上 下
160 / 178

160話 ミドリムシのスキルの暴走

しおりを挟む

 緑が持つ超光合成で作られたエネルギーが緑の感情の暴走によって勝手に魔力に変換されはじめる。

「おい、腐緑! 緑の周りに魔法で結界を張るぞ!」

「わかったよ! まーちゃん!」

 そう言って2人は緑の周りに2人係で魔法で魔力を抑える結界を構築する。

 だが、この時2人の取った行動は最悪の事態を招いた。結界の中にあふれかえった魔力が圧縮され勝手に凝縮しはじめた。

 その結果、勝手に凝縮された魔力は、緑の得意な魔法が水の魔法のために水になりはじめる。その事にいち早く気づいたの水の属性龍のウンディーネが叫ぶ。

「ちょっと! 2人共! 結界を解いて! 緑の足元に水ができはじめているわ!」

「「!?」」

 その言葉に2人が緑の足元をみてぎょっとする。

「ちょっと! まーちゃん! どうする!? 結界解く!?」

「待て! 今解いたら緑の魔力にあてられて本当に死人がでるぞ!」

 緑の魔力を魔力を感じれることができる者達(この世界ではほとんどの者)はその巨大さに非常に大きなストレスを感じると思われる。それこそ恐怖で死にかねないほどの……。

 ここでさらに状況は悪い方に加速する。

「なっ! 何が起きた!」

 魔緑と腐緑が結界を解くかどうか話している間に一瞬で結界の中が水で一杯になった。

「えぇええええ! 結界の中が一瞬で水で溢れたよ!」

 魔緑に次いで腐緑も叫ぶ。

 状況の悪化が加速した原因それは、魔緑が開けた穴であった。

 緑達がウィスプ達の国に来て数日、今日はじめて緑達の実力を知ることになった戦い。迫りくる龍種と蟲毒の戦士との戦いは昼すぎに決着がつき今にいたる。

 そのため魔緑の開けた穴からは日光がさしていた。それだけであればよかったが今緑の周りには狭くない範囲で水があり、その水から反射した日光を緑が浴びた。

 暴走状態の緑。そこに日光を浴びる。緑の意志とは別に勝手に行われる【超光合成】が膨大なエネルギーを作り出す。

 キィィィイイイイイイイ!!!!!!

 しばらくすると響きはじめる謎の怪音。

 ピキ! ピキピキ! ピキピキピキピキピキピキ!

 水が凍り魔力の結界を抜けて氷の薔薇が伸びていく。その氷の薔薇は、実在の薔薇と変わらぬ大きさで伸び続ける。それは草木が日光を求めるように魔緑の開けた穴から外に伸びる。

 細い氷の薔薇は光ファイバーの様に浴びた日光を自分の中を通し緑に集めていく。

「おい! ノーム! ウンディーネ! ウィスプ!」

 さらに増大し続ける緑の魔力にサラマンダーが叫び龍種の4人も動く。

「魔力の結界を上部に穴をあけて逃げ道を作って張るぞ!」

 ノームが叫ぶと魔緑と腐緑の結界のさらに外に4人が上部に穴の開いた結界を作り出す。

「魔緑、腐緑2人共一旦結界を解いて! その後に私達の作る結界を手伝って!」
 
「わかった!」「そうっちの方がいいね!」

 そう言って2人が同時に魔法の結界を解く。

「うぉおおおお!」「むうっ!」「くぅう!」「んんんっ!」

 魔緑と腐緑が結界を解き自分達の結界に圧力が加わりうめき声を上げる4人だがその圧力はすぐさま和らぐ。

「「助かった!」」

 4人の作った結界に魔緑と腐緑の魔力が加わる。

 6人がかりで作った結界の上部には逃げ道が作られており、緑の大量の魔力が柱の様に立ちのぼっていた。

 6人がかりで結界を作り少しだけ余裕のできた6人が、この後はどうするか話はじめるが良い案がでない、緑は落ち着きを取り戻すも暴走状態にある自分のスキルに再び慌てふためいていた。

