らぶさばいばー

たみえ

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謎の美形、現る。

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「――オイ。いい加減にしろ……」

 私が変態と一進一退の攻防を神とともに繰り広げていた最中、横の木陰からひょっこりととんでもない美形が顔を出し、私たちを睨んだ。

「俺は今、貴重なサボり寝の最中なんだよ」

 呆気にとられたのは私だけではなく、ジギタリスは勿論、先程までゴロゴロ唸っていたお空も呆気にとられたように静まり返った。
 実際の時間にしては数秒だったのだろうけど、いやに長い沈黙が三者、いや四者の間に落ちる。
 暫しの後、一番最初に正気へ戻ったのは最悪なことにジギタリスであった。

「――それはそれは失礼しました! 私たちが場所を変えますので、お気になさらずお過ごし下さい」
「――ッ!?」

 ――はあああああああっっ……?!

 と、声に出さなかった私を褒めてもらいたい。何が場所を変えるだ、私はさっきから帰りたい言うてるやん。かえる違いだよ!

「そうか」

 ジギタリスの明らかに適当な言葉に、とんでもない美形が視線でとっとと早く退散しろとでも言いたそうに目を細めた。興味がないのか、それとも余程サボり寝とやらを邪魔されたのが癪だったのか、深く関わる気は無いようだった。

「――さあ、行こうか」

 満面の笑みで堂々と誘拐宣言した変態が手を差し伸べてくる。身分の関係上、第三者もいるのにこれは拒否しづらい。だが、この手を取ってはいけないと本能が警鐘を鳴らしているのも事実。

 ――そうだ。神様に任せよう。

 私の考えを読み取ったのか、ピタリと止んでいたゴロゴロ音が再開した。しかし距離の問題なのか、先程のように雷は落ちないらしい。困った。手を差し伸べる際に距離を詰められていたのか……。
 逃げようにも、第三者もいるこの場面では急に距離を取るのは失礼にあたるため、動きようがなかった。八方塞がりである。
 そうこうして自然と打開策を求めて彷徨い始めた目線は、視界の端で目立っていたとんでもない美形に向かった。 

 私の視線に怪訝そうに眉を顰めたとんでもない美形は、つやつやした黒髪に細い眼鏡の奥にゆらゆら揺れる不思議な色合いをもつ緑瞳であった。
 どちらかといえば中性的と言われるような容貌なのに、体格のせいかとても男らしかった。一瞬、自分の状況も忘れて割とタイプだなと明後日な方向に思考を飛ばした。

「……おい」

 そうして暫し見つめて――ほぼガン見だったかもしれない――、状況も忘れて呆けていたら、とんでもない美形の形の良い薄い唇が動いた。
 どこか上の空で人形のように美しい造り物のような顔をぼけっと見ていたので、その声がかけられたのが私だと気付くのに遅れた。ハッ!

 ――しまった! 淑女にあるまじきガン見をしてしまった!

 相手の身分にかかわらずこの世界では、とてもはしたない行為である。完全にやってしまった。不快に思ったのか、いつの間にかせっかくの美形に眉間の皺が刻まれていた。
 ……これは。マズイ。まだ名前を知らないので身分にもよるが、万が一私よりも高位貴族だった場合、今後の付き合いが難しくなってしまう可能性もある。貴族社会では貞淑が最も尊ばれるのだ。特に高位の淑女ほどに。

 それが初対面で不躾にガン見するような、はしたなく教養の無い女性だと男性貴族の間で噂が広まれば、火遊びや財産目的で騙そうと近づく輩が増えるのだ。
 淑女の噂も広まるのが早いが、紳士間の噂も恐ろしいほどに早く広がる。異性間はともかく、同性間での伝達は一瞬なのが世の常である。

 ――どうにか穏便にこの場を去らなければ。

 幸い、まだ双方自己紹介も行っていない。同じ学年にこんな美形が居ればすぐに分かるが、そんな話は同学年の噂では聞かない。つまり年上。ならばお互いの立場などを知る前に居なくなるのが吉。
 無礼なやつだと覚えられるリスクは高いが、ここで去れば深く詮索されることも無く、失礼な女だったと穏便に忘れ去って記憶が風化してくれることにかけたほうが何倍も建設的である。
 瞬時に頭の中で結論を出した私は、すぐに行動に移した。

「――失礼いたしましたわ。まさかそのような場所に人がおられるとはつゆ知らず、とんだご無礼を」

 まずは謝罪を。特に非が無いのに謝罪されると人は言葉に詰まる。案の定、何かを言いかけていたとんでもない美形がキュッと唇を引き結んだ。

「では、私は先生に呼ばれておりましたのでお先に御前を失礼させていただきます」

 次に、話に華を咲かせたいといった邪な気持ちはないと示すために丁寧に去るための文言を告げる。これは私がガン見のせいで痴女とか尻軽女とか思われないための苦肉の策である。
 若干言い訳がましく聞き苦しいが、ついでに手を差し伸べたまま固まっていたジギタリスも排除できる一石二鳥な文言である。

