上 下
53 / 79

53.恋心

しおりを挟む

 エルヴィスがアイラの姿を目にしたのは、偶然だった。

 いつも通り書類仕事を片付け、いくつかの報告事項を国の重鎮たちに告げたあと、団長室へ戻る途中だった。
 密偵のロイから、アイラがクローネと定期的に訓練を行っていると聞いていたため、何となく窓から訓練場へ目を遣った。

 訓練場は三箇所あり、そこにアイラたちがいるかどうかは分からない。
 それでもすぐに、蜂蜜色の髪がエルヴィスの目に入った。


「―――…」


 愛おしい姿をエルヴィスがじっと眺めていると、驚くことにアイラがふと顔を上げ、視線が絡む。
 かと思えば、アイラが急に駆け出したのだ。

 何事かとその姿を目で追えば、アイラが衛兵に話し掛けているのが見えた。
 その指がエルヴィスの方を指しており、ぺこりと頭を下げてまた駆け出す。


 ―――もしかして、こっちへ来るつもりか?


 そう思ったエルヴィスは、団長室とは反対方向へ歩き出す。
 アイラが入った場所からここへ向かうには、おそらく―――…。


 階段の手すりを掴み、ひらりと跳躍する。そのまま段差を飛び越えて着地すると、ちょうど階段を上ろうとしていたアイラが現れた。
 エルヴィスを見て、その目を丸くする。


「エ…エルヴィス団長?」

「俺に用かと思ったんだが、違ったか?」

「違いません。でも…危ないので階段は飛び降りないでください」


 艶のある唇から注意の言葉が出たことで、エルヴィスはフッと笑った。


「……俺に注意してくれる、貴重な存在だな」

「あ…すみません、不敬でしたね」

「どうしてだ?俺を心配してくれたんだろう。アイラになら、何を言われても不敬とは思えないけどな」

「……そ、そうですか…?」


 少し頬を赤らめながら、アイラが視線を逸らす。可愛いな、と思いながらも、エルヴィスは周囲に視線を移した。
 衛兵や使用人から注目を浴びており、あまりここにはいない方がいいと判断する。


「……ところで、任務の件か?それなら、団長室で話を聞こう」

「えっ」


 アイラは驚きの声を漏らしてから、慌てて口を押さえた。
 どうしたのだろうと思ったエルヴィスは、一つの可能性に行き当たる。


 ―――俺と二人になることを、警戒しているのか?この間のような空気になるのが、嫌なのかもしれない…。


 この間のような空気とは、エルヴィスがうっかりアイラにキスしてしまいそうになったときのことだ。
 つい視線がアイラの唇へ向きそうになり、何とか首ごと横へ逸らした。


「も、もし急ぎの要件なら、近くで聞こう。あそこの部屋でいいか?少し狭いかもしれないが」

「は、はい。大丈夫です」


 エルヴィスとアイラの間に、ぎこちない空気が漂う。少しの緊張で強張りながら、近くの部屋へ二人で入った。
 扉を閉めると、座り心地の良さそうなソファへアイラを促す。


「あの、エルヴィス団長。今更ですが…お時間は平気ですか?」

「ああ、大丈夫だ。ちょうど仕事が落ち着きそうだったから、夕方あたりに会いに行こうかと思っていた」


 アイラがソファに腰掛けながら、遠慮がちな視線を向けてくる。
 小さなテーブルを挟んで正面に座りながら、エルヴィスは続けた。


「それで、何があった?それとも、何か思い出したのか?」

「あ、いえ、私の命を狙う人物についてではなくて…」

「ん?」

「……その…、ウェルバー侯爵邸で開かれる、夜会の…件なのですが…」


 アイラの声が、だんだんと小さくなって消えていく。

 ウェルバー侯爵、夜会。聞き取れたその二つの単語から、アイラが何を言いたいのか分かり、エルヴィスは眉を寄せた。


「……ああ。君が自ら、囮役を言い出したと聞いた」

「……はい。それで……あの、フィン副団長とのことで…」

「フィン?」


 フィンの名前が出ただけで、エルヴィスの中で嫉妬の炎が燃え上がった。
 あろうことかフィンは、アイラの恋人役として護衛をすると先日報告してきたのだ。

 その際、呆然としていたエルヴィスをよそに、異母兄弟であり現在のウェルバー侯爵であるバージルと練ったという案を、フィンはペラペラと話していた。
 恋人役ならば、自分でもいいじゃないか。そう言い出したくなる気持ちを抑えるのが、エルヴィスは大変だった。


 そして、フィンとバージルの案は、きちんとアイラの身の安全を考えて練ってあった。
 だからこそ反対はできなかったし、団長であるエルヴィスより、副団長のフィンの方がまだ周囲の反感を買わないということは分かっていた。
 貴族の間では、孤児院出身で騎士団長まで成り上がったエルヴィスの存在は、あまり良く思われていないからだ。

 その点フィンは、整った容姿と陽気な性格から、貴族女性に好かれているのはもちろん、男性からの評判も良い。
 バージルとの情報伝達なども考えると、アイラをそばで護るのはフィンが適役だった。

 ……そう頭では分かっていても、受け入れられるかどうかは別である。


「フィンが…恋人役になるんだったな」

「はい…」

「………」

「………」


 沈黙が流れるが、アイラはどこかそわそわと落ち着きがない。
 エルヴィスには、何かを言おうとして躊躇っているように見えた。


 ―――何だ?まさか、フィンと本当の恋人になりたい、とか言い出すんじゃないだろうな?


