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第一章

実験室 002

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 この世界の食事ってのはとてもシンプルだ。
 よく言えばだが……
 飲み物といえば水とスポーツドリンク的なアミノ酸飲料。主食となっているのは、マッシュポテトの様なタンパク質が詰まった、炭水化物で出来た蒸したまんじゅうみたいな「ゴハン」と名のついたもの。おかずという概念はなく、労働指数や体調に合わせて与えられる、少し硬めのゼリー状の何かと一緒に食べる。味はそれなりに良く、栄養価という意味ではとても合理的。
 ただ……飽きる!
 与えられる食事が、毎日同じものばかりで、よく暴動が起きないなと思うが、それが当たり前となった世界なんだよな、ここ……
 時折無性に肉を喰らいたくなるのだが、すでに食用の肉は生産されておらず、栄養価を補うための素材としてのクローン肉が生産されているだけだ。
 それでいいから、塩コショウをぶっかけて鉄板で焼いてかぶり付きたいのだが、肉を直接食うことすら法に触れるのだ。
 この世界に来た直後は、この食事にまったく慣れず、気が狂いそうになった。
 今も慣れはしないのだが、もう文句も言う気も無くなってしまった。
 ただ今日は、リクファから定期的に届く、クローン牛肉のフィレステーキと、クローン豚のハムをテーブルに並べ、ワインを開けて、シキヤに振る舞っていた。

 本能が発現すると、食欲ももちろん芽生えてくる。ゆえに、この世界の食料では物足りなくなってくる。
 リクファも例にもれずで、発現してからというもの、自前で巨大な秘密工場を作り、さまざまな料理の素材を作り始め、今では自分専用のレストランまで作ってしまった。
 初めて食べる肉の料理に、シキヤは目の色を変えて口に放り込んでいた。

「おいしいかい?」

「ふごく!おいしいれす!」

 たった一日でここまで人に警戒心を解くかな……
 と、若干の戸惑いを隠せなかったが、シキヤという子は、それだけ純粋で素直な子だということだろう。
 この世界の人間は、感情が薄いだけに、目に生気のないタイプの人間が多い。ただただ生きる為に、ただただ生きている。わたしにはそんな風にも思える。だが、完全なる秩序が保たれた世界には不安というものがない。
 元の世界では、そういう世界を求める思想もあった。全てが平等で、全てが公平で、全てが平均的。争いも奪い合いもない平和な世界。なんだかいい感じで真ん中を取っている様に見えて、しかし本質は、実に極端であった。その先にあったのがこの世界だからだ。
 いまだこの世界に馴染めてはいないが、少なくとも今はこの仕事があるおかげで、それなりに自由で、それなりに刺激のある生活が出来ている。(大部分はあの女帝のおかげ……でもあるのだが……)

「シキヤ、この後どうするんだい? もう十分に今日は満足しただろ?」

「あい。まんろくしました」

「今後ここにくるのは自由にしてくれても構わないよ。でも別の患者さんがいるときは、あの扉は開かないようになってるからね。適当にくつろいだら、好きな時に帰宅してくれて構わないよ」

 ガツガツと肉にかぶり付いていたシキヤが、急にこっちに顔を向け、目を見開いて無理やり口いっぱいの肉を飲み込んだ。

「まだ帰りたくないです!」

 目をうるうるさせながら、ソースが付いた口をふるふるさせ、ナイフとフォークを持った手をぶるぶると震えさせていた。ちょっと怖い……

「そ、そうかい。でも快楽ってのは一気に高めていくのはオススメしないな。徐々に、一歩ずつ確実に自分のモノにした方がいいよ」

「でもこのまま家に帰っちゃったら、絶対にすぐ我慢できなくなって、どうしていいかわからなくなってしまう気がするんです!」

 なんだか肉を食べたことで精がついたのか、やたら攻撃的になっていた。
 でもまぁ……言ってることもわからないことはない。
 わたしも別にこの後することもないし、せいぜい、シキヤで取ったのデータを整理することくらいだし、まだ付き合ってあげるのもやぶさかではない。
 とはいえ、まだ快楽指数100程度の子に、これ以上のものはまだ見せたくない。
 どうしたものか……
 と、なにげに周りを見渡していた時に、ふと目に入るものがあった。
 なるほど、それはありだな。

