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ノエルのはなし
女神との邂逅21
しおりを挟む「――して、そちらの希少種がそなたの初めてを奪った夫か、マリアンヌよ」
「はい、お母様」
「ほう……」
――に、逃げたい。この場から遠く、世界の果てに……今すぐにでもッ!
豪奢な玉座の間に堂々とした貫禄の女王と、その後方には夫たちがズラリと品定めするようにこちらを睨んでいた。今は人化しているため、不鮮明な部分は多いものの見目を蔑み、出自を卑しむ囁き声が多くはっきりと聞き取れた。
――こちらが当たり前の反応だ。女王ですら蔑みが表面化していないだけで奥底からひしひしと感じ取れた。……マリアンヌが普通ではなかったのだと、改めて気づかされる。
「……お父様がた、不躾な視線は止してくださいませ」
「こら、おぬしらもっと控えんか!」
マリアンヌが仲裁に入り、女王が表面上諫めたところでこれが普通。庇われてもみじめにしかならなかった。
「――こほん。してマリアンヌ。そなたの夫はそれでよいのか?」
「もちろんですわ。お母様」
「じゃが……」
「良いのです、お母様。心配せずとも。私、今回の事で気付いてしまったのですから」
「……ふむ。続けてよいぞ」
――ああ、やはり女王は受け入れられないらしい。仮にも正式な夫の前で堂々と暗に他の男を勧めるとは……。だが、娘に忌み者を宛てがいたい親などいない。だから何を言われ、どのように扱われても仕方ない。たとえ、この場で女王の一存によってマリアンヌと今生の別れとなったとしても、それは仕方ないことだ――。
そこに、他を見繕うかどうかの話を聞きたくなくて耳を素通りしていたマリアンヌの言葉がはっきりと留まった。
「――私、このノエルのような容姿が、心の底からの好みなのです」
「……ん?」
「――!?」
――は?
「……マリアンヌよ、すまぬ。よく、聞こえなかったのじゃが……」
空耳だろうか……?
「もう! お母様ったら。お仕事のし過ぎですわ。たまには休息なさいませ」
「あ、ああ……」
マリアンヌの提案に淡い期待を持ってこんな場所までノコノコやってきて、実際には受け入れられないという現実を受け入れたくなくて、変な幻聴に聞き違えてしまったのかもしれない。
「――ですから、私、ノエルのような容姿が、心の底からの好みなのです!」
「――――」
怒りを、感じた。
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