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35. ルートの しおり
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今日は朝から しおり作りだ!
マークもこの、しおりプロジェクト? の 一員に 正式に決まった。
実は、辺境伯様にこのしおりの話しが、昨日のうちに伝わった。
カイルさん、仕事がはやいね。
カイルさんとマークでわたしをフォローしながら、しおり作りを正式に進めるよう、二人に 通達があったみたいだ。
特にマークは わたしにピッタリついて、フォローするように いわれたようだ。
そのあいだの馬番の仕事は、最低限でいいそうだ。
もちろん、これはルート様たちのプレゼントなので辺境伯様も二人には ナイショにしてくれる。
「やるか? 」
「うん、やってみる」
「よし。 じゃあ まずは、作業部屋で 下準備をするぞ」
二人で作業部屋に入り、いろいろと準備する。
マークは木を薄く切る。
わたしは横で薄くなった木に ルートと墨で 名前を書いていく。
途中 ルートに飽きて、名前を アースに かえて 三十枚は 作ったかな?
でも、ほんとに 見ていたらわかる。
マークの作業は 大変……
…… ありがと、マーク。
よし、名前も書けたし、もう一度 名前入れに挑戦だ!
今回はちょっと もったいないけど、マークに頼んで紙を 用意してもらう。
井戸の平らな石の横に、小さなテーブルと椅子を置いてもらい、そこで 一回ずつ メモをとりながら 作業する。
火の温度に注意して、弱い火からイメージしてやってみた。
ジリジリ…… ジリジリ……
弱すぎた。
木に穴が あかない…… 次。
今度は 中ぐらいの火を思い浮かべて、 えいっ!
ジュッ、 チリチリチリ………… バシャッ
火はいい感じだと思うけど、そのあと木が燃え続けて 水をかけるまで消えない…… 次。
強い火は ダメだろう?
これ以上強かったら 木が燃えてなくなってしまう。
いや、かえって 一瞬だから…… いけるのか?
火のイメージをかえてみる? 色?
氷の魔法も使ってみる?
ウーン……
それからあと追加で 五十枚、マークに作ってもらった。
なんとか四苦八苦しながらも、イメージ通り。
薄い木に、名前に沿った穴があいた。
穴の名前は ルート。
「できたか? 」
「なんとかね」
「はい、今日は ここまでだ。また腹の虫が催促するぞ」
「 …… わかった。 明日は貴重な木で 始めるね」
♢
さっそく、朝から井戸の作業場でマークが用意してくれた 本番用の貴重な薄い木に、魔法で ルートと 名前を入れる。
木が焼けると、また少し違った 良い香りがした。
あれ? この香り 知ってる?
「香木? ばあちゃんが好きだった 香りかな? 」
「この 木の名前を 知っているのか!? 」
突然カイルさんに声をかけられて、ギョッと する。
手には紐がみえる。
あー 、しおりの紐を 持ってきてくれたのか……
仕事が 早いなぁ。
んーー どうしよう。
カイルさんに、なんて いおうか……
「カイルさん、ちょっと こっちに きてくれるか」
マークがカイルさんを 小屋の中に連れていく。
わたしの『前世の記憶』について 話してくれるみたいだ。
あれっ? カイルさん?