「シキヤ。そしたら、君に自慰行為というのを教えてあげるよ」

「ジイコーイですか?」

「自分で慰めるっていう意味だよ」

「さっきお風呂で自分で触ってイッたアレですか?」

「まぁそうだね。でもきっと君は、もうそれじゃ満足できない身体になってるんじゃないかな?」

「そうなんです。自宅ではあんな声を上げることは出来ませんし、それを我慢するのは無理だと思います」

「この世界はホント無茶苦茶だよね。自宅に監視カメラが付いてるのが当たり前なんだからね……そんなのじゃ自慰行為も出来やしない。でもね、自宅でも出来る方法を教えてあげるよ」

「そんなことが出来るんですか?」

「まぁそれなりに面倒だけどね」

「ぜひ教えて下さい!」

「実際にそれをやるかやらないかは君に任せるよ。ここに来るまでガマンするってのも、それはそれで快楽の質を高める要素だからね。ただ、身体がうずいてどうしようもないって時が続けば、やっぱりストレスになるからね。知っておいても損は無いよ」

「ありがとうございます!」

「じゃ、準備するからさ、残った肉全部食べちゃって。あとそのワインも飲んで、すこし酔っておくといいよ」

「わかりまひは」

 この前届いたいくつかのアイテムと、一般用のモニタグラスを改造したものを用意してベッドに並べた。
 ペロッと肉を平らげたシキヤが、小走りでわたしの隣に並んで、軽くこっちを見たあと、何も言わずにベッドに横になった。
 この子こころでも読めるのか?
 布一枚の彼女は、指を胸の前で組み、天井を見つめ、口元をにやにやとさせていた。
 頭のところに「わくわく」というオノマトペが見えるようだ。

「やることは簡単なんだけどね、ちょっとむずかしいのは、やっぱり喘ぎ声をどうやって抑えるかなんだ。」

「今のところこれをやっている患者さんは失敗したりしてないんだけどね、ちゃんと準備しなきゃ、監視員にバレちゃうかもしれない。そうならないように、しっかり準備と練習をしておけば大丈夫だけどね」

「わかりました」

「じゃ、身体をさわるからね」

 診察衣をまくって、腰のあたりにバンドを巻いた。一見普通のガーターベルトのようなものだ。そして、使い古しで悪いのだが、リクファサイズで、すこしシキヤには小さいかもだけれども、ニンバスボムの旧型にローションをたっぷりつけ、膣に差し込んで、ラバー製のショーツを履かせた。足にはストッキングのようなモノを履かせて、太ももの当たりでガーターベルトで固定する。胸にもストラップレスブラを付けようと思ったが、リクファ用のもので、ちょっと小さすぎた。仕方がないので、胸の上に乗せただけにして、首元に少し太めのチョーカーを付ける。

「さて、だいたい準備は整ったんだけど、付けた感想はどう?」

「特に何かというのはないのですが、なんだかうっすらくすぐったい感じはします」

「始めはそうかもね。まぁじきに慣れるよ。最後に、これを付けてくれるかな」

「モニタグラス?ですか」

 この世界ではすべてが管理されている。もちろん普段どんなものを見ているのかも監視対象だ。
 モニタグラスは、かなりコンパクト化されたVRゴーグルの様なもので、メディア視聴の際に、一般家庭でよく使われているものだ。
 娯楽の少ないこの世界では、娯楽といえばこれなのだ。ちなみに最近は歴史モノのドラマが人気らしい。

「このモニタグラスはね、少し改造がされててね、君が見ているものは、ネットに送られないようになってるのさ。それに視聴の履歴も残らないようになっているよ。つまり、ここで見た映像は、監視者にばれないってことだね。ダミーとして偽装した情報を送ってるから、これが改造してるってのわからないのさ」

「そんなことが出来るんですか?」

「安心して。安全は保証するよ。そしたら耳にも音声デバイスを取り付けて」

 準備は整った。

「それじゃ、モニタグラスを起動するよ」

「ぼくがみえる?」

「みえます。音もちゃんと聞こえてます」

「そしたら、いつもやってるみたいに、出てきたUIを目で操作できるかな?」

 モニタグラスは、操作するのに手を使わない。
 視線の動きと瞬きだけで操作できる。
 複雑なことをしたければ外部デバイスが必要になるが、簡単な操作はすべて目だけで行える。

