上 下
31 / 79

31.武術大会⑥

しおりを挟む

 デレクの第三試合の相手は、予想していた通りとなった。


 赤毛の騎士と向かい合うデレクの表情は、緊張が滲んでいる。
 前回の優勝者と知れば、警戒して当然だろう。

 アイラは席に座り、膝の上で両手を握っていた。


 試合開始の合図が出され、デレクと赤毛の騎士が同時に動く。
 二度、三度と剣がぶつかり合う様子を、アイラは瞬きせずに見つめていた。


 デレクの動きは、いつもより少し固い。
 素直なデレクは、普段の訓練でも感情が剣に出やすく、度々フィンに注意されていた。

 本人も分かっているだけに、感情がなかなか抑えられないと嘆いていた。
 けれど、生き生きと戦うデレクは、とても強いことをアイラは知っている。


 デレクの攻撃を、赤毛の騎士は軽く躱していく。背中に羽でも生えているのかと思うほど、軽い身のこなしだった。
 そんな相手を追いかけようと必死に剣を振るデレクを、アイラは見つめている。


 ―――デレク、そのままじゃダメだわ。力任せに剣を振るっても、あの人には届かない―――…。


 アイラが思った通り、そのあとのデレクの剣は、赤毛の騎士に届くことは無かった。
 足元を払われ、尻もちを着くように倒れたデレクの顔の目の前に、切っ先が向けられる。

 悔しそうに表情を歪めたデレクが、降参したのが分かった。


 足をケガしてしまったのか、デレクはそのまま医者が待機している方へとぼとぼ歩き出す。
 平然とした顔で戻って来た赤毛の騎士は、やはりアイラをちらりと見ると、何も言わずに席に着いた。


「………」


 次の試合に勝てば、恐らく赤毛の騎士と対戦することになる。
 正直、勝てる気は全くしなかったが、少しでも納得してもらえる戦いができればいいとアイラは思った。


 第三試合がすべて終わり、第四試合の準備が行われる。その間に、手当てを受けたデレクが戻って来た。


「……デレク!大丈夫?」

「ん、打撲程度だった。……あー、悔しい、負けちまった」


 デレクはドサッとアイラの隣に腰掛けると、天を仰いで嘆く。


「体が強張ってたんだよなぁ。分かってたんだけど、やっぱ強くて焦った……あー悔しい」

「ちゃんと自己分析できてるなら大丈夫、次は負けないわよ」

「ありがとアイラ。……っていうか、あの強さで騎士じゃないってどういうことだ?」


 訝しむように、デレクが赤毛の騎士に視線を送る。アイラもそこが疑問だ。


「……デレク、手当てを受けているとき、エドくんはいた?」

「あー、聞いたらエドは救護室に移ったらしいぞ。そこで休んでるって…行くのを散々ごねてたみたいだけどな」


 アイラさんの試合を見る!と言って騒ぐエドマンドが容易に想像でき、アイラは苦笑した。


「……あとで、お見舞いに行かなきゃね」

「そうだな~…お、準備が終わったみたいだぞ」


 第四試合の準備が整い、アイラはまたデレクと拳を交わしてから闘技場に出た。

 参加者が姿を見せると、観客から大きな声援が上がる。
 大勢いた参加者は、随分と少なくなっていた。勝ち上がっているのは、騎士団の団員が多いように見えるが、一般の参加者もそれなりにいた。第一騎士団の先輩は、一人残っている。


 次のアイラの相手もまた、騎士だった。
 見たことのない騎士だったが、何だか少し様子がおかしいことに気付く。


「―――…」


 顔色が悪く、口元がずっと動いている。何かを呟いているようだ。
 剣を持つ腕はだらりとぶら下がっていて、構える素振りはない。


「………?」


 アイラは眉を寄せ、周囲に視線を走らせる。この騎士だけではなく、同じような状態の参加者が何人かいることに気付いた。

 嫌な予感がした。
 アイラが遠くにいた審判を呼ぼうとしたそのとき、突然目の前の騎士が声を張り上げる。


「―――破壊せよ!」

「!?」


 騎士の手から、大きな光の玉がアイラを目掛けて勢い良く飛んできた。
 とっさに地面を蹴って躱すと、光の玉はアイラがいた場所で爆発する。ドォン、と音が響き、地面が揺れた。