なんだか思ってたより、すんなり受け入れてくれた。
やっぱりあの倒れていたあとぐらいから、わたしが急に変わったようで、へんだと思っていたらしい。
料理長トムさんのわたしに対する態度も ちょっと かわったし、その頃から 食事も美味しくなったと話してくれた。
そのあとは、わたしの思い出した香木のことを 教えて欲しいという。
違う木かもしれないけど、っと 前置きしてから 話す。
「あの木は コウボク。 よい かおりをもつ木 という意味の名で、別に正式な名前もあったと思うんだけど…… 思いだせそうで、思いだせないのよね」
カイルさんがいってたとおり、まわりの木の栄養を根っこから吸い上げて 生きていたこと。
香りは木の真の部分が 一番強くて、上等な部分だったこと。
確かオイルも採れるし、木の実も 食べれたと思うと伝える。
「これぐらいだよ、知っていることは…… あとなにか 知りたいことでもある? 」
「んー なぁ この香木、パールの前世? では、どんな扱いだったんだ? 」
「あー っ 、そうだね だいぶ高価で 貴重な木だったと思うよ」
ばあちゃんがこの香木の香りが好きだけど、すごく高いと いっていたような……
あれっ、また不思議な感じ……
『この香木はオイルも採れるし木の実は食べれる、 根っこまで良い香りがするんだよ。 燃やしてもいい香りだしねぇ。 この香りを楽しむまで育てようと思ったら、最低でも 十五年は 待たないといけない。 今、わたしが使っている香りは 八十年物で 最高さ! 』
なんだ これ……
『時間も手間もかかる。 見つけたらみんなに、根っこまで抜かれて 乱獲されてしまうから 数が少なく貴重なのさ』
って 聞いたことが あるような……
また、思い出したんだ……
「そうか 貴重なのか! 」
「コウボク…… 良い響きだ。 オレらは あの木とか、あれ とかしか 呼んでなかったからな」
「香木。香りをもつ木、香りを楽しむ木だな。 いいね…… 」
「燃やしてもいいって ことは、捨てるところ無しだな」
「これ渡しとくな! パールの秘密は 必ず守る。 大丈夫だ! またくる! 」
紐を置いて、あっという間に 帰っていった。
すごいな…… カイルさん。
あっ そうだった、マークだ!
成功した『ルートのしおり』をマークにきちんと見せて、まわりを磨かないと。
「マークこの、しおりの ルート。 文字はどう? 」
「あー 、うまくできてる。 あとは 磨きと 穴あけか?」
「うん、でも あともう少し 頑張ってみるよ。 これはまだ、試作品だしね」
こうして、また 一人 。
『前世の記憶』のことを知っている、わたしの味方が増えたのだった……
味方は 大切 だよね 。
マークもこの、しおりプロジェクト? の 一員に 正式に決まった。
実は、辺境伯様にこのしおりの話しが、昨日のうちに伝わった。
カイルさん、仕事がはやいね。
カイルさんとマークでわたしをフォローしながら、しおり作りを正式に進めるよう、二人に 通達があったみたいだ。
特にマークは わたしにピッタリついて、フォローするように いわれたようだ。
そのあいだの馬番の仕事は、最低限でいいそうだ。
もちろん、これはルート様たちのプレゼントなので辺境伯様も二人には ナイショにしてくれる。
「やるか? 」
「うん、やってみる」
「よし。 じゃあ まずは、作業部屋で 下準備をするぞ」
二人で作業部屋に入り、いろいろと準備する。
マークは木を薄く切る。
わたしは横で薄くなった木に ルートと墨で 名前を書いていく。
途中 ルートに飽きて、名前を アースに かえて 三十枚は 作ったかな?
でも、ほんとに 見ていたらわかる。
マークの作業は 大変……
…… ありがと、マーク。
よし、名前も書けたし、もう一度 名前入れに挑戦だ!
今回はちょっと もったいないけど、マークに頼んで紙を 用意してもらう。
井戸の平らな石の横に、小さなテーブルと椅子を置いてもらい、そこで 一回ずつ メモをとりながら 作業する。
火の温度に注意して、弱い火からイメージしてやってみた。
ジリジリ…… ジリジリ……
弱すぎた。
木に穴が あかない…… 次。
今度は 中ぐらいの火を思い浮かべて、 えいっ!
ジュッ、 チリチリチリ………… バシャッ
火はいい感じだと思うけど、そのあと木が燃え続けて 水をかけるまで消えない…… 次。
強い火は ダメだろう?
これ以上強かったら 木が燃えてなくなってしまう。
いや、かえって 一瞬だから…… いけるのか?
火のイメージをかえてみる? 色?
氷の魔法も使ってみる?
