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41. シーナと買い物

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 今日は、シーナと二人で 王都に旅立つために必要なものを選びにいく。

 洗い代え用の服に 簡単な寝間着や下着もいる。
 お店の人に注文して、いろいろ作ってもらう。

 あとまだ早いが 初潮を迎えたときの方法と、その材料も シーナと お店の人に 一通り 揃えてもらった。
 まだだし、ちょっと恥ずかしかったけど シーナと お店の女将さんが 真剣に説明するので 黙って聞いていた。

 マークは今回なぜか 一緒に お店へ こなかったので、事前に二人で相談していて、このことを 知っていたのかな?
 マークでは 教えてもらえそうにない ことだし、シーナには ホント感謝だ。

 あの日 シーナの気持ちを知ってから、二人の様子を見ているけど、やっぱり あたりまえのように マークは 気づいていない。
 鈍感、マークめ! 
 まぁ わたしも 最近 知ったのだから、人のことは いえないか?
 なので もう少し、そっと しておくことにした。

 服 選びは しんどいけど、楽しい。

 お店の女将さんも これだけ大量に買ってくれるのは、これから結婚する 花嫁さんぐらいで、それでも こんな小さいサイズではないから 選ぶのもかわいくて楽しいといって 、シーナと 一緒に わたしを見ながら張り切って選んでいた。
 ここのお店は 服に雑貨、とくに服飾関係に強いお店のようで シーナがわたしの買い物をするために、先にお店の人に 六歳ぐらいの女の子が必要になりそうなものを 揃えておいてほしいと 頼んでくれていたようだった。
 マークと 一緒。
 優しい 二人。

 わたしは、下着と 大きめの手拭いを 多めに買ってほしいとだけ 伝えておいた。
 シーナは ピンと きて、お風呂だなっと 思ったようだけど、お店の女将さんは 大きめの手拭いなんて 何に使うのか 不思議がっていて、シーナが 説明していた。

「この子は 行水が好きだから、王都でも 入る気でいるのよ」

「まあ、そうなのかい。 ここでは入れても 王都では難しいかもしれないよ? でも 揃えておくのは、いいことさ! 」

 商売上手な女将さんは、売れるとわかると ホイホイ手拭いを 数種類 出してくる。
 ちょっと その変わり身の早さに 引きそうになったけど、シーナが サッサと 肌触りのよさそうな手拭いを 何枚か選んでくれていた。
 ホント、助かるよ。
 
 この手拭い選びには 途中から わたしも参加して、肌触りの良い物を確かめて 選んでいると、女将さんがなにか思いついたように 一瞬目を大きく開け 声に出さない アッ を叫んで、店の奥に消えていった。
 中から 小さなリンゴケースのような木箱を 持ってくる。

「ちょっと、これを 見てくれるかい?  うちの人が 今回 商品の調達で王都にいって、いまの王都の流行りだと 持って帰ってきたのさ」

 なんだろ? と 思って見てみると 小さな四角い かたまりのようで、シーナが聞いていた。

「これは なに? 」

「これはね、最近 ラメール王国で 錬金術のレシピが公開されて それから大量に作りだされた、植物からできた 石けんだよ。王都では、すごい流行りようらしくて、それで うちのも少し 仕入れたのさ。行水が好きなら パールちゃんにも どうかと思ってね」

 石けんだー! チェリー から聞いていて、ほしかったんだよ!  買いだよ! 買うよ!

「買います! いくつ 売ってくれますか? 」

「もう、なにをいっているのよ?   王都で 流行っているのなら 王都に行ってから、いくつでも 買えるでしょ!  これは いま、パールが使う分と 予備で 二個 ぐらいで 十分よ! 」

 そうか! これは王都にいってから いくらでも 買えるのか……  もしかしたら 王都のほうが 安い?

「そうだね、それで いいね……  」

 女将さんもいまは これだけしかないからと、シーナの意見に 賛成していた。
 冷静になれて よかった……  
 大量に物を買っていると 感覚が鈍くなるのか……
 あぶない、あぶない。
 女将さんは なぜか、にたーっと 笑って また話し出した。

「石けんは、そんなに いっぺんには 売ってあげられないけど、これはどう? 」

 いつ、どこから持ってきたのか? 
 女将さんの手には 数枚の ヒラヒラした布が 握られていた。
 広げられた それは、んっ、前かけ?

「これもいま 王都で流行っている エプロンと 呼ばれている物さ。 まぁ、前かけ なんだけどね。 いままでと違って 色の種類が豊富で、着古した服が 安い値段で 新しく雰囲気を変えるから 平民のあいだで 大人気なんだそうだよ」
 
 たしかに薄い黄色に 黄緑、赤に 茶色と 全部 薄めの色だけど つけると雰囲気が 変わるかも?

「これも、ラメール王国からなの? 」

 おっと、今度は シーナが 食いついた!
 女将さんがうなずいて、シーナに 近づいていく。
 これは……  

「シーナ かわいいよ!!  それいい! 」

 シーナの 質問の言葉と同時に 女将さんは、シーナに 薄い赤色のエプロンを サッ とつける。
 いま着ている 茶色のワンピースが 少しだけ 華やかになった。
 さすが お店の女将さん!  人も みている。
 茶色に赤だから 少しだけ変わった感じになって、あまりエプロンを主張させずに うまく まとめている。

「いまは、同系色だから あまりエプロンが目立たないけど、下に着る服を 緑なんかにしたら もっと華やかな雰囲気になるわよ~ 」

 うまい! シーナは緑色のワンピースも持っている!
 もしかして、女将さんも 知っているのかな?
 
「 …… 買うわ!  ほかの物も 見せて! 」

「はいよ! 」

 これは、もう 止められない……
 女将さんは、いい笑顔で シーナの相手をしだした。
 悩むシーナに、ほどよい合いの手が はいる。
 少し離れて見ていると、よくわかる。
 
「そうだね。 何枚もだと、高くつくものね。 でも 新しく服を買うよりかは~ 安いんだけど ね~ 。 このエプロンは こっちでも流行るようなら 作ろうかと 思っているんだけど、これは~ ラメール王国からの 物だから~ この色は もう ないんだよ~  」

「 …… 買うわ! 赤と緑と黄緑色の三枚、これは代金 別にしてね」

「はいよ。いい物 選んだね、似合ってたよ!」

 …… お店の 底力を 見たような 気がする。
 おそるべし、女将さん!?
 でも、シーナがすごく うれしそう……
 目がキラキラしていたから、よかったよ。

 わたしもシーナも女将さんもやっと ひと息つけた。

 いろいろ選んで集めた、大量の商品と注文書をしみじみと見て、ふいに 女将さんが つぶやいた。

「こんなにまだ 小さいのに……  」

 シーナも ハッと して、つらそうな顔を していた。

 わたしは 二人を見て ちょっとおどけて、笑うしかできなかった……


 もうすぐわたしは、六歳になる。
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