「いつものUIと同じですね」

「そしたら、まばたきを3回連続でしたあと、目線を上からゆっくり下に下ろして、そこでまたまばたきを3回やってみて」

「はい……」

「間違っても、はじめからまた同じことをやれば出来るから」

「これって……」

「まぁ特別なUIってやつだね」

「お好みなのを選んでやってみて」

「はい――――あっ!えっ……はぁん……」

「どう?なんとなくわかってきた?」

「は……はいぃ……何も動いてないのに……すごく感じますぅ……」

「実際にはうごいているんだけどね、振動を研究していったらさ、動いていないように見えるけど、振動だけを与えるってことが出来るってのが発見されてね、これはそれの試作機なんだ。試して感想を伝えなきゃなんだけど……どう?」

「足が……足指が……ぁ……足指だけで……イキ……はぁぁぁぁぁぁ」

 絶頂延長ソックス(仮)と同時開発していた、振動を皮膚、そして神経に直接伝える極微細の繊維。
 それを編み合わせ、ストッキング程の薄さに仕立てたのが、このオルガクロス。
 どこか一部分でも振動源があれば、繋がっている限り振動が伝わり続ける。
 ガーターベルトに振動源を取り付けており、ストッキングとショーツにも振動が伝わるようになっている。
 もちろん、その振動をどこに伝えるかというのも調整できる。足先だけだったり、陰核だけだったり。
 モニタに映る身体のUIを目で追えば、振動がなぞるように伝わったりする。
 ブラはワイヤー部分が振動源になっていて、乳首を包むようにくぼみがあり、全体に刺激が与えられるようになっている。
 今回はサイズが合っていないので、イマイチ効果は薄いだろうけども。
 それぞれの振動源は、モニタグラスと通信でつながっており、この通信は軍用の機密回線が使われている。
 そこまでやれるのも、リクファの頭のおかしさのおかげだ。感謝せねば……
 絶頂延長ソックス(仮)ほどの超絶快楽を味わえるわけではないが、シキヤの快楽度数を考えたらこれくらいが丁度いいはずだ。
 その証拠に、シキヤはさっきからイキっぱなしだ。
 まだ足だけしか作動させてないのに、アナルの余韻もあってか、かなりのペースでたのしんでいた。

「なんとなく使い方わかってきたかい?」

「は……はい……すごいです…………でも、やっぱり声が……出ちゃいます…………」

「画面の上にアイコンがならんでるでしょ?そこのくちびるみたいなマークを触ってみて。」

「こうで……………………」

 口をパクパクさせながら、なにか喋ろうとしているが、声は出ていなかった。

「もう一度触ってみたら解除されるよ」

「これ……そういう……首のチョーカーですか?」

「そうだね。便利だよね」

 これもさっきの振動技術で生まれたものだ。
 ノイズキャンセラーと原理は同じで、喉の振動に逆の振動を与えることで、物理的に声を出せなくさせている。

「慣れるまで大きな声の時はくすぐったく感じるかもだけど、それが逆に気持ちが良くなるって人もいるからさ。徐々に慣れていけばいいよ。初めのうちはなるべく我慢しながらだけどね」

「ありがとうございます! これなら家でも自慰行為に励むことができそうです!」

「よかった。じゃ、お土産も用意してるから、上のアイコンのムービーを触ってみて。」

「はい……あっ!これ!」

「そうだね。さっきのオーラルとアナルの時の映像だよ。復習も兼ねて入れておいた。思い出して自慰行為するのにも使えるでしょ?」

「ありがとうございます! これであの時の快楽を思い出しながら自慰行為出来ます! ありがとうございます!」

「よかった。まぁまだ夜は長いからさ、ここですこし練習してみればいいよ。わからないことがあったらいつでも聞いて。ぼくはきみで取ったデータを整理したりしておくからさ。あ、あと、ここでは、いくらでも声を出していいからね。ゆっくりたのしんで」

「はいっ!ありがとうございます!」

「あの……えっと……あのですね……」

「どうした?」

「えっと……あの……アナルにはなにか……」

「え?あ、ああ。ほしい?」

「はい!アナルにもほしいです!」

「そうかぁ……なにかあったかなぁ……」

「探しておくから、そのまま楽しんでて」

 そういえば、前にリクファに使って駄目だったアレがあったような…… まだ残ってたかな……
 お蔵入りになったアイテムが雑多に並べられているところをかき分けた。あったあった。
 そろそろ洗浄液も補充しないと足りなくなってきたな…… どんだけ使ってるんだって話だけども。