 嫌な汗が伝い、手にぐっと力が入った。
 何か言わなければ、と思ったエルヴィスより先に、アイラが口を開く。


「……あ、あくまで、フリですのでっ!」

「…………、ん?」

「ですから、恋人の、フリ、です!」


 声を張り上げて“フリ”の部分を強調するアイラに、エルヴィスの頭に疑問符が並んだ。


「……それは、フィンから聞いているが…」


 わざわざ自分の口から言いたかったのだろうか。遠回しに、恋人は必要ないと言われているのだろうか。
 アイラの言葉の意味を考えていると、瑠璃色の瞳が向けられる。


「……エルヴィス団長は、誤解…していないということで、よろしいですか?」

「誤解?」

「私が、フィン副団長を選んで恋人役にお願いしたとか、本当は恋心があるのではないかとか…」


 エルヴィスはガタンと音を立てて席を立った。


「そうなのか?……フィンが好きなのか?」

「ち、違います!だから、そういう誤解をされていたら嫌だなと…!」

「……ああ。なんだそういう…」


 席へ座り直したエルヴィスは、ふとアイラの言葉に引っ掛かりを覚えた。
 誤解をされていたら、嫌だ。その言葉の真意は、何だろうか。


「………俺に誤解をされたら、嫌なのか?」


 駆け引きだとか、そういったものはエルヴィスには向かない。
 まともな恋愛をしたことはなく、アイラが初めての恋をした相手だった。

 なので、真正面から疑問を投げかける。


「………っ、」


 アイラの顔が真っ赤になる。それだけで答えが分かったが、エルヴィスは言葉で聞きたかった。


「……アイラ?」

「………はい」


 名前を呼べば、アイラは小さく囁くような声を出して頷いた。


「エルヴィス団長には…私に誰か想い人がいるのではないかと、誤解されたくありません…」


 エルヴィスの心臓が、どくんと跳ねた。
 目の前に座るアイラの腕を引き寄せ、抱きしめたくなる衝動に駆られる。
 行動に移していいものか迷っているうちに、アイラが勢いよく立ち上がった。


