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82. ジュウネンの実
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そういえば…… あったな、魔力ポーション!
上、中、下、三本のポーションで盛り上がってたから。
うっかりしていた……
マプさんの期待した顔が、怖い……
アロさんの目が、うるんでるよ。
テーブルの上に、なにもいわず スッと だす。
アロさんが サッと すばやくポーションをとって。
「父さん、魔力を感じるよ!! 透明感のある濃いピンク色…… すごくキレイだ! これが、本物の魔力ポーション! さあ はやく、受け取って!」
「ああ、ありがとう…… ホントにキレイだ。 本物は、こんな色だったんだな…… 」
騙されたことが、あるのかな?
アロさんから受け取った魔力ポーションをしばらく じっと眺めて、マプさんは 一気に飲み干すと、震えだした。
えーっ 大丈夫なの?
アロさんも、心配そうだ……し。
「おい パール。 あれ、本物だろうな?」
「あ、当たり前でしょ テトリ! メリッサお姉さんっていう薬師の、すごくよく効くポーションを作る人から最近 買った、ホントに いいモノだよ!」
なんということを聞くんだ!!
でも、それを聞いてアロさんがちょっと ホッと した顔をしている……
くぅーっ 信じてもらえるかな……
マプさんは、まだ小刻みに震えて、なにもしゃべらない。
もしかして、竜人には合わなかった?
不安に思いだしたころ、やっとマプさんが口を開いた。
「アロ、アロ、これは すごい…… からだ中からチカラが湧いて、じっとしていられん…… ちょっと ひとっ走り行ってくる!」
それだけ伝えて、外に出て行ってしまった。
「よかった? ポーションが効いたみたい だね……」
「そうみたい だな…… アロさん、よかったな!」
「あぁ…… 父さんのあんな姿をまた見れるなんて…… よかった。 ホントに よかった…… パールちゃん、ありがとう」
「お役に立てて よかったです」
しばらく三人で、くつろいでいろいろ話しをする。
リングオトーレのことを詳しく聞いたり、わたしの国ではオトイレのことをトイレ っていうんだと教えたり…….
ちょっとの違いが楽しい。
そうしていると、マプさんが戻ってきた。
なにか、持っている?
「父さんお帰り。 んっ もしかして、迷いの森に行ってきたのか? それは、パールちゃんに?」
「あぁ、まだ 十歳になってないと言っていたからな。 ギリギリ間に合うだろう…… 」
わたしに?
黒い 何かの実?
テトリのこぶしぐらいの大きさ?
「パールちゃん、いますぐ食べなさい。 せっかく採ってきたんだ。 採りたてに近いほどからだに良いし、おいしい」
「オレは、いいぞ。 それは 十歳までの子が食べるんだ」
そうなんだ……
せっかくなので、いただく。
「んっ、おいしいー!!」
めちゃくちゃ おいしい!
見た目よりも トロッと 濃厚で、香りもすごくいい。
なんだか甘くて、不思議なコクもある。
なんだろう? この味?
あっという間に、食べ終わる。
あれ、タネも何も…… なかった?
全部、食べちゃった。
からだが少し ポカポカ している。
「おいしいかったか?」
マプさんが聞いてきたので、食べたことのない味で すごくおいしいかったと答える。
この実は『ジュウネン』というらしい。
名前のとおり少し特別な 、十歳までの子どもにしか甘くない実で、テトリは食べたくても苦くて食べられないそうだ。
不思議?
迷いの森に住んでいる体長 二メートルぐらい。
小型の草の魔物。
葉にも栄養があるけどこの実を採るときは、先に花を探して、その中に実があるかをまずは確認する。
ちょっと硬くて攻撃してくる葉を全部、まずは切り落としてから採取しないと、栄養が実にいかない変わった実。
その実を採ると、切り落とした葉はその場で全部枯れてしまう。
本来なら、ひとりで採りにいくのは大変で危険なんだとアロさんが教えてくれた。
子どものために、親が最初に頑張る行事にもなっていて、孤児院の子どもは寄付で食べれるモノなんだそうだ。
十年あるからね!
「そんな、貴重なモノを…… ありがとうございます」
「いや、わたしの方がお礼をいわないと いけない。 もう あきらめていたからね…… 」
マプさんの顔つきが、少し変わった?
目が イキイキ していて、なんというか……
怖さが、増した?
「お義父さん、アロー! これは どういうこと?」
アロさんの奥さんアクロさんが深々と帽子をかぶって、近所の屋敷からやってきた。
どうも、魔力を分けてもらった娘のスピノさんが、おじいさんの魔力がおかしい、なにかあったから見てきてほしいと母親のアクロさんに頼んだらしく、あわててきたそうだ。
「店の前ぐらいからお義父さんの魔力を感じて、これは何かあったと すごく心配したのよ!」
アロさんがあわてて、奥さんのアクロさんにこれまでのことを説明すると、アクロさんが泣き出した。
なんだか、すごいことになってきた……
テトリをみると、軽くうなずいて話しだす。
「マプさん、アロさん、アクロさん! これ以上 目立ったことをするのなら、オレたちは、次に行くよ! マプさん、魔力を おさえて。 アロさん店にもう 一度 カギ! アクロさん、泣き止んで。 店の外にパールのことが、バレてしまうよ!」
そうだ! そうだわ!
