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ノエルのはなし
女神との邂逅9
しおりを挟む「あなたにとって悪い話ではないと思うのよね」
醜い己が少女を穢したくて興奮していると気付かれたくない、と焦る気持ちを嘲笑うように、少女が淡々と話しをつづけた。今にも汚らわしい、と視線を向けられそうで気が気ではなかった。
「――私の夫になって近くにいれば、殺されかけるような事態にはなりようもないし、あなたは血が主食なんでしょう?」
そして、身動きが――己のソレ以外――出来ずに固まっていると、少女がそんなこちらの様子を気にせず、何やらこちらにとって良い話であることを印象付けるように懇々と語り始めていた。
――つまり、処分はしない、ということだろうか。
「――何度か舐めてもらって気付いたのだけど、経血がすっきりする感覚、あなたの能力ではないの?」
……やはり、気付いていたのか。
バレていないと浅はかに考えて衝動的に行動してしまっていたが、少女の言い草では、最初から気付いていたとでも言わんばかりだった。
確かに、そのすっきりとしたという感覚は、吸血鬼の能力のおかげだろう。……単純に、余すことなく味わいたいがゆえに本能が勝手に働いただけだったが。
どうやら、その能力を少女はいたくお気に召したらしく、いままで好き勝手に穢されても処分しなかった理由がコレだったらしい。この分なら助かった、と少しほっとする想いと、なんだ能力のおかげだったのか、と落胆する気持ちが大半を占めた。
「衣食住は保証するわ。どう?」
きっと、少女は能力だけを欲しているのだろう。そう分かっていても、……そうであったとしても。今日のような行為が、もしかしたらその先も許されると思うと同時に興奮が止まらなかった。
心の迷いと違って素直な己のソレを確認して、熱弁が白熱してきた様子の少女が神聖なものでなくなっていくような感覚に陥る。
女神がごとき少女でなければ、同じ提案を持ちかけられてもこうも発情はしなかっただろう、と言い訳がましく思うと――少し、いじわるして少女を試したくなってしまった。
「あなたにとってこれ以上ないほどの提案だと思うのだけど、夫に――」
「……い」
「え? ……なんて?」
少女の言葉を遮って、きょとん、と問い返す姿を気配で感じつつ、俯いたままに問うた。
「――お、れは、みにくい……」
「は?」
少女の軽い威圧に、立派に発情していた己のソレが瞬時に萎んだ。
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