「……お、お話はそれだけです!失礼しますっ!」

「は?おい、ちょっ…」


 ぺこりと頭を下げ、扉へ向かうまでのアイラの動きは素早かった。
 扉が開けられる寸前のところで、エルヴィスはアイラを後ろから抱きしめる。

 腕の中にすっぽりと収まった小さな体が、ぎくりと強張った。


「………」

「……アイラ」

「………」


 反応は無いが、嫌がられてはいない…とエルヴィスは判断する。


「……教えてくれ。どうして、俺に誤解されるのが嫌なんだ?」


 アイラの耳元で囁くように訊けば、ぴくっと体が動いた。
 蜂蜜色の髪から漂う甘い香りに誘われるように、エルヴィスは鼻を寄せる。


「……んっ」


 部屋に響いた艶のある声に、エルヴィスは固まった。すぐに心臓がバクバクと激しく動き出す。


 ―――待て待て。これはダメだ。このままだとヤバい。このままだと俺が―――…。


「―――もう、無理ですっ!!!」


 アイラがそう叫びながら勢いよく頭を振り、エルヴィスの額にぶつかった。
 ゴツン、と音が鳴り、痛みからエルヴィスの腕が緩む。その隙にアイラは抜け出していた。

 アイラは顔を真っ赤にし、瞳を潤ませながら、睨むようにエルヴィスを見る。
 そして、震える唇で訴えた。


「……エ、エルヴィス団長は何とも思わずやっているのでしょうけど…!わ、私は慣れていないので!無理です!」

「アイ…」

「このままだと、し、心臓が破裂しますっ!これ以上、ドキドキさせないでください!失礼しますっ!!」


 一方的にそう告げると、アイラは逃げるように部屋から出て行った。
 その場に取り残されたエルヴィスは、額に手を当てたまま立ち尽くす。

 しばらくして、口から笑い声が漏れた。


「………っく、くく…!」


 アイラの捨て台詞を思い出し、エルヴィスは笑いが止まらなかった。


 ―――俺も無理だよ、アイラ。君が可愛すぎて、愛しくて…君の全てが、欲しくてたまらない。


 際限なく募る想いは、いつか抑えきれずに口から零れてしまうだろう。
 それでも構わないと、エルヴィスは思う。

 真っ赤に染まったアイラの顔を思い出しながら、エルヴィスは上機嫌で部屋をあとにした。





***


 ―――バタン!と勢いよく扉が閉まる。


「……アイラ?」


 その音に驚いたのか、目を丸くしてカレンがアイラを見た。
 髪を洗ったのか、濡れた頭にタオルを被っている。


「おかえり…って言いたいところだけど、どうしたの?何かあったの?」

「……カレン…、私は今、どんな顔をしている…?」


 アイラが一歩も動かずにそう訊ねると、カレンは首を傾げた。


「そうね。頬は赤いし、瞳は潤んでるわね。何だか色気もある。……例えて言うなら、情事のあとみたいな…」

「ひゃああああああぁぁぁ!」


 カレンの言葉を遮って、アイラは叫びながらしゃがみ込む。その反応に、カレンが瞬きを繰り返した。


「……え?アイラ、まさかなの?」

「ち、違うわ!違うけどっ…!」


 アイラは両手で顔を覆いながら、つい先程の状況を思い出して、また「ああぁ…」と声を漏らした。


 ―――は、恥ずかしい。エルヴィス団長に耳元で囁かれて、髪に顔を寄せられて、くすぐったかったとはいえあんな声を…!


 思わず逃げるように帰ってきてしまい、去り際に自分が何を言ったかあまり覚えていない。
 考えれば考えるほど、アイラは顔から火が出そうになった。

 ポン、と肩を叩かれ、顔を上げれば笑顔のカレンが目の前にいた。


「詳しく聞かせなさい?」

「………はい…」


 迫力のある美人の笑顔に、アイラは頷くしかなかった。カレンに腕を引かれ、よろよろと立ち上がり、椅子へ座る。
 隣に椅子を並べ、カレンが「それで?」と言った。


「どうしてそんな顔してるの?」

「え…ええと……」

「聞き方を変えようかしら。誰に、そんな顔にさせられたの?」

「…………っ」


 アイラは全身が熱を帯びたように感じ、椅子の上で膝を抱えて身を縮めた。


「……だ、誰かは言えないわ…」

「あら、ケチね。じゃあ、どうして、の部分は言えるのかしら?というか、言うまで寝かせないわよ」


 脅すようにそう言われ、アイラはごくりと喉を鳴らす。意を決して口を開いた。


「だ……」

「だ?」

「抱きしめ、られたの……」


 ちらりと隣を見れば、カレンがそれだけ?と言うような顔をしている。アイラは慌てて付け足した。


「そ、それで耳元で囁かれて!髪に顔を寄せられて!……く、くすぐったくて変な声出しちゃって…!」


 言葉にすれば、ますます恥ずかしくて仕方がない。叫びたくなるのを抑えていると、カレンがふっと微笑んだ。


「アイラ……あなた、とっても純粋なのね…」

「へっ!?」

「その反応、心が洗われる気分だわ…それだけで顔を真っ赤にするだなんて、あたしにも昔あったなぁ…」

「む、昔!?」


 どこか遠くを見るカレンの目は、懐かしんでいるようだった。アイラはその言葉に愕然としている。


「これは…そんなに騒ぐことじゃないの?」

「そうねぇ。誰かと恋人になればキスだって、それ以上だってするでしょ?抱きしめられるのは序の口っていうか…」

「……キス…」


 アイラは、以前団長室でエルヴィスの顔が近付いて来たことを思い出した。やはりあれは、キスをされそうになったのだろうか。

 無意識に唇を触っているアイラを見て、カレンがニヤニヤと笑みを浮かべている。


「……それにしても、まさかアイラにそんな相手がいたなんてね。アイラに惚れてる男たちは泣くわね~」

「そんな相手、って…恋人とかじゃないわよ?」

「ええ?そうなの?……でも、少なくとも相手はアイラのこと好きよね」

「すっ…、」


 アイラは言葉を失った。カレンが不思議そうにしている。


 ―――エルヴィス団長が?私を??


 熱の籠もった紅蓮の瞳を思い出し、アイラの心臓がドキッと高鳴る。
 同時に、今まで疑問に思っていたことを考えた。


 どうして、見つめられるだけで心臓が跳ねるのか。
 どうして、触れられたところが熱を帯びるのか。
 どうして、他の女性との関係が気になるのか。

 ……どうして、名前を呼ばれると胸がきゅっと苦しくなるのか。


 ―――違う。エルヴィス団長が私を好きなのではなくて、私……私が、エルヴィス団長のことを…。


「……好きなんだわ」


 それは、アイラが恋心を自覚した瞬間だった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...