ウーン……
それからあと追加で 五十枚、マークに作ってもらった。
なんとか四苦八苦しながらも、イメージ通り。
薄い木に、名前に沿った穴があいた。
穴の名前は ルート。
「できたか? 」
「なんとかね」
「はい、今日は ここまでだ。また腹の虫が催促するぞ」
「 …… わかった。 明日は貴重な木で 始めるね」
♢
さっそく、朝から井戸の作業場でマークが用意してくれた 本番用の貴重な薄い木に、魔法で ルートと 名前を入れる。
木が焼けると、また少し違った 良い香りがした。
あれ? この香り 知ってる?
「香木? ばあちゃんが好きだった 香りかな? 」
「この 木の名前を 知っているのか!? 」
突然カイルさんに声をかけられて、ギョッと する。
手には紐がみえる。
あー 、しおりの紐を 持ってきてくれたのか……
仕事が 早いなぁ。
んーー どうしよう。
カイルさんに、なんて いおうか……
「カイルさん、ちょっと こっちに きてくれるか」
マークがカイルさんを 小屋の中に連れていく。
わたしの『前世の記憶』について 話してくれるみたいだ。
あれっ? カイルさん?
なんだか思ってたより、すんなり受け入れてくれた。
やっぱりあの倒れていたあとぐらいから、わたしが急に変わったようで、へんだと思っていたらしい。
料理長トムさんのわたしに対する態度も ちょっと かわったし、その頃から 食事も美味しくなったと話してくれた。
そのあとは、わたしの思い出した香木のことを 教えて欲しいという。
違う木かもしれないけど、っと 前置きしてから 話す。
「あの木は コウボク。 よい かおりをもつ木 という意味の名で、別に正式な名前もあったと思うんだけど…… 思いだせそうで、思いだせないのよね」
カイルさんがいってたとおり、まわりの木の栄養を根っこから吸い上げて 生きていたこと。
香りは木の真の部分が 一番強くて、上等な部分だったこと。
確かオイルも採れるし、木の実も 食べれたと思うと伝える。
「これぐらいだよ、知っていることは…… あとなにか 知りたいことでもある? 」
「んー なぁ この香木、パールの前世? では、どんな扱いだったんだ? 」
「あー っ 、そうだね だいぶ高価で 貴重な木だったと思うよ」
ばあちゃんがこの香木の香りが好きだけど、すごく高いと いっていたような……
あれっ、また不思議な感じ……
『この香木はオイルも採れるし木の実は食べれる、 根っこまで良い香りがするんだよ。 燃やしてもいい香りだしねぇ。 この香りを楽しむまで育てようと思ったら、最低でも 十五年は 待たないといけない。 今、わたしが使っている香りは 八十年物で 最高さ! 』
なんだ これ……
『時間も手間もかかる。 見つけたらみんなに、根っこまで抜かれて 乱獲されてしまうから 数が少なく貴重なのさ』
って 聞いたことが あるような……
また、思い出したんだ……
「そうか 貴重なのか! 」
「コウボク…… 良い響きだ。 オレらは あの木とか、あれ とかしか 呼んでなかったからな」
「香木。香りをもつ木、香りを楽しむ木だな。 いいね…… 」
「燃やしてもいいって ことは、捨てるところ無しだな」
「これ渡しとくな! パールの秘密は 必ず守る。 大丈夫だ! またくる! 」
紐を置いて、あっという間に 帰っていった。
すごいな…… カイルさん。
あっ そうだった、マークだ!
成功した『ルートのしおり』をマークにきちんと見せて、まわりを磨かないと。
「マークこの、しおりの ルート。 文字はどう? 」
「あー 、うまくできてる。 あとは 磨きと 穴あけか?」
「うん、でも あともう少し 頑張ってみるよ。 これはまだ、試作品だしね」
こうして、また 一人 。
『前世の記憶』のことを知っている、わたしの味方が増えたのだった……
味方は 大切 だよね 。
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