「止まって! 止まってよ~!」

 途中から現状を理解した緑が何とかスキルの暴走を止めようと必死に叫びスキルを止めようとしていた。

 なおも増大する緑の魔力に蟲人達やそれに気づいた干支緑達、獣人の3姫、緑の家族全員で結界をはる。

 そんな彼らの前に1人の女性が突然現れる。

「女神!」

「「女神様!?」」

 魔緑が思わず叫んだ言葉に龍種の4人が驚きの声を上げるが魔緑が続ける。

「ここに来たって事は何とかできるのか!?」

「……」

「このまま魔力が暴発したらこの大陸自体が消し飛ぶんじゃねぇか!?」

 魔緑が叫ぶも女神は青い顔をしてだまっている、それにイライラした魔緑が叫ぶ。

「「!?」」

 魔緑の言葉にその場にいた意識を保っている全員が息をのむ。

「……いいえ……そのような事になりません……ですが… 緑さんが変わってしまうかもしれません」

 その言葉の直後

「うわぁああああ!」

 突然、緑が叫び声を上げたかと思うとそれまで緑から溢れていた魔力が消え、それと同時に緑が気を失い膝から崩れ落ちる。

 それに気づいたヒカリとクウがすかさず緑を支え静かに床に寝かす。

 その光景を見て全員が安堵するが女神だけは青い顔したままであった。

「何かまずいの?」

 女神のあまりの様子に腐緑が以前微動だにしない女神に話しかける。

「皆さん、鑑定ができる方は、緑さんを鑑定してみてください。

 水野 緑
  【職業】魔王

「緑さんが魔王になってしまいました……」

 そう女神が呟くのであった。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

蟲の皇子 ~ ダークエルフのショタ爺とアマゾネスの筋肉娘がおりなすアラビアン・ファンタジー ~

雨竜秀樹
ファンタジー
 ダークエルフの少年蟲使いとアマゾネスの奴隷戦士が主人公のアラビアン・ダークファンタジー。  西と東の異なる文化の中間地点に位置する交易都市エルカバラードの領主イヴァ。  ダークエルフの少年である彼の地位は傀儡と仕立てあげられたものであり、実質的な権力はありません。ですが、領主が死ぬことによりエルカバラードが混乱することを望む勢力から暗殺者を送り込まれております。そろそろ権力を握ろうと考えている時、奴隷として売られているアマゾネスのペルセネアを見つけて買い取るところから物語は始まります。  男女比は7:3を目標にしております。  この話はダークエルフの少年とアマゾネスの奴隷戦士の2人が交易都市エルカバラードを舞台に活躍いたします。内容には蟲・奴隷・略奪・拷問・虐殺など、非人道的、残虐なシーンが有りますので、苦手な方は読まれる際はご注意ください。

拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~

ぽん
ファンタジー
⭐︎コミカライズ化決定⭐︎    2024年8月6日より配信開始  コミカライズならではを是非お楽しみ下さい。 ⭐︎書籍化決定⭐︎  第1巻:2023年12月〜  第2巻:2024年5月〜  番外編を新たに投稿しております。  そちらの方でも書籍化の情報をお伝えしています。  書籍化に伴い[106話]まで引き下げ、レンタル版と差し替えさせて頂きます。ご了承下さい。    改稿を入れて読みやすくなっております。  可愛い表紙と挿絵はTAPI岡先生が担当して下さいました。  書籍版『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』を是非ご覧下さい♪ ================== 1人ぼっちだった相沢庵は住んでいた村の為に猟師として生きていた。 いつもと同じ山、いつもと同じ仕事。それなのにこの日は違った。 山で出会った真っ白な狼を助けて命を落とした男が、神に愛され転移先の世界で狼と自由に生きるお話。 初めての投稿です。書きたい事がまとまりません。よく見る異世界ものを書きたいと始めました。異世界に行くまでが長いです。 気長なお付き合いを願います。 よろしくお願いします。 ※念の為R15をつけました ※本作品は2020年12月3日に完結しておりますが、2021年4月14日より誤字脱字の直し作業をしております。  作品としての変更はございませんが、修正がございます。  ご了承ください。 ※修正作業をしておりましたが2021年5月13日に終了致しました。  依然として誤字脱字が存在する場合がございますが、ご愛嬌とお許しいただければ幸いです。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

王太子殿下と婚約しないために。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ベルーナは、地位と容姿には恵まれたが病弱で泣き虫な令嬢。 王太子殿下の婚約者候補になってはいるが、相応しくないと思われている。 なんとか辞退したいのに、王太子殿下が許してくれない。 王太子殿下の婚約者になんてなりたくないベルーナが候補から外れるために嘘をつくお話です。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...