不自由と快楽の狭間で

Anthony-Blue

文字の大きさ
上 下
6 / 139

6.虚しさ

しおりを挟む
 ボクの胸に倒れ込んで、アカネは横隔膜を最大限に上下させて息を落ち着かせようとしていた。ボクは二人の接触している肌が、汗で滲んで透明な膜で隔たれているように温度差を感じていた。荒く振幅していた呼吸が落ち着いてきた頃、アカネは二人を繋いでいたままになっていた存在を体を起こして静かに抜いていった。まだ興奮から冷め切っていないペニスを覆っていたゴムを剥ぎ取った。

「見てみて、すご~い。たくさん出てるよ。ほら」

 コンドームの端を器用に結んで、アカネはまるで戦利品を見せるようにボクの顔に近づけて言った。

「溜まってたんだね。きっと」

 本来の生殖行為とは無縁の閉じ込められた細胞は、ゴムの檻に閉じ込められてティッシュにくるまれ無雑作にゴミ箱に捨てられた。

「じゃ、わたしはシャワーを浴びてくるね。服は自分で着られるんだよね」

「うん、大丈夫だけど・・・」

 先ほどから同じ姿勢で天井を見ていたボクは、のろのろと上半身を起こしてアカネの裸の姿を目で追った。

 本当に何も出来てない自分を哀れむように、自分自身を見つめた。脱ぎ散らかした衣服を拾い集めて身につけていく。車椅子に乗り移って、乱れたベットを見ているとアカネがシャワーから戻ってきた。

「あっ、もう服着たんだ」

「あっ、うん」

 体に巻いていたバスタオルをベッドに放り投げて、もう今さら恥ずかしさもないという感じでこちらを向いて笑って下着に手を伸ばした。

 ボクは、彼女の裸体を目にして、まだ自分では触れていない部分も見てみたいところもあったなと考えていた。今は童貞を捨てたわけではなく奪われた感覚だった。アカネは、次々と服を纏っていき初めて見た時の状態に戻っていた。

「支度出来たから、部屋出ようか」

 そう促されてボクもドアの方に向かう。

「ホテル代、おねがいね。現金?それともカード?」

「ああ、クレジットカードで払うよ」

「わたし、やろうか?」

 といって、精算機の前で手を出してカードを受け取って精算機に差し込んだ。

「あっ、LINEの交換しとこうか。また、やりたくなったらLINEしてよ」

 ドアノブに手をかけてたところでアカネはスマホをバッグから取り出した。

 ホテルから駅に向かう間、二人とも無言で進んだ。

「じゃあ、ここで。また連絡待ってるわ」

「うん。またね」

 駅前に着くとアカネは別れの言葉を言って振り向きもせず、人込みに消えていった。

「こんなんじゃないと思ったのにな」

 ボクは独り言を吐き出して、いつもより眩しく見える青空を見上げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...