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ネロのはなし

女神との姦淫29

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「うぅ……うぅんん……」

 ネロが女王の部屋に侵入すると、女王は息苦しそうに魘されていた。
 原因は明白だった。女王を取り巻く暗闇だ。やはり取り憑かれていた。

 ネロは近づく前に暫く様子見を行った。
 ……どうやら、女王の身体に侵入出来ずに纏わりつくだけで精一杯のようである。

 寝苦しそうなのは、纏わりつかれているからなのだろう。
 本来なら触れただけで死を覚悟する術も、女王にかかれば寝苦しいだけで済むらしい。自分の目で確かめなければ信じられない光景であった。

 ネロが暫く観察を続けていると、女王に侵入出来ない暗闇は少しづつ小さくなっていっているようであった。おそらく、現象をこの世に固定して安定出来ず、維持がままならなくなっているのだろう。術の発動からここまでの経過時間と、まだ人一人分の大きさがあることを考えれば、最初はもっと巨大であったはずだ。
 魔法による現象は、この世に留まるためには必ず固定する場所が必要である。器と言い換えてもいい。今回で言えば、前公爵と女王とで分かれるはずのモノが前公爵の死によって余計に大きさを増して女王へと圧し掛かったはずである。

 前公爵を処刑すれば女王に術が集中することは予測出来た事ではあるが、処刑を実行したのは女王相手にどんな術も意味はないだろうということと、前公爵を生かして余計な術を行使されることで無関係の多数を巻き込んでの大惨事になるよりはマシであったから。寝苦しいだけで済んでいる女王は異常なのだ。
 ネロが依頼されたのは女王の快眠を促すこと。アンドレの言う通り、ネロの一族には睡眠に関しての特殊能力が備わっていた。ネロは普段、寝る時間の短縮に利用しているだけであるが、使おうと思えば他の使い方も可能であった。
 例えば――

『ヒィ……フヒィィィィィッッ!』

 ――睡眠中の相手の夢に潜り込んだり、

『いひぃ、ぅひぃィィぃ……ッッ!?』

 夢の内容に影響を与えたり、など。

『……ぅ?』
「ッ――!?」

 ネロは、女王に気付かれる前に即座に繋げていた感覚を閉じて現実の部屋からも逃亡した。条件反射であった。

「ぐ……」

 ネロの能力は、自身に使うには制約は無いが、他人に使う場合にはいくつかのリスクが伴う。気付かれるというのもその一つである。あと少し能力の解除が遅れていれば、女王の夢に囚われるところであった。
 そして、強制的に女王の、正確には呪い術の影響による夢に介入したことで、多少呪い術の影響を受けてしまっていた。
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