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144話 ミドリムシはあやまる
しおりを挟む緑はため息をつくと王に振り向き頭を下げる。
「皆さんお騒がせしてすいません」
緑の言葉を聞いた近衛騎士達は、王の前に作った壁を崩し離れる。
「気にするな緑、たしかに少々変わった者ではあるが我が国の町を救ってくれたのだろう? その事をふまえても彼女の性質が善だと疑う事はない」
その王の言葉に緑はほっとするが真面目な顔をして話始める。
「まだ出会って数日ですので僕達も彼女の事を測りかねています。 ですが王が言ってくれたように僕達も彼女の性質は善だと思います。 元、【水野 緑】の者は全員がその性質が善だと願っています」
そんな緑の言葉を聞き獣人の国の王は口を開く。
「我らの国もそうだが緑達が今まで歩んできた国全てが緑達の性質が善であり助けられた事に感謝していると思う」
「こちらこそ、今までお邪魔した国すべてに感謝しています……」
「さっきも言ったが彼女の事は気にするな。 無理を言ってすまなかった」
「いえ、とんでもありません」
そう言って緑は無言で考え込む。
「今日はそろそろ帰った方がよさそうだな。 わざわざ来てくれて感謝する」
「いえ、お騒がせしてすいませんでした」
そう言って緑達は、開いたままだったダンジョンの扉に入っていくのであった。
緑が入ったダンジョンの扉が消えたのを隠して王は口を開く。
「帰ったか…… ふぅ。 しかし、毒の言葉が出た時はさすがに焦ったな」
王が独り言のようにこぼした言葉に周りに居た者達全員が頷く。
「しかし、病を殺す毒か……」
「はい、しかも病がなおった事を伝えるためにこちらに向けて送った2人目の使者はその毒をまきながら王都に着いたらしいです」
「病を殺す毒をまき散らしながらか…… やはり新しい【水野 緑】、彼女も規格外の様だな」
王の言葉をききその場にいた者達全員が先ほどまでダンジョンの扉があった場所をみつめるのであった。
ダンジョンの中に入り扉が消えたことを確認すると緑はウンディーネの方を見て口を開く。
「はぁ、さっきは本当に焦った…… あらためてウンディーネ本当にありがとう」
「まぁ、気にする必要はないわ。それより、そろそろおこそうか」
ウンディーネがそう言うと緑は腐緑の肩をゆする。
「ん、んん。 おはよう」
「もう! おはようじゃないよ! ふーちゃん! なんで言う事をきかなかったの!?」
「うう、そんな怒らないでよ女になってから思考も変わったし、性格も変わってる…… 特に性癖はひどいでしょう? 私も制御できない部分があってそれが怖いから部屋にこもっていたのに、無理やり連れていかれてあんな光景を見せられたら……うぅぅぅ」
「ぐす…… ぐすぐす……」
腐緑は話しながら泣きはじめる。それを見た緑も腐緑の話を聞き彼女の事を理解していなかったと後悔する。緑も泣きはじめた腐緑の様子と腐緑なりに考えて行動していたことを聞かされ泣きはじめる。
「うえ~ん! ごめんよ~ ふーちゃんの不安も知らないで勝手な事を言って」
そう言って緑は腐緑を抱きしめる。
「ううううう…… うえ~ん!」
抱きしめられた腐緑の目に涙がこぼれ声をあげて泣き始める。
だが、そんな光景を見ても納得できない者が現れる。
「だが、俺達に毒を盛る必要はなかったんじゃないか?」
そういって魔緑がやってくる。
「だって! ひどいでしょう! 嫌だと言っているのに無理やり連れていくんだもん! 連れていかれた先で暴走してしまったし! 感情の制御ができない気持ちなんかわからないでしょ!」
腐緑の言葉に思わず魔緑は顔をしかめる。
「むう、確かに感情がコントロールできないのは辛いな……」
魔緑は、緑と出会う前に感情のコントールができず世界樹を攻撃してしまった事を思い出し、なんとも言えない表情をする。
