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26. 野菜のくずぽいモノ?

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 料理長トムさんのつぶやきを スルッと 無視して 洗い場に行く。

 集めてきた野菜たちをキレイに洗う。

 どうもわたしの手際が悪いのか、回りの大人たちの表情が アワアワしていておもしろい。
 手をだしたくて たまらないみたいだ。

 全部見なかったことにして、くずぽい野菜たちをキレイに洗い、余分な水分を清潔な布巾で吸い取って、丁寧に取り除いていく。

 小鍋に お肉とスープを入れてもらい、その中に 集めてきた野菜のくずぽいモノ? を 全部入れる。

「おい、本当にそんなモノを入れるのか? 」

 たまらずっと いう感じで、トムさんが声をかけてきた。
 気持ちは わかる。

「そうだよ。たぶん本当は お肉と一緒に 水から入れると思うんだ、でも今回は 途中からになるけど しょうがないね。 これは、秘密のおいしさのもと なんだよ」

「秘密のおいしさ!? 」

 急に厨房の回りが ザワザワしだした。
 えっ どうしたの?  と キョロキョロすると……


「おまえら、わかってるな! 」


 トムさんが怒鳴って、厨房の人たちがうなずき、何がなんだかわからないわたしは……
 また、キョロキョロしていた。

 どこからか『秘密のレシピだ』と 聞こえてきたようだけど なんのことやら。


 トムさんに見守られながら頑張って スープをコトコト煮ていく。
 そして丁寧にアクを取り除いて 仕上げにはいる。
 これもわたしがすると あぶなっかしくて見ていられないようで、後ろのほうで大人たちが 手を ニギニギ動かしていた。

 ふー っ 、やっとお肉を取り出して 野菜をこす ところまで たどりついた……

 今までみていたトムさんが、やっと自分の出番だと 前にでてくる。

 スープをキレイに こし器を使って こしてくれた。
 そのあと、その茶色い液体を 睨みつけるように みている。
 あぶなっかしい わたしの代わりに、味見用の小さな椀に 小さいレードルで、器用にすくって入れてくれた。

「ありがとう」

 すごい視線をあっちこっちから感じながら スープを 一口 飲む。

「ん っ 、おいしい!  あとは ほんの少し塩が欲しいところだけど、これはスープストックだから これくらいで大丈夫だね」

 わたしの言葉を聞いて、すぐトムさんもスープをレードルですくい入れて 味見する。

「う っ !?  うまい!  これは、おもしろいな……  野菜のくずが こんなに おいしくなるのか……  」

 わかる、わかるとうなずいて ビシビシくる視線の先を見ると、トムさんのひと声が頭の上を飛んでいく。

「おい、おまえたちも飲んでみろ! 」

 待ってましたとばかりに 厨房の人たちが 味見用の小さな椀を片手に鍋の回りに集まって、味見しだした。

「「「うまい!!」」」

 トムさんはもう、肉だけのスープと 味比べしていた。

 厨房の人たちも同じように真似をして ザワザワ騒がしくなってきたところで、マークが迎えにやってくる。


「なんだ、騒がしいな? 」

「あっ、マークおかえり。 なんの話しだった? 」

「ルート様との手合わせの件でな、週に 一回 付き合うことに決まったよ。 すまん」

「やっぱり。しょうがないよ、アース様 あきらめてなさそうな感じだったしね」

マークとあの時のアース様について話していると、トムさんが 鍋を持って 押し気味に聞いてくる。

「パール、このスープは もらっていいんだな! 」

「うっ 、うん。 厨房の材料で試しに作ったんだから厨房のものだよ、好きにして」

「そうか! ありがとよ! 」

 笑って、うまくできてよかったと伝えておいた。

「聞きたいことはいろいろあるが、今はこの『秘密のスープ』を もう一度、みんなで作って研究するから またあとでな」

 鍋を抱えて、うれしそうに目をキラキラさせて みんなのもとへ戻っていった。

 なんだか……  すごい、な。


「秘密のスープ?  パールまた、なにしたんだ? 」

「別になにも……  さっき 記憶を少しだけ思い出して、ちょっと わかったことを……  ほんの少しだけ、話しただけだよ……  」

「 …… ほどほどにしておけよ」

 マークは苦笑いで、ため息を ふー っ と 吐く。

「おつかれさまだね。 お話し、たいへんだったんでしょう? 」

 わたしの言葉に、マークの眉毛が きゅっと動く。


「辺境伯様が……  おまえがここを出ていくのは、六歳のあいだなら いつでもいいとおっしゃってくれたぞ。 六歳になって すぐじゃないからな……  」

「そうなんだ、聞いてくれたんだ、ありがとう。 これで安心して 最後は図書室にこもれるよ」

 残念な子を見るような目でわたしをみてから。

 目を細めて、わたしの頭を……
 あらっ  めずらしい……

 
 …… やさしく撫でた。







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