【R18】女帝様のお気に召すまま

13歳と白百合の…

釈放？

「――というわけで、出ていいわよ」
「――――」

　動揺しているのか、無表情ながら目を見開き瞳を揺らすルネを真っ直ぐに見据えながらも、マリアンヌはなんてことの無いように告げた。何かを言おうとしてすぐに口を閉ざしてしまうルネは、相当動揺しているに違いない。だてに一か月ほど一方的に貪られたマリアンヌではない。
　ちゃっかりと細かな感情の機微が分かる位にはルネを観察出来ていた。……多少、心や精神的な何かが擦り減ったような気がしないでもないが。それは可愛い天使が癒してくれたので結果オーライであった。

「戻るかどうかは好きになさい」
「――――」

　それだけを言うと、カチャ、とマリアンヌはあっさりと軽い音を立てた扉を指で示した。城から直接外へとつながっている扉は、いうなればどこでも行けちゃう魔法の扉てきなアレである。マリアンヌの寝室から直接魔法でつながっており、許可なきもの以外はそこから出入り出来ない便利な仕様である。
　女王になった時に使えるようになった、いわゆる近道みたいなものだった。……城は移動するだけでもとてつもなく広いので、切実に必要不可欠なのは間違いないが。神出鬼没の女王、という七不思議の出所はこれであった。本当、このファンタジーな世界、いや、この城にはありとあらゆるロマンが詰まっているなと感心するばかりであった。

「――行ったわね」

　だいぶ戸惑ったような様子だったが、ルネは何度か振り返りマリアンヌの様子を伺いつつ、マリアンヌが用意した扉から着の身着のまま出て行ってしまった。何度もこちらを伺いつつだったのは、何かの罠でも警戒したせいなのだろうか？　――いやさすがは凄腕の暗殺者。正解である。
　実は、マリアンヌが用意した扉にはくぐったものに常人では気付けない、女王のみ使える追跡の魔法が掛けられる仕様になっていた。故に、おそらく城から出られたら一番最初に行う、仕事の報告のために依頼人の元へと向かうだろうルネは立派なエサであった。特に追手が見当たらなければなおさら真っ直ぐ向かうだろうことは想像に易い。

　……様子が変わったルネが気になるのもあるが、依頼人が判明しないことには周囲にルネが夫として認められないのもあり、さらにルネが自分の意思でマリアンヌの元へ戻ってこれば夫となる承諾を得たも同然になるため、今回は一挙両得でいい機会であった。