「だが、そんな理由があるならなおさら部屋を出た方が良い、俺と緑も出会った事で感情のバランスが戻ったんだ」
そう言って魔緑は緑達から離れていく。
「無理やり連れだして悪かったな……」
背中を向けたまま魔緑は腐緑に謝り去っていくのであった。
緑と魔緑は抱き合ってしばらくの間泣き続けていたが急に緑が立ち上がり声を上げる。
「うん! まーちゃんの言う通りだよ、ふーちゃんも1人で部屋にこもらないで皆と一緒にいようその方がきっと良いよ!」
「たけど…… 私、暴走するかもしれないよ?」
「大丈夫、その時は皆でとめるから」
そう言って抱きしめていた腐緑を離すと緑は腐緑の手をとり歩き出す。
「まずは毒を盛った皆に謝りに行こう」
緑が歩き出し腐緑の手を引くが腐緑は下を向きうごかない。
「……皆、許してくれるかな?」
うごかない腐緑を緑が振り返りしばらく見ているとぼそりと腐緑が呟く。その呟きを聞いた緑はニコリと笑う。
「僕も一緒にあやまるから」
緑の言葉の後、再び黙りこむ腐緑。
「うん…… 皆にあやまる」
そう腐緑は返事をすると顔を上げ緑と一緒に歩いて行くのであった。
緑と腐緑がダンジョンの中の家に着くと腐緑が毒を盛った者達が集まっていた。緑は、丁度良いと皆に声をかけようとするがそれよりも前に腐緑が声を上げる。
「皆! ごめんなさい!」
その言葉を聞いて集められていた者達はそれぞれ口を開く。
「腐緑さん気にしないでください、先ほど魔緑さんから説明を受けました」
「そうです♪ 緑さんも出会ったころは感情のバランスがとれていせんでした♪」
「お気になさらず~」
「まーちゃんも、みーちゃんと会う前はすごい怒りぽかったし。しかたがないことだのう」
「せやな! まーちゃんは、うちら家族だけやなくて他の人達にも迷惑をかけてた事にくらべたらましやったんちゃう?」
「まーちゃんの暴走のほうがすっごく大変でした」
「「それに……」
そう言って皆が魔緑に視線を集める。
嫌がって逃げる腐緑を干支緑達を除く緑達家族の女性陣総出で捕まえたのでもれなく女性陣全員が毒を盛られていた。
その全員に先ほど毒を盛った理由を聞いた魔緑が皆を集め、腐緑が毒を盛った理由を説明していた。しかも魔緑は腐緑を許してほしいと頭まで下げていた。
「まーちゃんが許してやって欲しいと頭をさげていたしのう」
琉璃の言葉を聞いて腐緑が魔緑を見つめる。見つめられた魔緑は目線を外しぼそりと呟く。
「まぁ、俺も家族以外の人にも迷惑をかけていたしな……」
その言葉を聞いた腐緑は、目にみるみる涙をためていく。
「ううう…… うえ~ん! まーちゃんありがとう!」
そう言って魔緑に抱き着く。
「おい! 抱き着くな! 涙や鼻水が服に付く! おい聞いているのか!? 離れろ!」
「うえ~ん! ありがとうー 本当にありがとうー」
「ぐす…… 良かったねふーちゃん……」
それを見た緑も涙ぐむ。
「さっすがまーちゃん! なんやかんや言っても最後はデレルんやな!」
「皆にすっごく謝っていましたね」
そんな言葉をかけられている間に緑も泣きはじめ、2人の【水野 緑】が泣いていた。
「それにやはり緑様達は全員涙もろいのですね」
「ですね♪ みんなすぐに泣いちゃいますね♪」
「そこがいいところです~」
蟲人3人の言葉を聞いた腐緑が魔緑に抱き着いたまま顔を上げると魔緑の目じりに小さな涙がみえるのであった。
それをみた腐緑は涙を流しながら笑い呟くのであった。
「泣いた顔もいいね! まーちゃんの受けの妄想もはかどるよ♪」
その日、緑達がふだんいるダンジョンの建物の屋根を突き破って火柱が上がったことにダンジョンに居る者達全てが驚くのであった。
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