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37.押し切り
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「出来るよ。やっぱり、そこにこだわるんだ」
「出来なかったら、お金もらえないじゃん」
残りのハンバーガーを口に押し込みながら、萌はそれが当たり前のように言った。名残惜しそうに包装紙をきちっと畳む姿を眺めていたボクは言った。
「まだ食べるなら、もう一つハンバーガー食べていいよ」
「ホント。ラッキー」
ボクは千円札を財布から出し、萌はそれを受けとりカウンターに駆けていった。
「ありがとね」
そう言って、新たに買ってきたハンバーガーに口を付けながら、初めて見せた笑顔で萌はお礼を言った。
「何で、そんなにお金が欲しいの」
「えー、だれだってお金は欲しいでしょ。それに、持てる者が持たざる者に分け与えるのは、どこかの神様の教えでしょ。その対価として、私は自分のカラダを差し出すの」
食事してお金を貰ってさようならする女子よりは、随分まともな神経だなと思いながら、「いや、それは違う」と心の中で叫んだ。倫理的には正しくないことを今しているボクが、言える話ではないのだろうけど。
「キミ、ほんとは高校生でしょ」
「えっ」
突然の質問に、萌は驚いたような顔をした。
「正直に言わないと、ここでさよならだね」
「いや、ちょい待ち。それは困るんだよ。家に帰りたくないし」
「家出娘なのかぁ。じゃあ連絡入れないとな」
「ほんとに待って。正直に言うからさ。はい、まだ高校生です。今は学校へは行ってないけど」
「わかった。話を聞こう」
ボクの言葉に、萌は落ち着いたようにため息をついた。
「どうして家出したの」
「ここでは言えない」
「うーん。どこなら話せるの」
「ホテル」
「いや、それはマズいでしょ」
「おねがい」
「ネカフェとかは。お金出してあげるから」
「だめ!昨日ネカフェの泊まったら、夜中に変な男に絡まれて、怖かったし」
「このまま、キミをほっといて帰るわけにもいかないし。困ったなぁ」
「おねがいします。なんでもするから」
萌は、本当に必死でボクに頼んでいるように見えた。
「なんでもするとか言ったらだめだよね。その言葉は、他の男に言ったら大変なことになるヤツだからね。まあ、ボクも大変なことするかもしれないし」
「そうなの。でも、いいの。だから、おねがい」
引き下がろうとしない萌に、根負けしたようにボクは言う。
「わかった、わかったよ。仕方ないなぁ。じゃあ、ボクの言うことなんでも聞くんだよ」
「ほんと!やったぁ」
萌は笑顔になって、両手を挙げて無邪気に喜んだ。そんな姿を見ていると、高校生と言うよりもっと幼く見えてしまう。まさかな、と思いつつ少し不安になってくる。
「ねぇ、学生証とか持ってる?」
「そんなの持ってないよ。なんで」
「いや、歳とかを確認出来ないかなって思って」
「高校生って言ったでしょ。信じられない?」
「そんなことはないんだけど。素直に喜んでたから」
「だって、うれしかったんだもん」
また、食べ終えたハンバーガーの包み紙を手のひらで伸ばして畳みながら言った。
「お風呂も入れるし、お布団で寝られるから」
「はぁ」
「あっ、今、臭いとか思ったでしょ」
「えっ、いやいや、そんなことないけど。着替えとか持ってる?今から買いに行って、ちゃんと夕ご飯食べてからにしようか」
「うん、でもいいの?」
「臭いよりはね」
「それ言うのね」
二人は、顔を見合わせて笑った。
「出来なかったら、お金もらえないじゃん」
残りのハンバーガーを口に押し込みながら、萌はそれが当たり前のように言った。名残惜しそうに包装紙をきちっと畳む姿を眺めていたボクは言った。
「まだ食べるなら、もう一つハンバーガー食べていいよ」
「ホント。ラッキー」
ボクは千円札を財布から出し、萌はそれを受けとりカウンターに駆けていった。
「ありがとね」
そう言って、新たに買ってきたハンバーガーに口を付けながら、初めて見せた笑顔で萌はお礼を言った。
「何で、そんなにお金が欲しいの」
「えー、だれだってお金は欲しいでしょ。それに、持てる者が持たざる者に分け与えるのは、どこかの神様の教えでしょ。その対価として、私は自分のカラダを差し出すの」
食事してお金を貰ってさようならする女子よりは、随分まともな神経だなと思いながら、「いや、それは違う」と心の中で叫んだ。倫理的には正しくないことを今しているボクが、言える話ではないのだろうけど。
「キミ、ほんとは高校生でしょ」
「えっ」
突然の質問に、萌は驚いたような顔をした。
「正直に言わないと、ここでさよならだね」
「いや、ちょい待ち。それは困るんだよ。家に帰りたくないし」
「家出娘なのかぁ。じゃあ連絡入れないとな」
「ほんとに待って。正直に言うからさ。はい、まだ高校生です。今は学校へは行ってないけど」
「わかった。話を聞こう」
ボクの言葉に、萌は落ち着いたようにため息をついた。
「どうして家出したの」
「ここでは言えない」
「うーん。どこなら話せるの」
「ホテル」
「いや、それはマズいでしょ」
「おねがい」
「ネカフェとかは。お金出してあげるから」
「だめ!昨日ネカフェの泊まったら、夜中に変な男に絡まれて、怖かったし」
「このまま、キミをほっといて帰るわけにもいかないし。困ったなぁ」
「おねがいします。なんでもするから」
萌は、本当に必死でボクに頼んでいるように見えた。
「なんでもするとか言ったらだめだよね。その言葉は、他の男に言ったら大変なことになるヤツだからね。まあ、ボクも大変なことするかもしれないし」
「そうなの。でも、いいの。だから、おねがい」
引き下がろうとしない萌に、根負けしたようにボクは言う。
「わかった、わかったよ。仕方ないなぁ。じゃあ、ボクの言うことなんでも聞くんだよ」
「ほんと!やったぁ」
萌は笑顔になって、両手を挙げて無邪気に喜んだ。そんな姿を見ていると、高校生と言うよりもっと幼く見えてしまう。まさかな、と思いつつ少し不安になってくる。
「ねぇ、学生証とか持ってる?」
「そんなの持ってないよ。なんで」
「いや、歳とかを確認出来ないかなって思って」
「高校生って言ったでしょ。信じられない?」
「そんなことはないんだけど。素直に喜んでたから」
「だって、うれしかったんだもん」
また、食べ終えたハンバーガーの包み紙を手のひらで伸ばして畳みながら言った。
「お風呂も入れるし、お布団で寝られるから」
「はぁ」
「あっ、今、臭いとか思ったでしょ」
「えっ、いやいや、そんなことないけど。着替えとか持ってる?今から買いに行って、ちゃんと夕ご飯食べてからにしようか」
「うん、でもいいの?」
「臭いよりはね」
「それ言うのね」
二人は、顔を見合わせて笑った。
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