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ノエルのはなし

女神との邂逅2

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「よしよし、いい子いい子よ」

 ――この状況は、なんだ。

『ああ言ってなかったかしら? あなたは運よく結界の穴を通れたけれど、ここは元々術者の許可が無ければ通れない仕様の強力な結界を常に張られているのよ』

 ……そう、寝起きに軽く言われた時の虚脱感をなんと言い表したものか。そのまま着替えへ行ってしまった女神のごとき少女に、少々文句が言いたくなったのは罰当たりでも仕方がないと許されるはずだ。
 そんなことをぐったりと考えていると、何やら芳しい匂いがした。夜通しの奮闘に疲れていたせいもあり、ふらふらと近づいてい行くと、なにやら侍女らしき女が着替えだろう服を物色していた。

 綺麗なものと、これから洗濯するものとで分けられているのだろう。無造作に置かれた場所と、整頓されて置かれている場所とで別れていた。近づいたのは無造作に置かれているほう。服の山から少しだけはみ出していた布があった。
 あまりに芳しい香りに、気付いたら反射的に舐めていた。舐めたらもっと欲しくなってしまい、しゃぶる。そうして夢中で布を貪っていると、綺麗な着替えを物色していた侍女が服を抱えて近づいたのが気配で分かった。
 さすがにバレたらまずいだろう、という理性は残っていたため、乱雑に元の服の山に突っ込みその場を何事も無かったかのように去った。

「ふふふ、いい毛並みよ、あなた」

 こうして戻って来た矢先に女神がごとき少女も戻ってきて、いつの間にか毛をブラシで梳かれている。非常に心地が良い……。
 ――と、そこへ。

「お寛ぎのところ、も、申し訳ございません! 至急、確認して頂きたいことが……」
「どうしたのかしら?」
「そ、その……こ、これを……」

 先程見た侍女が、困惑顔で布を少女へ差し出したが、それを受け取る直前に少女が気付いた。

「それは……私の、よね」
「は、はい、その通りです!」
「えぇぇ……」

 それは先程、どこかで見たようなであった。まずい。

「なぜ、下着に穴が空いているのかしら……?」

 穴などと生ぬるい。もはや布の原型すらとどめていないソレが見つかってしまった。己の背を撫でる小さな手が、首を絞められたように重く感じた――。
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