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114. 思わぬ実験

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 少し残して、大半は採ってしまう。

 ここはだれも採らないと聞いたから、独り占めだな!

 楽しそうに採っていたようで、ガントが声をかけてきた。

「パール。そのスティックは、もらった モノ か?」

「そうだよ。 だから、使ってみたかったんだ」

「これも、登録してあるのか?」

 ライが、聞いてきた。

「はい、してあります」

 なんだかライと話すのは、緊張する……
 もうぜったい、貴族だよ……ね。

「パール。登録ってしてあると、どうなるんでしょう?  わたしではこのスティックが、使えないということなのでしょうか?」

 ソードがアゴに手を当てて、聞いてきた。
 たしかに…… どうなるんだろう?

「もらったばかりだから、わからないよ…… どうなるんだろう?」

「パール。おれにちょっと、貸してみろよ!」

 ガントが、自分が試してみるという。

「えっ、それは…… もし、なにかあったらどうするんだよ?」

「少しぐらいなら大丈夫だ。 取らないから、貸してくれ!」

「えーーっ!」

 ソードもガントなら大丈夫ですよと言う。

「試しに、貸してやってくれ」

 ライまで大丈夫だと告げてくるので、もうなにかあっても知らないよと言って貸してみる。

 ガントが持つと、少し顔が ピクっとなった。

「ガント、大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ。 この使い方は?」

「簡単だよ! 自分の採りたい モノ を願って、軽くスティックで触れるだけだよ」

「わかった」

 ガントがヨウモギ草に、チョンと触れる。

「うわーっ!」

 スティックを、手から離してしまった。

「ガント! 大丈夫?」

「あぁ、すごいな……」

 詳しく聞いてみると、渡されたときから少し ピリピリきていたそうだ。
 使った途端に、鋭い痛みが走ったと教えてくれる。
 それに、すごく重いようだ。

 へぇーっ

 ソードも試したいと言うので、ガントが落としたスティックを拾って、ソードに渡す。

「うっ! ホントに少し ピリピリする…… それに、重い……」

 使うのは、やめておくのかな?

 つぎは、ライ。

 ソードからスティックを受け取って……

「ホントだな。 パールが気軽に持てる重さではないな、それに ピリピリくる」

 ライも使わずに返してくれた。

 わたしにはすごく軽いし、使いやすいと話しておく……

 不思議だ……

「間違えて持っても、これならすぐに気づくだろう」

 そうなんだ……

 思わぬ実験ができたな。


 馬車に戻って、みんなで夕食を食べる。

 馬車の部屋でゆったり今日のお楽しみ、シルバーウルフのステーキだ。

 三回目が 一番 おいしい。
 スープも具を毎回つぎたして作っているみたいで、コクと少し野菜のとろみがついていておいしかった。

「しかし、パールはテーブルマナー をどこで習ったのですか?」

 不思議そうに、ソードが聞いてきた。

「そうだよな? おまえ、キレイに食べるよな?」

 ガントも肉を食べながら聞いてくる。

「えっと~ 辺境伯の侍女さんや食堂で 一緒に食べているみんなが、わたしが冒険者になるなら、お貴族様たちとも付き合っていくことになるからと、食事のたび指導してくれて……」

「それは…… たいへんな食事でしたね……」

 ソードが目尻を下げて、気の毒そうに言う。

「はい……とっても……」

「これだけは、すぐに学べる モノ ではないからな」

 ライが遠い目をして、共感してくれる。
 ライも覚えるまで、たいへんだったんだろう……

 食事のあとはお茶を飲みながら、これからの予定を教えてもらった。

 明日は国境を越えて、すぐの宿屋に泊まるそうだ。
 そのあともう 一泊、村はずれになる宿屋で泊まって、やっとラメール王国の王都ゴタに着く。

 わたしはゴタの噴水広場で、馬車から降ろしてもらうことにした。
 ライがそんなところでいいのか聞いてきたので、届け先がその近くだからと伝える。

 どうやらそこはお城の公園の近所で、港には歩いて半時間くらい、商店街も近く高級なお店や宿屋もある 良い場所だと教えてもらう。

 へーっ、良いところにメリッサお姉さんのお祖母さんは、住んでいるんだな……

 ライたちはそこから馬車で半日いった、メルの洞窟 の近くにある家にそのまま帰るそうで、わたしも用事が済んでしばらくしたら、メルの洞窟へ 一度いってみると話すと、そのころには家もお金も用意しておくと 言ってくれる。

 それは、ちょっと早くない? 無理でしょ?

 まぁ、しばらくはラメール王国で ブラブラしているつもりだけど……

 そうだ!
 明日からの宿屋の宿泊費のことを聞かないと……

 ライはそんなのは、いらないという……
 それより、いまからしばらくのお金は大丈夫なのか聞いてきた。

 細工師の親方から少し、金(キン)で両替のようなことをしてもらったと言うと、自分も少しならできると 金貨を 十枚だしてきた。

「んーっ、もう少し細かいお金はありませんか?」

 ソードが スッと、小袋をだしてきた。

「銀貨が、百枚入っています。それと 金貨でどうですか?」

 おーっ! できる人だな!

「じゃあ、金貨 十一 枚分で! 金(キン)は、砂金か 塊のどちらがいいですか?」

「選べるのか? 両方は ダメか?」

 軽くうなずいて、腰のカバンから魔法袋をだしてその中から用意していた、細いバンブの木に入った砂金とキノコの女王のタマゴサイズを 二個ずつだしてみた。

 すごい 視線……

 魔法袋をだしただけで、ハッ という息を飲む声がする。
 金をだすと。

「おーっ!」

 ガントが声を上げる。

 ソードが サッと金の塊を取り、上下 左右 みて確認してからライに渡していた。
 砂金はガントが手のひらにだし、つまんでみている。

「ホントに、金(キン)だな……」

「あぁ、金だ……」

「そうですね……金ですね」

 
 えーっ! 信じてなかったのー?!

 ちょっと ビックリな 三人だよ!

 笑っちゃう……!

 
 

 

 
 

 
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