みんな、我に戻ってくれた。
よかった……
それからはアクロさんが、まだ行かないでっと、わたしたちに飲み物をだしてくれる。
テトリはよろこんで飲んでいたけど、わたしはさっきジュウネンも食べたし、どうしようかな?
「パールちゃん。 無理にとは言わないけど、これは からだにすごく良いモノだから、飲めるようなら飲んでちょうだいね」
アクロさんに勧められたので、うなずいて飲むことにした。
んっ、これは……
ブロンさんのところで飲んだモノに、すごく似た味?
同じ モノ?
テトリをみると、目が合い ニッター っと笑う。
これは…… 黙って、飲めっということだな……
そういえば、ブロンさんのとっておきだったから、お高い飲み物なんだろ……
テトリ、飲めるときにたっぷり飲むつもりだな……
わたしもテトリをみて、ニッター っと笑っておく。
マプさんが、アクロさんをみて。
「おい、おまえたち。 先に夫婦で、ポーションを飲んでしまいなさい」
子どもより先に飲むのはと、夫婦で少しぐずっていたけど、なにがあるかわからないから、飲んだほうがいいとマプさんがなんだか意味深く説得している。
妻のアクロさんは、夫のアロさんが中級ポーションを飲んでくれるのなら、いま飲むといいだして夫のアロさんのからだを優先して説得しだした。
最後はアロさんが折れて、順当に決まった。
アロさんが中級ポーション。
アクロさんが下級ポーション。
マプさんが、ホッと した顔をしていたのが印象的だったな……
夫婦仲よく並んでソファに座って、すぐ 一気に飲み干していた。
二人のからだが、フワッと 光ったと思ったらすぐにおさまる。
アロさんが妻のアクロさんの顔を 一番に覗きこみ 涙を流して、アクロさんに教えてあげている。
「治ってる……キレイだよ…… 」
夫婦で抱き合って泣きだした……
よかった……
あとは、娘のスピノさん。
みんながはやく、元気になると いいな……
上、中、下、三本のポーションで盛り上がってたから。
うっかりしていた……
マプさんの期待した顔が、怖い……
アロさんの目が、うるんでるよ。
テーブルの上に、なにもいわず スッと だす。
アロさんが サッと すばやくポーションをとって。
「父さん、魔力を感じるよ!! 透明感のある濃いピンク色…… すごくキレイだ! これが、本物の魔力ポーション! さあ はやく、受け取って!」
「ああ、ありがとう…… ホントにキレイだ。 本物は、こんな色だったんだな…… 」
騙されたことが、あるのかな?
アロさんから受け取った魔力ポーションをしばらく じっと眺めて、マプさんは 一気に飲み干すと、震えだした。
えーっ 大丈夫なの?
アロさんも、心配そうだ……し。
「おい パール。 あれ、本物だろうな?」
「あ、当たり前でしょ テトリ! メリッサお姉さんっていう薬師の、すごくよく効くポーションを作る人から最近 買った、ホントに いいモノだよ!」
なんということを聞くんだ!!
でも、それを聞いてアロさんがちょっと ホッと した顔をしている……
くぅーっ 信じてもらえるかな……
マプさんは、まだ小刻みに震えて、なにもしゃべらない。
もしかして、竜人には合わなかった?
不安に思いだしたころ、やっとマプさんが口を開いた。
「アロ、アロ、これは すごい…… からだ中からチカラが湧いて、じっとしていられん…… ちょっと ひとっ走り行ってくる!」
それだけ伝えて、外に出て行ってしまった。
「よかった? ポーションが効いたみたい だね……」
「そうみたい だな…… アロさん、よかったな!」
「あぁ…… 父さんのあんな姿をまた見れるなんて…… よかった。 ホントに よかった…… パールちゃん、ありがとう」
「お役に立てて よかったです」
しばらく三人で、くつろいでいろいろ話しをする。
リングオトーレのことを詳しく聞いたり、わたしの国ではオトイレのことをトイレ っていうんだと教えたり…….
ちょっとの違いが楽しい。
そうしていると、マプさんが戻ってきた。
なにか、持っている?
「父さんお帰り。 んっ もしかして、迷いの森に行ってきたのか? それは、パールちゃんに?」
「あぁ、まだ 十歳になってないと言っていたからな。 ギリギリ間に合うだろう…… 」
わたしに?
黒い 何かの実?
