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44. ついていく

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 リビングにいくと、もうマーク特製ハーブティーが入れてあった。
 マークは黙ったまま わたしにハーブティーを 渡してくれる。

「パール。このあいだは急に みんなの前であんなこといって すまなかった。 せめて、二人のときに話すべきだったと 反省している。 でも、気持ちは変わらない。おまえがここにいることができないのなら、二人で王都にいって また 一から やり直そう。こんな足だが、おまえの世話にはならないし 大丈夫だ。安心しておまえは、冒険者でも なんでも 好きにしたらいい。おれがついていく。またあっちで 一緒に暮らそう」

「マーク……  わたしのことが心配なだけなら、ホントに大丈夫だよ。なんなら手紙も、年に 一度は だすつもりでいたし…… 」

「パールは、おれと 一緒に暮らすのが いやか? 」

「そんなこと、あるわけないでしょう! うれしいに 決まってるじゃない! 」

「じゃあ、なにを悩んでいる? 」

 えっ、わたしが悩んでいたの また顔に でてたのかな?
  
「パール……  おまえのホントの気持ちを、聞かせてくれるか? 」

「わたしは……  わたしのせいでこれ以上、マークの人生を狂わせたくないの。 ホントならマークはこの辺境伯領で のんびり安全に生涯を終えれるはずでしょ?  こんなに長閑で いい職場は 滅多にないよ!  みんなも優しいし、ここをでるなんて……  もったいないよ!」

「そうか、そんなこと思っていたのか…… 」

「パール、おれはな マギーにも義父さんにも先立たれてな、生きる意味をなくしていたんだよ……  マギー たちが亡くなってからの 二年間のことは 正直あまり覚えていないんだ。そんなところにまた、妹夫婦の死だろ?  預かった子どもは 六歳までしか、ここにいられないし……  もう立ち直れないんじゃないかと思っていたんだよ 」

「ホント、勝手にわたしを押し付けて…… ごめんね」

「パール、おまえはなにも わかちゃいない。おれは おまえがここにきてくれて ホントに感謝しているんだぞ!  よくぞリリー は おれにおまえを 預けてくれたってな」

「そうなの? うらんでない? 」

「うらむどころか、感謝だ! 」

 よかった……  やっぱり、気になってたのかな?
 マークの言葉を聞いて、なんだか 胸のつかえが取れたみたい……

「ここは、いいところだと思う。 でもそれは、ここにパールがいるからだ。 おまえがいなければ、ここもそんなに いいところじゃなくなる。おれにとって、おまえは かけがえのない 大切な娘。たったひとりの家族なんだよ」

「マーク、ありがとう。 こんなわたしを受け入れてくれて……  一緒に暮らそうと、いってくれて…… 」

「わかって くれたんだな……   ふー っ よかった。 辺境伯様には、おれも 八ヶ月後、一緒に旅立つと 伝えるよ」

「えっ、それは~  無理でしょう?  後任もまだ、決まっていない状態だよ?  マーク不義理はダメ! 」

「そうだな、ちょっと そこらへんは もう少し、考えてみようか? 」

「うん……  そうだね」

 これからも……  マークと暮すことが できそうだ。

   ♢

「お父さん、わたし……   王都に いくわ。 やっぱり 会えなくなるなんて無理!  ダメなの、あきらめられないの……   ごめんなさい」

「おい、おまえは……   父さんを置いて いく気なのか? 」

「だって、お父さんには ここの料理長という 立派な仕事があるじゃない?  王都にいっても どうなるのか わからないのよ?  あの子、パールは王都も出ていくんじゃないかしら?……   あの子のスキルのことを考えたら、このピアンタ王国は避けて ラメール王国あたりにいくほうがいいのかも? 」

「そうだな。 あのパールのスキルが バレたら、この国の王様なら 城に閉じ込めるな。 それに あの子の容姿。もともと可愛らしい顔つきだったが、六歳になって ますます目立ってきたからな」

「そうなのよ、マークの髪の毛は赤茶色なのに あの子はマークの妹さん、母親似なのね 薄い水色? スカイブルー のような色よね。目の色だって マークは緑でも ちょっと暗いモスグリーンなのに パールは鮮やかなグリーンイエローだもの 目立つわよ」

「髪の毛はおれたちだって、おまえは母親似の青色でおれは赤ぽいこげ茶色だぞ。 まぁ 目の色は 同じブラウンだけど、ここじゃぁ  平民の半数はブラウンだ。緑系統の瞳の色は、お貴族様にも平民にも多いし ピアンタは、緑色だといわれるけど……  パールは 目立つよな」

「そうなのよ、三歳頃までは 髪の毛の色も 薄い水色で そんなに目立たなかったのに だんだんと輝きがでてきて、いまじゃ お貴族様かと思われても 仕方がないほどよね」

「そうだな、ピアンタでは 金髪といえば お貴族様だからな。辺境伯様たちも金髪だしな」

「あら、奥様は 銀髪よ? 」

「あぁ、なんでも セルバの血が入っているそうだ。あっちは銀髪が多いからな。 そう思うと、お貴族様に金髪や銀髪が多い ピアンタやセルバ王国より、多種多様な人種が暮らす ラメール王国が パールには住みやすいかもな」

「そうね、あそこの王家は 黒髪に濃いブルーの瞳なんでしょ? なんでもありの国のほうが 目立たなくていいわよね」

「ハー ッ 、おまえ ホントに ついていくつもりか?  この国を でるかもしれないんだぞ! 」

「 …… 親不孝を 許して、マークのこともだけど、わたしからしたら パールだって 大切な 娘のような、妹のような子なのよ……   マークの気持ちが わかるわ…… 」

「おまえにとって、パールが 娘のような 妹のような存在なら、おれには 孫か 子どもになるな。おれにとっても 大切な子だよ……  これがもしも シーナだと思うと……  マークの気持ちが よくわかる」

「わたしが、初恋を こじらせた ばっかりに……        ごめんね、お父さん…… 」

「マークのことを やっと諦めてくれたかと 思った 矢先に、マギーちゃんたちの死だ。 そのときは おれもおまえもマークも フラフラ だったしな」

「そうよね、お母さんが 亡くなって すぐに マギー 姉さん  そのすぐあとに ベンさんまで……  思い出しただけでも、泣きそうになるわ……  お父さん、ごめんなさい。 やっぱりわたしは マークのそばにいたいの、そばにいるだけで いいのよ…… 」

「マークは、いいヤツだと 思うけど……   ホントに鈍感で……  いまは、パールに かかりっきりだしな」

「 …… うん」

「「 ハァー 」」

「あの二人に 振りまわされるな……  よし、わかった。 こうなったら わしら親子は、とことん 振りまわされてやろう!  わしもいく。 わしはシーナ、おまえについて どこまでもいくぞ! 」

「うそっ 、お父さん……   いいの?  料理長を辞めるのよ? 」

「かまわんさ、いつかは 辞めるときがくる。 それに、わしもマークと同じ……  ただ、幸せそうに笑っている おまえを……   ずっと そばで みていたいんだよ…… 」

「お父さん……  決めたわ。 みていて……    わたし……   みんなの 幸せのために……    マークを……      思いきって、思いっきり 口説いてみるわ!! 」


「 えっ ?! 」






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