不自由と快楽の狭間で

Anthony-Blue

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6.虚しさ

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 ボクの胸に倒れ込んで、アカネは横隔膜を最大限に上下させて息を落ち着かせようとしていた。ボクは二人の接触している肌が、汗で滲んで透明な膜で隔たれているように温度差を感じていた。荒く振幅していた呼吸が落ち着いてきた頃、アカネは二人を繋いでいたままになっていた存在を体を起こして静かに抜いていった。まだ興奮から冷め切っていないペニスを覆っていたゴムを剥ぎ取った。

「見てみて、すご~い。たくさん出てるよ。ほら」

 コンドームの端を器用に結んで、アカネはまるで戦利品を見せるようにボクの顔に近づけて言った。

「溜まってたんだね。きっと」

 本来の生殖行為とは無縁の閉じ込められた細胞は、ゴムの檻に閉じ込められてティッシュにくるまれ無雑作にゴミ箱に捨てられた。

「じゃ、わたしはシャワーを浴びてくるね。服は自分で着られるんだよね」

「うん、大丈夫だけど・・・」

 先ほどから同じ姿勢で天井を見ていたボクは、のろのろと上半身を起こしてアカネの裸の姿を目で追った。

 本当に何も出来てない自分を哀れむように、自分自身を見つめた。脱ぎ散らかした衣服を拾い集めて身につけていく。車椅子に乗り移って、乱れたベットを見ているとアカネがシャワーから戻ってきた。

「あっ、もう服着たんだ」

「あっ、うん」

 体に巻いていたバスタオルをベッドに放り投げて、もう今さら恥ずかしさもないという感じでこちらを向いて笑って下着に手を伸ばした。

 ボクは、彼女の裸体を目にして、まだ自分では触れていない部分も見てみたいところもあったなと考えていた。今は童貞を捨てたわけではなく奪われた感覚だった。アカネは、次々と服を纏っていき初めて見た時の状態に戻っていた。

「支度出来たから、部屋出ようか」

 そう促されてボクもドアの方に向かう。

「ホテル代、おねがいね。現金?それともカード?」

「ああ、クレジットカードで払うよ」

「わたし、やろうか?」

 といって、精算機の前で手を出してカードを受け取って精算機に差し込んだ。

「あっ、LINEの交換しとこうか。また、やりたくなったらLINEしてよ」

 ドアノブに手をかけてたところでアカネはスマホをバッグから取り出した。

 ホテルから駅に向かう間、二人とも無言で進んだ。

「じゃあ、ここで。また連絡待ってるわ」

「うん。またね」

 駅前に着くとアカネは別れの言葉を言って振り向きもせず、人込みに消えていった。

「こんなんじゃないと思ったのにな」

 ボクは独り言を吐き出して、いつもより眩しく見える青空を見上げた。
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