 そうして二人に何かを喋らせることもなくその場で軽く会釈してさっさと踵を返した。さすがのジギタリスも先生に用があると言った私を追いかけるほどの無礼は出来なかったのか、それとも別の理由か、後はつけられなかった。
 ……追いかけてきたら遠慮なく衛兵に突き出してやったものを。

「ハァァァァァ……」

 帰路につく馬車の中で深いため息が漏れた。初日から散々である。半信半疑だった乙女ゲームの世界が攻略対象や主人公、周囲の環境によって現実味を帯びてしまった。しかも想定外のことばかりが起きて。
 授業は明日からだというのに、初日から既にくたびれたブラック企業のリーマンのように精神的に気疲れした。唯一の癒しはサクラちゃんくらいのものだ。

「サクラちゃん、か……」

 想像していたよりも良い娘だったなぁ。勉強熱心で健気な上、天然でおっちょこちょい。なにより素直! 可憐! 鈍感! とはさすがは腐っても乙女ゲームの主人公である。
 ちなみに腐ってもと注釈が着くのは、『らぶさばいばー』をはたして乙女ゲームジャンルとして分類して良いのかどうかとされていた議論のせいだ。もはや新手の死にゲーである。

 ……まあ、死にゲー要素のほとんどはプレイヤーのエゴの結果であったが。

 実際のサクラちゃんを知って、特にそう感じた。あんな真面目で良い娘が何故あんな目に遭わなければいけないのか。今更ながらもう意見が届かないシナリオライターに文句をつけてやりたかった。
 こんなことなら続編で展開される予定だったサクラちゃんの恋愛とやらも一癖や二癖はあったに違いない。ただのドSか破滅願望なのか。……闇深い。



「――おかえりなさい」
「ただいま戻りましたわ」

 もはや小さな宮殿か神殿のような我が家に帰ると、いの一番に母が出迎えてくれた。使用人に全てを任せる貴族では普通有り得ない光景だが、我が家ではもはや見慣れた光景である。

「どう? 楽しいことでもあったかしら」
「……ないわ」
「あら残念」

 にこにこと面白そうな顔で質問した母が、少しギクッとしたものの、平静を装った私の素っ気ない返答に特に残念そうなそぶりもなく、口だけ残念そうな振りをした。
 ……どこの世界に、登校初日で色々と緊張しているだろう娘に対して何かしらのハプニングを求める母親がいるのだろうか。世界広しと言えど、我が母しかおるまい。

「きっとシィならひとりやふたり、誑かしてくれると思っていたのだけれど……」
「冗談でもやめて下さいませ、お母様」

 本当に冗談ではない。どの言動が神の曖昧な判断に引っかかるか分かったものではないのに。本当にシャレにならないからやめてほしいと、切実な想いを込めてどこかほわほわしてる母に釘をさす。
 まあ、残念ながら初日にも関わらず早速と神の逆鱗に触れそうな出来事はちょこちょこ起こってしまったのが非常に遺憾であるが。勿論母には告げない。絶対面白がって結果悪化する未来しかみえないからだ。

「そうねぇ、昔はそれで大変だったものね。でも心配しなくとも大丈夫よ。これでも大体の許容範囲は理解しているのよ?」
「――それでも、心臓に悪いのでやめて下さいませ、お母様!」
「あらそう? 残念ね」

 若干据わった目で母を睨み再度釘をさすと、今度は心底残念そうに母が肩を落とした。儚い見た目に騙されがちだが、なんだかんだ母は面白い話や事件が好きなのだ。
 血を分けた娘が神に呪われたようなものでも動じず、むしろ面白がって色々とやらかし済みである。娘ながら嘆かわしい。それさえなければ非常に尊敬できるバリバリのキャリアウーマンなのだが……。

 過去の悲惨なアレコレが思い出されて虚しい気持ちになる。人間、黒歴史はあるものである。特にこの背中の消えない入れ墨なんてその筆頭だろう。現在は慣れもあって達観しているが、これには本当に苦労させられた。
 特に、貴族としての生活がままならない時期もあり、もし前世の記憶が無ければ早々に癇癪が起きて更に惨いことになっていたに違いないと思うほどには。

 そうして色々と事件があった結果、我が家にはいま、年老いたり既婚か初期段階の妊婦などのメイドと侍女しかおらず、男性の使用人や執事は一切居ない。
 ――全ては神の呪いのせいである。

 十年前、神に呪われて何が一番大変だったかというと、親しかった男性の使用人や執事などから順に次々と謎の病に侵されたり、事故に遭ったり、とにかく不幸な目にあったりともはや怪奇現象さながらに色々起こったのである。

 そうなると時期的にも原因は分かろうというもので、しかし対抗策も無いまま放置しているとまず、第一に重要な力仕事などがままならなくなってしまったのである。なにせ、男盛りの若い男が中心に行う雑用である。一番に神のアウト範囲に引っ掛かってしまった。
 次に、年齢の近い見習いたちもどんどんアウトになっていった。いまだに基準や理由は不明だが、一定の年齢に達すると図ったようにタイミングよく皆に不幸が訪れた。

 そして唯一対象外と判断されたのは、明日にでも天への階段を駆け上がりそうな老人であった。少なくとも曾孫ぐらいの年齢差である。
 そうして多くの犠牲を伴いながらも大体の範囲を見極めたころ、今度は若い女性の使用人たちが男性陣よりは軽いものの、不幸に見舞われることが多くなった。この頃私が思ったことはひとつ。

 ――神様の守備範囲広っ!

