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39. レベル38 からの特典

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 ふ、ふ、ふ、ふっ。

 今日からお屋敷の図書室に、堂々と入れる!

 辺境伯様に、図書室の使用許可を 得た。
 王家や辺境伯家のことを 図書室で詳しく調べたうえで、しおりを作りたいと マークに願い出てもらった。
 もう隠れて図書室に 入らなくてすむ。
 でも、まだスキルコピー は使えないので、地道に王家について調べることには なるけどね。

 聞くところによると、なんだか あまりいい噂の聞かない王様らしく、はやく優秀だと評判の 次の王太子に代わらないかと 思っている人も多いみたいだ。
 聞けば聞くほど イヤになる。
 絶対下手に 目立ってはダメ。
 王家には、良すぎる物も へんな物も 渡せない。
 無難な落としどころを 探さなければ。
 
 材料は潤滑だし カイルさんとマークに相談して、丸太の真の部分で贅沢に、前回の分よりも ひとまわり大きい しおりを 作ることにした。

 しおりを板状にするのは、またマークがやってくれることになった。
 慣れてるしね!

 軽く しおりの回りに 透かし模様を入れて、豪華ぽくそして どうやって作ったんだと思うほど 繊細でもない物にする。
 どんな模様を しおりにいれるか すごく悩んで、図書室に何度も通った。

 結局これも無難に 王家には王家の象徴 ユリの花を、しおりのフチの回りに入れて 真ん中にピアンタと王国名を入れることで落ち着いた。
 辺境伯家には 家紋の中にある蔦を 回りに少し入れて 前回と同じように リエールと入れる。
 何度も別の木で練習して、納得のいくものができたときには、わたしのレベルが 38 になっていた。

 それだけ細かいことを 練習したと思うべきか、レベルが 30 を超えると、こんな細かいことでも レベルは上がるのかと思うべきか、ちょっと思うところはあるけど これで スキルコピー が使えるはずだ。

 マークには、出来上がった しおりを 辺境伯様に届けてもらうときに、もっと この王国や薬草について 勉強したいので、図書室の使用を 継続させてほしいと 伝えてもらう。

 しおりが 思いのほか評判がよいので、二つ返事で 了承された。

 それからは 朝九時、四の鐘がなってから 一の鐘がなるお昼まで 図書室にこもり 念願だった スキルコピー を使いまくった。

 昼食を食べてからも 図書室にこもりたかったけど、マークが剣の練習や 冒険者の準備で止めるので、なかなか昼からは いけない。

 なので、ふ、ふ、ふっ。
 密かに夜、部屋の窓から図書室へ 以前のように忍びこんで スキルコピー を 使いまくっている。

 頭に すごい勢いで入ってくる知識に 酔いそうになるときもあったけど、引き出しが頭の中に できたような感じがしてからは けっこう楽しい。

 マークには バレているようにも 思うけど、鐘が 一つなる 十二時までには 帰ってきているので 見逃してもらっているのかも?


 図書室に通いながら、悩んでいるのは このお屋敷を旅立つときに みんなに渡す プレゼント。

 作るのに慣れた しおりでも よろこばれそうだが、そうすると 王家に渡した しおりの値打ちがなくなって、辺境伯様に 文句をいわれるかもしれないし。
 お貴族様と平民で、差をつけなきゃいけないから 困ってしまう。

「チェリー 、なにか みんなに渡すのに 作りやすくて邪魔にならない 男女両方が使える小物って ないかな? 」

「はい、ネックレスなどが 簡単かと思います」

 頭に いろいろなネックレスが 浮かんできた!

「チェリー!  頭の中に浮かぶ、この いっぱいのネックレスは なんなの!?  こんなの わたし知らない。 見たことないよ! 」

「はい、これらは『前世の記憶』から 引き出した ネックレスです。これらなどは どうでしょう? 」

 頭の中には、木や石などが いろいろな形に整えられ、キレイに磨かれて 革の紐に通されている さまざまなネックレスの映像が 次々にでてきて 驚いた。

「こんなこともできたの!?  聞いてないよー!! 」

「はい、レベル38 からの特典です。 『前世の記憶』から わたくしが、パールに聞かれたものを検索して 引き出し 答えます」

「すごくいい。 このネックレス かわいいよ!  革の部分を調整したら、カバンや腰にも 付けられるよね!? 」

 きゃー っ 、また映像がっ!

「これは…… なに、いまいってた カバンに付ける……『キーホルダー』でしょう! 思い出した! 」

 すごいよ! 大興奮!

 この新しい特典は いい、すごく 便利……

「はい、いかがでしょうか? 」

 こんな 素晴らしい スキル?  特典? が 新しく でてきてたのなら もっと早く、すぐに 教えて欲しかったよ。

 ちょっと チェリー が 恨めしいけど、必要なときには教えてくれたんだし まぁ、よし と しておこう。


 みんなに渡すプレゼントは 香木の キーホルダー にもできる、ネックレスに決めた。

 デザインはすごく悩んだが、平べったい円の 中心より少し上に、また円が くり抜かれている 単純な形の物にした。
 そのくり抜かれたところに 革紐を通して、ネックレスにする。

 この形に関しては、マークにも相談した。

「おまえの名前。パールを連想できる 丸い かわいい形で、いいんじゃないか」

 
 この 一言で 決定した ヘ、へ。






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