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12歳と薔薇色の…

事情2

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 マリアンヌは魔法の存在を知って遊び尽くしたとき以来の、久々に体験する異世界ファンタジーな要素にワクワクと瞳を輝かせて天使くんに問いかけた。

「何と何のハーフ?」
「…………」

 しかし天使くんはそれを聞いた途端、頼りなげに眉を下げ、薄い唇をきゅっと引き結んだまましばし沈黙した。聞いてはいけないことだっただろうかと、ここにきてマリアンヌはズケズケ行き過ぎたと少し反省した。

「……あー、言いにくいことなら別に言わなくとも――」
「――神狼フェンリル吸血鬼ヴァンパイア
「えっ!?」

 聞くのを遠慮したマリアンヌが言い切らないうちに天使くんがはっきりと告げた。正直、マリアンヌはそれを聞いてとてつもなく驚いていた。なぜなら、今世で記憶した知識が正しければその2種族は犬猿の仲であったからだ。

 もともとは2種族の先祖らが諍いになり、それが深い遺恨を残した余波を受け、互いの種族が子々孫々に至るまで夫婦関係となることなどありえないと神殿で誓いまで立てた、いまなお破られていないほど因縁深い関係とかなり有名だったはずである。

 マリアンヌは今、この国と女王、その役割についてなどを優先的に勉強中で、まだこの世界の全ての種族を知らない。がしかし、世界的に有名な話はマリアンヌの耳にも多く聞こえてくるし、その2種族の話を知っていたのは、毎年毎年殺し合いに発展しかねない空気で、今年はどうかと王宮でも噂になるからだった。

 その子ども――しかもハーフ――とは珍しいどころの騒ぎではない。世界でただ一人といっても過言ではないほどだ。秘匿されていたのか、聞いたことも無い話にマリアンヌは純粋に感動していた。
 代替わりする神女帝国の女王たちより珍しい存在とはこれいかに……と。

「ほえー……」

 マリアンヌは神妙な顔になり感心したようにひとつ頷くと、天使くんを凝視するのはやめた。そして全身を舐め回すように凝視していた視線を改めて、失礼に思われない程度に顔だけを伺うことにした。
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