24 / 221
24. 剣の手合わせ
しおりを挟む
四歳になってからだけど、夕食をマークと一緒に食べながら、シーナに食事のマナーの指導をしてもらっている。
はじめは軽い気持ちで教えてもらっていたのに、それを知ったまわりの人たちまで、指導という名の注意を 食事中にポンポン入れてくるようになった。
「パール、そんなに急いで食べてはいけない」
「パール、スープを飲むときの姿勢が悪いよ」
お屋敷の人たちは 自分はさておき、お貴族様を相手に仕事をしているから、へんに目が肥えている。
ちょっとだけ 鬱陶しい……
「おまえのためになるから ありがたく指導されておけ。 六歳で冒険者になったら 幼いおまえに、いろんな人から さまざまな指導が入るぞ。 その予行練習だと思え」
確かになっと 思って、指導されながらの夕食を ありがたく受け入れている。
「マーク、夕食後 ちょっと書斎まできてくれるかい」
セバスチャンさんがやってきて それだけ告げるとすぐに戻っていった。
わたしはそのあいだ 厨房で時間潰しをさせてもらえることになった。
わぁー っ 、 久しぶりの厨房だから ウキウキする。
♢
「お呼びでしょうか? 」
書斎のドアをセバスチャンさんがゆっくり開ける。
中に入ると すぐ目に飛び込むのは、重厚感のある美しい曲線のソファたち。
中でも、辺境伯様がお座りになっているソファは、当主様専用の椅子なのだろう。
高い背もたれの上部両面に 耳がついたような 見たことのないフォルムで、なにものからも守られているような、高貴で歴史ある辺境伯家そのもの。
威厳と存在感に圧倒される。
そんな高貴な椅子に辺境伯様は優雅に腰掛け、なにかの書類を見比べていた。
アース様は姿勢正しく足を揃え、長い数人掛けの重厚なソファの端に浅めに座り、なにか話しているようだ。
マークが視線に入ると サッと 席を立ち、辺境伯様の後ろに控える。
「まあ掛けたまえ、きみに確認したいことがあってね」
高貴なソファたちに圧倒されながらも アース様のいた場所に同じく浅めに座る。
「パールのことなんだが、アースがいうには 剣の手合わせを 身体強化を使ってきみとやっているとか? 本当かい」
「はい。 辺境伯様やお嬢様に支援してもらいましたので、あの子を冒険者にするために 二人で精進しております」
「ふむ、そうだったね。 あの子は侯爵家の方とのお約束があるから 必ず冒険者にさせないとね」
「はい、わかっております」
「アースがね あの子がルートの手合わせにちょうどよいと言うんだよ。 年齢的にも あと素性もね、パールは身内になるから 未熟なルートのいろいろが…… まあ、のちのち出てきては困るからね。 たまにあるんだよ、いつの話しだという噂が流れでることが」
「お言葉を返すようで申し訳ないのですが、アース様にも先日お伝えしましたが パール、あの子はまだ 人に手加減ができるほど うまくありません。 ルート様が強く打ってこられたら 同じように打ち返してしまいます。そのとき どんな打ち方をするか、下手をしたら両者とも怪我をしてしまうかもしれません。 辺境伯家跡取りのルート様に 冒険者にならないといけないパールです。 危険ではないでしょうか? 」
「それについては 木剣ですし、わたしとマーク君のふたりが付いているところで、手合わせをしてもらいます。そのほうが安全で、あなたも安心でしょう。あとポーションも用意していただけることになりました。それに 毎日ではなく、週に 一回でよいのです。 あの子も一緒に教えましょう」
「マークどうだろう? 今回は特別に 屋敷の手伝いとして あの子に小遣いを渡そう。 冒険者をするんだ、お金は必要だろう? その上、アースに剣の指導もしてもえるよ。 安全にね」
「はー っ 、わかりました。 ポーションまでご用意していただけるとは…… そういうことでしたら、どうかよろしくお願いいたします」
「ふむ、よろしい。あとはセバスチャンに任せるよ」
斜め後ろ アース様とは反対側に控えていたセバスチャンさんが スッと 出てきて会釈する。
立ち上がって帰ろうとしたマークは、ふっと 思い出した。
「辺境伯様、ひとつ お伺いしたいことがございます」
「なんだい? 」
「はい、パールのことですが あの子は六歳になったらすぐに冒険者にならないといけないのでしょうか、それとも 六歳のあいだであれば、いつでもよいのかをお聞きして、旅立つ用意をさせないといけません。 できれば 六歳のあいだでっと いうことにしていただくとありがたいのですが、いかがでしょうか? 」