 である。能天気にもほどがある感想だが、これでも幼心にも精神的に参っていたのだ。――いや、むしろ前世の記憶のせいで無駄に高い精神力と理解力で色々と察してしまったのが良くなかった。
 無垢で無知な幼女だったら知らないだろう知識を持ち合わせているせいで、色々なショックで無駄に心が疲弊してしまったのだ。少しくらい空元気でも仕方あるまい。

 そんな私の心中を慮ることもなく、もはや禁忌とかなさそうな勢いで同性間のアレコレも想定されている呪いの掛かり方には特に戦慄した。
 その中でも一番ショックだったのは、足を踏み外して全身複雑骨折という重い不幸に見舞われた私専属の、仲が良かったメイドが実は同性愛者で、しかもSM系の幼児性愛者の誘拐犯であったことが後に判明したことだった。

 正直、吐いてしまった。前世の平和な日本では本当に滅多なことでは怒らない胸糞悪い事件であったから。
 ――この時から私は神に感謝するようになったっけ。

 もし、動けない彼女の代わりに着替えなどを取りに行った同僚が、家の中に漂う異臭を不信に思ったのがきっかけで通報しなければ。調べられた彼女の自宅の地下から見つかった幼女たちはボロボロのまま。
 ……生きているかも不確かな状態であったのだ、先は無かっただろう。

 しかもほんの幼少期に攫われたせいなのか、帰る家も親も分からない孤児同然の彼女らはその後孤児院に預けられたが、心の傷はいまだ深い。
 その後、事件の後処理や、私にもその毒牙を伸ばそうとしていた証拠が次々と出てしまったのが余計に疲弊した一因になったことは言うまでもない。

 そうして数々の犠牲を伴って、その色々な呪いの降りかかり方から導き出される答えというのが私に対して少しでも性的に興奮したり、何かしら邪な気持ちが少しでも芽生えれば呪いの対象になる、ということである。

 つまり、少なくとも揃いも揃って重い不幸に見舞われている奴らは、そういうことであった。まあ、私は母に容姿が似ているし、母に憧れている者が私を通して邪な気持ちを抱いたのでは、というのが私の見解である。
 というより、そうでなければやってられない。我が家の使用人だけなのか、それとも世界特有で一般的なのか、異常性愛者ばかりということになってしまう。そんなのは怖すぎる。断固拒否したい。

 そうしてビクビクと過ごした幼少期はともかく、私もいまや身体も成長した立派な淑女である。今度は違う意味でビクビク過ごすことになる。幼少期は田舎であったため、離れに通ってもらう形で隔離状態で済んだ。
 だがしかし、ここは国の中枢である。人口密度からして数十倍の中でちょっとでも色気づいただけの人と接触するだけで神の逆鱗に触れるなど大惨事まっしぐらだ。相手が。

 本来なら学園に通うなんてとんでもないが、ほぼ跡取りな私がそうは言ってられず、まあ貞淑あれと厳しい貴族の学校なら問題ないだろうと高をくくった結果が今日のアレである。想定外すぎる。
 深いため息を吐きたいが、耳敏い母に聞かれてはせっかく躱した母の好奇心がまた顔を出してしまう。それは不本意だ。

「――そうそう、こんなものが届いていたのだけど……」

 顔に出さず、内心鬱々としながらも使用人と顔を合わせないように、と事前に用意されていた晩餐の席、母が軽い調子で質の高そうな封蝋された手紙をひょいっと寄越した。
 食事前に渡すということはそれほど急ぎでない証だ。後で確認しても問題無い。――はずなのだが。

「うふふ」

 何故かにこにここちらを見ている母に嫌な予感がして、封蝋されている紋章を確かめた。これは――!

「――もうお友達になったのかしら」

 青褪める私の反応を面白可笑しそうに眺める母に、視線を寄越す余裕もなく唖然と封蝋の紋章を見て放心してしまった。なぜ――

「――なぜ、エーデルワイス家の茶会への招待が……」
「……あら? まだお友達ではないの? お昼過ぎに是非にと念押しされて渡されたから、てっきり早々に仲良くなったのかと思っていたわ」
「そんな……まだご挨拶もまだですのに……」

 と。そこまで言って唐突に理解した。

 ――これは、呼び出しである。
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