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08.ツッコミひとりにボケふたり
しおりを挟む「え、へ、陛下、よもやローゼマリーは以前から」
「そうじゃ!ロッテがうちの子にならんのなら、代わりにローゼちゃんをルーとくっつけるのはどうじゃろう?」
「まあ、とても良いお考えですわあなた。でもそのためには、ますますルーを呼んで話を聞かないとね」
「ヒェッ!?」
グントラムの言葉を遮る形で盛り上がる皇帝夫妻。
それが不意に揃ってこちらを見つめてきて、またもやグントラムが変な声を出す。
「なんじゃグントラム、さっきから変な声ばかり出してからに。まあいいけど。
で、そこんところどうなん?」
どうなん?と気さくに尋ねられて、もはやグントラムは青息吐息である。
「え、いや、どうなん?とか言われても………」
「じゃーから、ローゼちゃんルーのこと好いとったりせんのかのう?」
「いつもあんなに楽しそうなんですもの。きっとローゼちゃんもルーのことが好きなんだと思うのよ。ね、どうかしらグントラム?」
皇帝と皇后から気安い口調で話され続けて目を白黒させているグントラムだが、一周回ってだんだんイライラし始めてきた。
「いや、ていうかなあ、なんでお前ら学生時代みたいに喋ってんだよ!?」
「えっ?」
「えっ?」
「『えっ?』じゃねえ!」
「えっだって、俺ら幼馴染で学舎の同期じゃん?」
「そうよ、あの頃約束したじゃない。大人になってもズッ友だよ、って」
皇帝フリードリヒ4世ことカールグスタフ・フリードリヒ・フォン・フォーエンツェルン・ブロイス。
皇后ブリュンヒルト・フォン・フォーエンツェルン・ブロイス(旧姓ブラオンシュヴィク公爵ヴェルフェン家)。
アスカーニア公爵グントラム・フォン・アンハルト。
この3人、実は同い年の幼馴染でヴェリビリ帝国学舎の同期入学同期卒業の親友同士である。学生時代はお互い対等に呼び合うほど仲がよく、グントラムがアスカーニア公爵を継ぐまでは側近としても仕えていた仲だ。
フリードリヒ4世は威厳を増すために年寄り言葉を使ってはいるが、実はこれでまだ40代である。似合わないこと甚だしい。
だがそんな彼らも歳を重ねて重い地位と責任を背負うようになり、いつしか礼節を弁えたお堅い付き合いになっていたのだが。
「そもそも俺は臣下として正式な謁見を申し入れたはずだぞ!」
「だってこの場に俺らしか居ねえし。ほぼ私的な場じゃん?」
「そこに!侍従も護衛騎士もいるだろうが!」
「あらやだ、グンちゃんたらみんなのこと家族扱いしないつもりなの?」
「家族じゃねぇだろ!!」
脇に控えている侍従も護衛騎士も書記も、みんなうんうんと頷いている。
「皇帝夫妻がそんなんだから、選帝会議が紛糾してるんだろうが!」
皇帝一家の仲が良すぎて公私混同が甚だしいため、次期皇帝を選定する選帝会議はこのまま次代に彼らの皇子を選んでいいものやら、意見が割れてまとまらないままだったりする。
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「まあ、そうなったらそうなったで」
「わたくしたちは先代皇帝家として保護されますからねえ」
「クッソ!誰かこいつらにざまあしてくれねえかなあ!」
グントラムの悲痛な願いは聞き入れられることはない。少なくとも現行のブロイスの政治システム上では。
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