「シキヤ、声も全然出なくなってきたね。慣れるの早いね」

「膣の中のもすごいですぅ……ポルチオがしびれて……脳が一緒に……」

「ちょっとシキヤには小さかったかもだけどね。今はそれで我慢してね。じゃ、ちょっとこれ取り付けるから、そのまま力を抜いて楽しんでて」

 シキヤの両足を正常位の時の様に持ち上げ、おしりの方からショーツをまくり上げる。
 ヒクヒクと開閉するアナルに、アイテムをそっと滑り込ませた。
 いわゆるアナル拡張用のアイテムで、特に振動させたりするような機能はなく、少し硬めのシリコン製のものだ。
 中央に穴が空いており、付けたままでもトイレ管で排泄が可能になる。
 赤ちゃんのおしゃぶりのような形をしていて、入れる部分の長さは8センチほどで、一番幅のあるところで直径5センチほど。シキアの力の抜けたアナルには抵抗なく入っていった。
 これでも十分効果はあると思うのだが、これにはもうひとつ機能がある。

「シキア、アナルどう?」

「!!!!!!!!!!!」

 大きな口を開けて何やら叫んでいるが、たぶんミュートにしてるなこれ。
 快楽度数を見てみると、80あたりまで上がっている。自慰行為でここまで上がってたら上々だ。オルガメーターも99と100を連続で行き来している。

「シキヤ、もうすこし刺激がほしいんじゃないかな?もし痛かったらいってね。あと、声がミュートになってるよ」

「あなるぅぅぅぅうぅ!!!!すきぃいいいいいいいいいい!もっと刺激!ください!刺激ぃいぃいいいいいくうううううう」

「それじゃ、いくよ」

 おしゃぶりの取っ手の部分が柔らかくなっており、親指でぐっと押し込める様になっている。
 その部分を押し込むと……カチッ……

「ひぃいい!アナルに!とげが!!!しげきいいいいいいいいくううううう」

 差し込んだ部分のところどころから、ハリセンボンの様に1センチ程の突起が飛び出すようになっている。これをデバイスとつないで、自由に操作したかったのだが、リクファはアナルにまだ興味がないため、そのままお蔵入りになっていた。
 とはいえ、シキヤならこれでも十分アナルの刺激は得られるだろう。

「気に入ったかな?」

「いくぅ……いくぅ!アナルでイキますうううううううう!あしゆびがああああああああ!!!」

 ちょっとやりすぎたかな……
 まぁでもすぐに慣れるだろう。

「足指が続いてぇ……乳首の先が連続のイキをアナルのトゲのいっこいっこが!ぜんぶいくのおおぉぉんんぐぅあ!」

「シキヤ、そんなに腰を上げて喘いでたら、さすがにバレちゃうよ。家でやる時は、弛緩の練習と思って、そよ風なオーラルをいつでも出来るようにしたらどうだい」

「はぁぁぁぁぁぁ…………そよ風…………はぁぁぁぁぁん…………きもじぃぃぃはぁぁぁぁぁ」

「さすがだね、シキヤ。もう対応できたんだ。練習がんばれるかい?」

「練習します…………練習でガマンして……ガマン……ガマン……んんん……ぐぅ……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁいぐぅぅぅぅ…………」


 大丈夫そうだ。これならなんとかひとりでも性欲を開放出来るだろう。
 室温と湿度を少しあげて、奥にある研究室に向かった。
 ひときわ厳重にロックされているドアを開け、唯一わたしがくつろげる場所についた。

「おつかれさまでした、ハイド様」

「まぁ、まだおわってないけどね。データは取れてるかい?」

「はい、しっかりと取れております。それと……とても勉強になりました……」

「それはよかった。想像でイクというのは興味深いだろ?リクファも随分慣れてきているけどね、シキヤほどの才能は持ち合わせてないからね。データ解析して、リクファのためにがんばってくれ」

「かしこまりました。それで……ハイド様……」

「もう欲しくなったのかい? といっても、ぼくもシキアの天性に興奮していたところなんだ。よろしく頼むよ。ぼくを幸せな気持ちにさせてくれるかい?」

「はい!ありがとうございます!」

 そして、いつものソファに身体をうずめ、一番大きなのモニタに映るシキヤを眺めながら、エイサーに、疲れを抜いてもらうことにした……
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