「そうだね。 詳しいことは決めていなかったから…… 六歳のあいだなら いつでもいいんじゃないかい? 」
セバスチャンさんを横目で見て軽くうなずくと 何かの書類に目を向け出した。
話しは終わりだ。
「ありがとうございます。 助かります。 旅立ちの日にちが決まりましたら、お知らせさせていただきます」
頭をめーいっぱい下げ、マークは書斎をあとにする。
はじめは軽い気持ちで教えてもらっていたのに、それを知ったまわりの人たちまで、指導という名の注意を 食事中にポンポン入れてくるようになった。
「パール、そんなに急いで食べてはいけない」
「パール、スープを飲むときの姿勢が悪いよ」
お屋敷の人たちは 自分はさておき、お貴族様を相手に仕事をしているから、へんに目が肥えている。
ちょっとだけ 鬱陶しい……
「おまえのためになるから ありがたく指導されておけ。 六歳で冒険者になったら 幼いおまえに、いろんな人から さまざまな指導が入るぞ。 その予行練習だと思え」
確かになっと 思って、指導されながらの夕食を ありがたく受け入れている。
「マーク、夕食後 ちょっと書斎まできてくれるかい」
セバスチャンさんがやってきて それだけ告げるとすぐに戻っていった。
わたしはそのあいだ 厨房で時間潰しをさせてもらえることになった。
わぁー っ 、 久しぶりの厨房だから ウキウキする。
♢
「お呼びでしょうか? 」
書斎のドアをセバスチャンさんがゆっくり開ける。
中に入ると すぐ目に飛び込むのは、重厚感のある美しい曲線のソファたち。
中でも、辺境伯様がお座りになっているソファは、当主様専用の椅子なのだろう。
高い背もたれの上部両面に 耳がついたような 見たことのないフォルムで、なにものからも守られているような、高貴で歴史ある辺境伯家そのもの。
威厳と存在感に圧倒される。
そんな高貴な椅子に辺境伯様は優雅に腰掛け、なにかの書類を見比べていた。
アース様は姿勢正しく足を揃え、長い数人掛けの重厚なソファの端に浅めに座り、なにか話しているようだ。
マークが視線に入ると サッと 席を立ち、辺境伯様の後ろに控える。
「まあ掛けたまえ、きみに確認したいことがあってね」
高貴なソファたちに圧倒されながらも アース様のいた場所に同じく浅めに座る。
「パールのことなんだが、アースがいうには 剣の手合わせを 身体強化を使ってきみとやっているとか? 本当かい」
「はい。 辺境伯様やお嬢様に支援してもらいましたので、あの子を冒険者にするために 二人で精進しております」
「ふむ、そうだったね。 あの子は侯爵家の方とのお約束があるから 必ず冒険者にさせないとね」
「はい、わかっております」
「アースがね あの子がルートの手合わせにちょうどよいと言うんだよ。 年齢的にも あと素性もね、パールは身内になるから 未熟なルートのいろいろが…… まあ、のちのち出てきては困るからね。 たまにあるんだよ、いつの話しだという噂が流れでることが」
「お言葉を返すようで申し訳ないのですが、アース様にも先日お伝えしましたが パール、あの子はまだ 人に手加減ができるほど うまくありません。 ルート様が強く打ってこられたら 同じように打ち返してしまいます。そのとき どんな打ち方をするか、下手をしたら両者とも怪我をしてしまうかもしれません。 辺境伯家跡取りのルート様に 冒険者にならないといけないパールです。 危険ではないでしょうか? 」
「それについては 木剣ですし、わたしとマーク君のふたりが付いているところで、手合わせをしてもらいます。そのほうが安全で、あなたも安心でしょう。あとポーションも用意していただけることになりました。それに 毎日ではなく、週に 一回でよいのです。 あの子も一緒に教えましょう」
「マークどうだろう? 今回は特別に 屋敷の手伝いとして あの子に小遣いを渡そう。 冒険者をするんだ、お金は必要だろう? その上、アースに剣の指導もしてもえるよ。 安全にね」
「はー っ 、わかりました。 ポーションまでご用意していただけるとは…… そういうことでしたら、どうかよろしくお願いいたします」
「ふむ、よろしい。あとはセバスチャンに任せるよ」
