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01. それは突然

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 ステキ! ステキ あー ステキっ!

 今日はわたしの三歳の誕生日。


 可愛がってもらっているメイドのシーナから誕生日プレゼントに古着を仕立て直してもらった。

 ちょっと裾が広がった、女の子らしい形の黄色味がかった生成りのワンピース。

 お屋敷の人達に、仕事の邪魔にならない程度でワンピース姿をお披露目して、ご機嫌で伯父さんと一緒に住んでいる馬小屋へ戻る最短コース。
 裏庭の小道に抜けるため、お屋敷の端にある厨房までやって来た。

 厨房にはシーナのお父さん、トム料理長がいる。
 厨房を通り抜ける事を大目に見てくれる優しいおじさんだ。
 いつもは邪魔をしないように気配を消して通っているけど、今日は特別わたしの誕生日。

 厨房のみんなにも『おめでとう!』を、いっぱい言ってもらう。

 シーナに作ってもらったワンピースをお披露目すると、何故かトム料理長も一緒になってシーナを含め、ちゃっかりいろいろ自慢しまくっていた。
 娘大好き、お父さんである。


 トム料理長からも誕生日のお祝いにたくさんの果物をもらい、厨房から裏庭の小道をカゴに入れてもらった果物を気にしながら軽くスキップをして帰っていると……



 カチッ


 変な音が頭から響いてきて、右目上の方に半透明の数学が出てきた。


 『100・99・98・97・96・95…………』


 規則正しく数字が減っていく。


 なになにーー?

 キョロキョロ辺りを見ても誰もいないし、右目上の数字は消えない。

 パニックになりかけた頃、数字が 0 になった。

 頭の中からちょっと変わったしゃべり方の女の人の声で。


 「ス・キ・ル・前・世・の・記憶・起動」


 声と同時に『yes』 の文字がまた右目上の方に出てきた。

 見たことの無い文字でなんて書いてあるのか分からないけど、驚いて瞬きを パチリ と 一度するとまた音がする。


 カチッ


 「前・世・の・記憶・起動・します」


 えーっと思う間に、頭の中からいろいろな映像と情報がぐるぐる凄い勢いで駆け巡る。

 耐えきれずその場で頭を両手で押さえてしゃがんだ所までは覚えているんだけど……


 目を覚ますとそこは、見慣れた天井のはずなんだけどまだ夢でも見ているような変な感じ。

 違和感があるけど、どうやら自分のベットの中で。


 あれから 丸一日……

  時が過ぎていた。
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