テトリのこぶしぐらいの大きさ?
「パールちゃん、いますぐ食べなさい。 せっかく採ってきたんだ。 採りたてに近いほどからだに良いし、おいしい」
「オレは、いいぞ。 それは 十歳までの子が食べるんだ」
そうなんだ……
せっかくなので、いただく。
「んっ、おいしいー!!」
めちゃくちゃ おいしい!
見た目よりも トロッと 濃厚で、香りもすごくいい。
なんだか甘くて、不思議なコクもある。
なんだろう? この味?
あっという間に、食べ終わる。
あれ、タネも何も…… なかった?
全部、食べちゃった。
からだが少し ポカポカ している。
「おいしいかったか?」
マプさんが聞いてきたので、食べたことのない味で すごくおいしいかったと答える。
この実は『ジュウネン』というらしい。
名前のとおり少し特別な 、十歳までの子どもにしか甘くない実で、テトリは食べたくても苦くて食べられないそうだ。
不思議?
迷いの森に住んでいる体長 二メートルぐらい。
小型の草の魔物。
葉にも栄養があるけどこの実を採るときは、先に花を探して、その中に実があるかをまずは確認する。
ちょっと硬くて攻撃してくる葉を全部、まずは切り落としてから採取しないと、栄養が実にいかない変わった実。
その実を採ると、切り落とした葉はその場で全部枯れてしまう。
本来なら、ひとりで採りにいくのは大変で危険なんだとアロさんが教えてくれた。
子どものために、親が最初に頑張る行事にもなっていて、孤児院の子どもは寄付で食べれるモノなんだそうだ。
十年あるからね!
「そんな、貴重なモノを…… ありがとうございます」
「いや、わたしの方がお礼をいわないと いけない。 もう あきらめていたからね…… 」
マプさんの顔つきが、少し変わった?
目が イキイキ していて、なんというか……
怖さが、増した?
「お義父さん、アロー! これは どういうこと?」
アロさんの奥さんアクロさんが深々と帽子をかぶって、近所の屋敷からやってきた。
どうも、魔力を分けてもらった娘のスピノさんが、おじいさんの魔力がおかしい、なにかあったから見てきてほしいと母親のアクロさんに頼んだらしく、あわててきたそうだ。
「店の前ぐらいからお義父さんの魔力を感じて、これは何かあったと すごく心配したのよ!」
アロさんがあわてて、奥さんのアクロさんにこれまでのことを説明すると、アクロさんが泣き出した。
なんだか、すごいことになってきた……
テトリをみると、軽くうなずいて話しだす。
「マプさん、アロさん、アクロさん! これ以上 目立ったことをするのなら、オレたちは、次に行くよ! マプさん、魔力を おさえて。 アロさん店にもう 一度 カギ! アクロさん、泣き止んで。 店の外にパールのことが、バレてしまうよ!」
そうだ! そうだわ!
みんな、我に戻ってくれた。
よかった……
それからはアクロさんが、まだ行かないでっと、わたしたちに飲み物をだしてくれる。
テトリはよろこんで飲んでいたけど、わたしはさっきジュウネンも食べたし、どうしようかな?
「パールちゃん。 無理にとは言わないけど、これは からだにすごく良いモノだから、飲めるようなら飲んでちょうだいね」
アクロさんに勧められたので、うなずいて飲むことにした。
んっ、これは……
ブロンさんのところで飲んだモノに、すごく似た味?
同じ モノ?
テトリをみると、目が合い ニッター っと笑う。
これは…… 黙って、飲めっということだな……
そういえば、ブロンさんのとっておきだったから、お高い飲み物なんだろ……
テトリ、飲めるときにたっぷり飲むつもりだな……
わたしもテトリをみて、ニッター っと笑っておく。
マプさんが、アクロさんをみて。
「おい、おまえたち。 先に夫婦で、ポーションを飲んでしまいなさい」
子どもより先に飲むのはと、夫婦で少しぐずっていたけど、なにがあるかわからないから、飲んだほうがいいとマプさんがなんだか意味深く説得している。
妻のアクロさんは、夫のアロさんが中級ポーションを飲んでくれるのなら、いま飲むといいだして夫のアロさんのからだを優先して説得しだした。
最後はアロさんが折れて、順当に決まった。
アロさんが中級ポーション。
アクロさんが下級ポーション。
マプさんが、ホッと した顔をしていたのが印象的だったな……
夫婦仲よく並んでソファに座って、すぐ 一気に飲み干していた。
二人のからだが、フワッと 光ったと思ったらすぐにおさまる。
アロさんが妻のアクロさんの顔を 一番に覗きこみ 涙を流して、アクロさんに教えてあげている。
「治ってる……キレイだよ…… 」
夫婦で抱き合って泣きだした……
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あとは、娘のスピノさん。
みんながはやく、元気になると いいな……
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