斜め後ろ アース様とは反対側に控えていたセバスチャンさんが スッと 出てきて会釈する。
立ち上がって帰ろうとしたマークは、ふっと 思い出した。
「辺境伯様、ひとつ お伺いしたいことがございます」
「なんだい? 」
「はい、パールのことですが あの子は六歳になったらすぐに冒険者にならないといけないのでしょうか、それとも 六歳のあいだであれば、いつでもよいのかをお聞きして、旅立つ用意をさせないといけません。 できれば 六歳のあいだでっと いうことにしていただくとありがたいのですが、いかがでしょうか? 」
「そうだね。 詳しいことは決めていなかったから…… 六歳のあいだなら いつでもいいんじゃないかい? 」
セバスチャンさんを横目で見て軽くうなずくと 何かの書類に目を向け出した。
話しは終わりだ。
「ありがとうございます。 助かります。 旅立ちの日にちが決まりましたら、お知らせさせていただきます」
頭をめーいっぱい下げ、マークは書斎をあとにする。
47
お気に入りに追加
616
あなたにおすすめの小説
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
わたくし、お飾り聖女じゃありません!
友坂 悠
ファンタジー
「この私、レムレス・ド・アルメルセデスの名において、アナスターシア・スタンフォード侯爵令嬢との間に結ばれた婚約を破棄することをここに宣言する!」
その声は、よりにもよってこの年に一度の神事、国家の祭祀のうちでもこの国で最も重要とされる聖緑祭の会場で、諸外国からの特使、大勢の来賓客が見守る中、長官不在の聖女宮を預かるレムレス・ド・アルメルセデス王太子によって発せられた。
ここ、アルメルセデスは神に護られた剣と魔法の国。
その聖都アルメリアの中央に位置する聖女宮広場には、荘厳な祭壇と神楽舞台が設置され。
その祭壇の目の前に立つ王太子に向かって、わたくしは真意を正すように詰め寄った。
「理由を。せめて理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「君が下級貴族の令嬢に対していじめ、嫌がらせを行なっていたという悪行は、全て露見しているのだ!」
「何かのお間違いでは? わたくしには全く身に覚えがございませんが……」
いったい全体どういうことでしょう?
殿下の仰っていることが、わたくしにはまったく理解ができなくて。
♢♢♢
この世界を『剣と魔法のヴァルキュリア』のシナリオ通りに進行させようとしたカナリヤ。
そのせいで、わたくしが『悪役令嬢』として断罪されようとしていた、ですって?
それに、わたくしの事を『お飾り聖女』と呼んで蔑んだレムレス王太子。
いいです。百歩譲って婚約破棄されたことは許しましょう。
でもです。
お飾り聖女呼ばわりだけは、許せません!
絶対に許容できません!
聖女を解任されたわたくしは、殿下に一言文句を言って帰ろうと、幼馴染で初恋の人、第二王子のナリス様と共にレムレス様のお部屋に向かうのでした。
でも。
事態はもっと深刻で。
え? 禁忌の魔法陣?
世界を滅ぼすあの危険な魔法陣ですか!?
※アナスターシアはお飾り妻のシルフィーナの娘です。あちらで頂いた感想の中に、シルフィーナの秘密、魔法陣の話、そういたものを気にされていた方が居たのですが、あの話では書ききれなかった部分をこちらで書いたため、けっこうファンタジー寄りなお話になりました。
※楽しんでいただけると嬉しいです。
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
へぇ。美的感覚が違うんですか。なら私は結婚しなくてすみそうですね。え?求婚ですか?ご遠慮します
如月花恋
ファンタジー
この世界では女性はつり目などのキツい印象の方がいいらしい
全くもって分からない
転生した私にはその美的感覚が分からないよ
夫婦で異世界に召喚されました。夫とすぐに離婚して、私は人生をやり直します
もぐすけ
ファンタジー
私はサトウエリカ。中学生の息子を持つアラフォーママだ。
子育てがひと段落ついて、結婚生活に嫌気がさしていたところ、夫婦揃って異世界に召喚されてしまった。
私はすぐに夫と離婚し、異世界で第二の人生を楽しむことにした。
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる