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42. シャツとズボン
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今年のシーナからの誕生日プレゼントは、もう決まっている。
冒険者をするときに着る 、シャツと ズボン。
今回は、二人で 生地から選んでいく。
目立ち過ぎず地味過ぎず、絶妙な色合いの服にするには、冒険者の装備である、革のベストと腰巻きとの相性が重要になる。
出来上がり途中のベストと腰巻きを見に 革屋さんへ向かい 色の確認をしたり、生地屋さんにも 何度か足を運んで シャツとズボンの色を決めた。
革のベストと腰巻きは、裏地にシャークの革を使うことになったので、見た目はちょっと長めの冒険者のベストと腰巻きになるだろうと バンさんが教えてくれた。
貴重な革なので、まずは安い革で 試作することになっていた。
どんなのができるのか楽しみだ。
バンさんは、何か希望はないかと 聞いてくれる。
わたしでは、思いつかないと 伝えた。
シーナはそんなやりとりを聞いて、ちょっと首をかしげて わたしに代わって答えてくれた。
「女の子だから、あまり 襟ぐりの開いているものは ダメ。 でも、冒険をするのだから窮屈でもダメ」
なるほど、なんとなくだけど わかるような 気がする。
「うーん? 難しいけど 言いたいことは なんとなく、わかる」
シーナがベストの首まわりの開き具合に こだわりをみせる。
バンさんも、あごを右手で さすりながら 考えている。
横で聞いていた バンさんのお父さんが、笑いながら 感心していた。
「シーナちゃんは、いろいろ おもしろいことを言うな。 それに きちんと、パールちゃんのことを考えている。 冒険者には良いヤツも悪いヤツもいる。 変なヤツに 目をつけられたら大変だ。 そういうところも考えて 着る人のことをちゃんと思って 物は作らないと いけない。そう思ったら、おい バンよ。 襟が詰まってたり 開いたりできるベストの 一つ や 二つ 作るのなんぞ、大したことじゃないぞ! 」
「「 それ、だ (よ) 」」
二人の声が重なり、おじさんが ビックっと していた。
「そうよ、襟が折れる形にすればいいのよ。誰もいないときには、ボタンを外して その部分が折り返るようにするの。 締めておきたいときには、きちんとボタンを 締めておく」
誰もいないときになら、襟元を開けてもいいベスト…… とは?
「それ、いいね! 体の成長も考えて ボタンの位置が調整できるように 考えてみるよ」
「それは、ステキね! さすがバンさんのお父さん。 的確な アドバイスだわ! 」
なんだかまた、気になる言葉もあったけど ステキなベストに 近づいているようだ。
おじさんもオレのアドバイスが?っと、自分が何かいいことを言ったのだとわかると、ちょっと偉そうに胸を張って。
「何十年、革屋をやってると 思ってるんだ? まだまだ コイツには負けないさ」
ハッ ハッ ハッハー ハーッ
おじさん、ホントに うれしそう……
茶色のシャツに深緑のズボン。
やっと、決まった。
シーナが長く着れるようにと、裾の折り返しが 二重になっている。
短くなってきたら、一度だけ糸を切って 伸ばせるようにしてくれるそうだ。
シーナに 感謝だな。
レベルも39 になり図書室の本は、すべてスキルコピー できた。
この王国のことも、隣国のことも 知識としてだけなら、いろいろ蓄えられた。
身長も 少し伸びて、体も ちょっと 大きくなったと 思う?
少しは冒険者らしく 見えるだろうか……
そして、わたしは 六歳になった。
わたしの誕生日。
恒例のお披露目会は、シーナが縫ってくれた 冒険者のときに着る 茶色のシャツと深緑のズボンを着て 厨房で開催された。
みんなが似合っていると ほめてくれていたけど、トムさんだけは 少し怒っている。
「こんなに小さな子どもに なにをさせるのか、お貴族様は ちっとも わかちゃいない…… 」
「 …… トムさん、大丈夫だよ。 シーナが作ってくれた この服を着て頑張るよ。ほら見て この服、かわいいでしょ! 」
おどけて、くるっと 回って シャツとズボンを披露した。
そんなわたしに トムさんは、目尻を下げて 機嫌を直してくれる。
「おー 、そうだった! この服は よくできている。 シーナが 一生懸命、丁寧に作っていたからな! 」
そこからは 毎年のシーナ自慢に早変わりで、楽しく過ごした。
王都に いつ旅立つのか?
何回もマークと話し合って、八ヶ月後に決まった。
わたしはもう、どうせ行くなら 早くてもよいと思っていたけど、マークとトムさんが 七歳直前で いいだろうという。
シーナがあいだをとって 半年後を提案してくれて そこからまた マークが ごねて、トムさんが なぜだか 大きく声を張り上げて ひと言。
「八ヶ月後だ!」
遅すぎず 早くもない、ちょうどいいだろうと 告げる。
辺境伯様に報告も しなければいけないので、マークも渋々 納得していた。
ただ、なにかあれば そのときまた 考える という条件付きだった。
今度は、わたしがうなずいた。
あと八ヶ月。
やり残したことはないか?
ぐるぐる頭の中で 考えていた。
そんなときだった。
マークが急に語りだした。
「おれは…… やっぱり ここを離れようと 思う…… 」
「「「 えっ!? 」」」
冒険者をするときに着る 、シャツと ズボン。
今回は、二人で 生地から選んでいく。
目立ち過ぎず地味過ぎず、絶妙な色合いの服にするには、冒険者の装備である、革のベストと腰巻きとの相性が重要になる。
出来上がり途中のベストと腰巻きを見に 革屋さんへ向かい 色の確認をしたり、生地屋さんにも 何度か足を運んで シャツとズボンの色を決めた。
革のベストと腰巻きは、裏地にシャークの革を使うことになったので、見た目はちょっと長めの冒険者のベストと腰巻きになるだろうと バンさんが教えてくれた。
貴重な革なので、まずは安い革で 試作することになっていた。
どんなのができるのか楽しみだ。
バンさんは、何か希望はないかと 聞いてくれる。
わたしでは、思いつかないと 伝えた。
シーナはそんなやりとりを聞いて、ちょっと首をかしげて わたしに代わって答えてくれた。
「女の子だから、あまり 襟ぐりの開いているものは ダメ。 でも、冒険をするのだから窮屈でもダメ」
なるほど、なんとなくだけど わかるような 気がする。
「うーん? 難しいけど 言いたいことは なんとなく、わかる」
シーナがベストの首まわりの開き具合に こだわりをみせる。
バンさんも、あごを右手で さすりながら 考えている。
横で聞いていた バンさんのお父さんが、笑いながら 感心していた。
「シーナちゃんは、いろいろ おもしろいことを言うな。 それに きちんと、パールちゃんのことを考えている。 冒険者には良いヤツも悪いヤツもいる。 変なヤツに 目をつけられたら大変だ。 そういうところも考えて 着る人のことをちゃんと思って 物は作らないと いけない。そう思ったら、おい バンよ。 襟が詰まってたり 開いたりできるベストの 一つ や 二つ 作るのなんぞ、大したことじゃないぞ! 」
「「 それ、だ (よ) 」」
二人の声が重なり、おじさんが ビックっと していた。
「そうよ、襟が折れる形にすればいいのよ。誰もいないときには、ボタンを外して その部分が折り返るようにするの。 締めておきたいときには、きちんとボタンを 締めておく」
誰もいないときになら、襟元を開けてもいいベスト…… とは?
「それ、いいね! 体の成長も考えて ボタンの位置が調整できるように 考えてみるよ」
「それは、ステキね! さすがバンさんのお父さん。 的確な アドバイスだわ! 」
なんだかまた、気になる言葉もあったけど ステキなベストに 近づいているようだ。
おじさんもオレのアドバイスが?っと、自分が何かいいことを言ったのだとわかると、ちょっと偉そうに胸を張って。
「何十年、革屋をやってると 思ってるんだ? まだまだ コイツには負けないさ」
ハッ ハッ ハッハー ハーッ
おじさん、ホントに うれしそう……
茶色のシャツに深緑のズボン。
やっと、決まった。
シーナが長く着れるようにと、裾の折り返しが 二重になっている。
短くなってきたら、一度だけ糸を切って 伸ばせるようにしてくれるそうだ。
シーナに 感謝だな。
レベルも39 になり図書室の本は、すべてスキルコピー できた。
この王国のことも、隣国のことも 知識としてだけなら、いろいろ蓄えられた。
身長も 少し伸びて、体も ちょっと 大きくなったと 思う?
少しは冒険者らしく 見えるだろうか……
そして、わたしは 六歳になった。
わたしの誕生日。
恒例のお披露目会は、シーナが縫ってくれた 冒険者のときに着る 茶色のシャツと深緑のズボンを着て 厨房で開催された。
みんなが似合っていると ほめてくれていたけど、トムさんだけは 少し怒っている。
「こんなに小さな子どもに なにをさせるのか、お貴族様は ちっとも わかちゃいない…… 」
「 …… トムさん、大丈夫だよ。 シーナが作ってくれた この服を着て頑張るよ。ほら見て この服、かわいいでしょ! 」
おどけて、くるっと 回って シャツとズボンを披露した。
そんなわたしに トムさんは、目尻を下げて 機嫌を直してくれる。
「おー 、そうだった! この服は よくできている。 シーナが 一生懸命、丁寧に作っていたからな! 」
そこからは 毎年のシーナ自慢に早変わりで、楽しく過ごした。
王都に いつ旅立つのか?
何回もマークと話し合って、八ヶ月後に決まった。
わたしはもう、どうせ行くなら 早くてもよいと思っていたけど、マークとトムさんが 七歳直前で いいだろうという。
シーナがあいだをとって 半年後を提案してくれて そこからまた マークが ごねて、トムさんが なぜだか 大きく声を張り上げて ひと言。
「八ヶ月後だ!」
遅すぎず 早くもない、ちょうどいいだろうと 告げる。
辺境伯様に報告も しなければいけないので、マークも渋々 納得していた。
ただ、なにかあれば そのときまた 考える という条件付きだった。
今度は、わたしがうなずいた。
あと八ヶ月。
やり残したことはないか?
ぐるぐる頭の中で 考えていた。
そんなときだった。
マークが急に語りだした。
「おれは…… やっぱり ここを離れようと 思う…… 」
「「「 えっ!? 」」」
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