、金(キン)をもらい過ぎだと告げてきた。
 それから他の金もレベルは全部同じか聞いてくる。

 金は全部同じだし、食事代もかねているからどうぞ受け取ってと言っておく。

「おい、パール。これは、すごいぞ! 純度の高い 金だ! おまえこれをどれだけ持って帰ってきたんだ…… いや、いい…… 言うなよ! 怖くて聞けん!」

 ガントが、騒いでいる。

「ホントに、すごくよい モノ です……」

 ソードは、冷静だな……

「パール。これなら…… 先程いっていた倍、両替してくれるか?」

 ライはどんな金だと思っていたんだろう?
 もっと粗悪な金でも、両替してくれるつもりだったんだ…… 優しいな……

 それくらいなら大丈夫だと伝えておく。
 
「塊と砂金、どちらが両替のときは良いですか?」

「そうだな。もっと大きな塊も、見てみたいなぁ」

 大きいって、どれくらいのことだろう?
 枕ぐらいのなら、たくさんあったと思うけど……

「ライ。大きいって、どれくらい?」

 ライが、ニヤっと笑いながら……

 「そうだな…… ガントの顔、ぐらいだな」

「おれの顔か?」

「パール、けっこう大きいですよ? ふっふ」

 ソードも、笑いながらいってきた。

 ガントは左の口元を少し上げて、こっちを見てくる。

「探しておきます……」

 無難に答えたつもりだったけど……

「「「あるのかっ!!」」」

 もう、しょうがないから聞いておく。

「あったら、いりますか?」

「いる!」

「パール。おれも向こうの国の金がほしい!  さっきの小さな金の塊でいいから、両替してくれないか?」

 ガントが真剣な顔でいってきたので、魔法袋から用意していた細いバンブの木に入った砂金を 三本とキノコの女王のタマゴサイズの塊をひとつだす。

「ガントはわたしの当たり人、三人目だからどうぞ! 一人目にも二人目にも同じだけ渡しているから、受け取ってね」

「えっ、おれが 三人目?」

「そうだよ、馬車に乗せてラメール王国まで連れていってくれるんだもん」

「パール。それならライにも、当たり人の権利があるのでは? これは、ライの馬車ですよ?」

「おう、そうだぞ! これはライの特別な馬車だぞ!」

 やっぱり、そうくるか……
 
( チェリー ! どうしよう?  メリッサお姉さんのお祖母さん、迷い人 四代目を 当たり人にしてあげたいんだけど、ガントとライを 当たり人にしたらソードもしないとかわいそうでしょ? でもそうしたらそこで、当たり人が 五人になっちゃうよ……)

( はい。それでは事情を説明して、ソードは 0.5人目にしてしまいましょう。残りの0.5人目がお祖母さんで、ちょうど 五人になります。 すべての人に同じ モノ をあげているので、あとは気持ちの問題です。 少し強引に押し通して、お祖母さんまで 当たり人を持っていくのが丸くおさまってよいでしょう)

( そうだっ! これは、気持ちの問題だよ! 金を渡すことに問題はないし、むしろいっぱいあるんだから もっとあげたいけど…… 良すぎず 多すぎず、受け取りやすい モノ っていうから…… )

 わたしが黙ったので困っていると思ったのか、ライがおれはいいと言ってきた。
 あわてて、話しだす。

「違うの、ライっ! 実は、もうひとりどうしても 当たり人にしたいお祖母さんがいるの…… だから、ライが 四人目でソードには申し訳ないないんだけど、4.5人目っということで、0.5人扱いにしてもらって。最後そのお祖母さんを残りの 0.5人目でちょうど 当たり人が 五人ということにしたいんだけど……いいかな?」

「もしかして、パールはわたしのことで悩んでいたのですか?」

「えぇと~ そういうことではないけど…… もし、いやじゃなかったら 4.5人目の 当たり人になってくれますか?」

「ええ、えぇ よろこんでならせていただきます! わたしまで入れていただき、ありがとうございます」

「よかったな! ソード! それにライも!」

「パール、おれも 四人目の 当たり人になっていいのか?」

「はい。それはもちろん! みんなさん、よろしくお願いします!」

 それから二人にも、ガントと同じ分の砂金と金の塊を渡した。


 ライがメルの洞窟まできたら、かならず家によってほしいと  一枚のメダル? を自分の魔法袋からだしてくれる。

「これは、なに?」

「これを見せると、おれの知り合いだとすぐにわかって便利なのさ。なくすなよ」

「このメダルは、真ん中に小さな魔石が埋め込まれていて偽造もしづらくなっていますから、これを見せたらすぐにわたしたちまで繋がります」

 ソードもこのメダルはすごいと話してくれた。

「パール、おまえ見た目は小さい子どもだから、念のためだな!」

 ガハッハッと、ガントが笑いながらいう……

 見た目だけじゃなくホントにまだ、九歳の子どもですけど……

「ガント、あなたのそういう デリカシー のないところは、どうにかしてください」

 ソードがすみませんと、代わりに謝ってくれる。

 しょうがないから、笑っておいた。

 このメダル、ホントに小さな魔石が埋め込まれている。
 こんな小さな魔石まで使っているなら、わたしの剣の魔石は小さいとは…… いわないな……

 それにこのメダルの素材、見たことあるよ……

「このメダルの素材は、なんですか?」

「パール、よくそこに気がついたな! これは貴重な ドラゴンの 骨 から作られているんだぞ! 魔力の伝わり方がすごくいいんだよ。 見た目より頑丈なのに、細工がしやすいんだ」

「そんな…… 貴重な モノ もらえないよ」

「パール、あなたは持っておくべきです。 これでラメール王国に後ろ盾ができたことになりますから、変なことをいってくるヤツらには効きますよ」

 ハッ とする。

 そうか。
 ライはもし何かいってくる人がいたら、助けてくれる気なんだ……
 ありがたい……

「ライ、ありがとう」

 素直に受け取って、ベストの胸ポケットに入れておく。

 今日は、ここまで……

 わたしは自分の部屋で休ませてもらう。


 テントに入り、胸ポケットからメダルをだす。

 目の前のベッドを見つめて、つぶやいた……

「ハーッ チェリー …… これ、同じ だよね……」

「はい、同じに近い 素材 ですね」

 この ベッド、ドラゴンの 骨 だったんだ……


 わたしのベッド以外は……

 しまうことが決定した 瞬間 だった。


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