 爆発で起きた強い風で、アイラは耐えきれずに倒れてしまう。


「………っ」


 ドォン、ドォンと四方から爆発音が響いた。同時に、観客の悲鳴が聞こえてくる。

 砂埃が舞い、隙間から光の玉がぶつかった場所が見えた。
 地面がごっそりと抉れており、避けなかったらどうなっていたか、とアイラはぞっとする。


 すると、今度は赤い光が揺れるのが見えた。次の攻撃かもしれないと、アイラは急いで立ち上がる。
 その予想は当たっており、小さな炎の玉が複数アイラに向かって来た。

 しっかりと見極め、丁寧に躱す。剣で斬れるかと試してみたが、無駄だった。
 そのことから分かる。先ほどの光の玉と、今の炎の玉。

 間違いなく―――魔術の攻撃だった。


 どうして、とアイラが思考を働かせる間にも、魔術の攻撃が飛んでくる。
 砂埃が邪魔で、相手の姿が見えないのが厄介だった。


 ―――参加者は、魔力封じの腕輪をしていたはず。それを外した?でも、そんなことをすれば失格だし、自分では外せないようになっていたはずだわ。
 それに、相手の騎士は様子がおかしかった。それは一体どうして…?


 魔術に対抗するには、魔術しかない。それか、対魔術用の剣だ。
 だが、今のアイラにはどちらも使えなかった。せめて外し方が分かれば、と腕輪を見る。


 相手は、先ほどから炎の玉を無数に打ってくる。
 この数なら魔力が切れるのが早そうだが、アイラの体力も無限ではない。
 飛んでくる炎の玉を見極め、ひたすら避けるという動作に、だんだんと疲労が蓄積されていく。

 周囲からは絶えず爆発音と悲鳴が聞こえるが、状況を把握する暇も無かった。


「………っ!」


 一つの炎の玉が、アイラの肩を掠った。ピリッと焼け付くような痛みが走る。
 その瞬間を狙うかのように、炎の玉の後ろから大きな光の玉が迫ってきた。

 アイラは先ほどの抉れた地面を思い出し、体が強張る。


 ―――避けきれないっ…!


 アイラはぎゅっときつく瞼を閉じた。
 けれど、一向に痛みに襲われる気配は無い。


「………?」


 恐る恐る目を開けると、アイラの前に誰かが立っていた。
 その赤毛を見た瞬間、思わず息を飲む。


 ―――どう、して…?


 アイラが呆然としている間にも、炎の玉が飛んできた。それを、赤毛の騎士は驚くことに自らの剣で斬り伏せている。

 その手に握られている剣は、大会用に渡されたものとは違っていた。
 おそらく、対魔術用の剣だと思うが、そもそも対魔術用の剣は希少で、とても高価なものだ。

 それを何故、赤毛の騎士が持っているのか。
 アイラを庇ってくれている目の前の人物に対して、次々と疑問が浮かんでくる。


 別の場所で響いた爆発音に、アイラの思考が中断された。この疑問は、後回しにすることにした。

 アイラが今、できること。それはこの混乱を引き起こしている人物を、止めることだ。


「………騎士さま!」


 アイラが叫ぶと、赤毛の騎士は剣を振るいながらも視線を向けてくれた。


「お願いです、その剣でこの腕輪を壊してください!」

「………」

「私は、補助魔術が使えます!身体強化をして、この魔術を放つ人物を捕らえますので!」


 アイラが腕輪の着いた腕を前に出すと、赤毛の騎士は僅かに動揺を見せた。けれどすぐに、唇を横に結ぶと行動に移す。

 向かってくるの魔術の攻撃を斬り伏せ、次の攻撃までの僅かな隙に、赤毛の騎士はアイラの腕輪を目掛けて剣を振るった。
 見事にヒビが入り、そこから腕輪が壊れて落下する。


 アイラはすぐに魔術を唱え、自身を強化すると地面を蹴った。

 砂埃は変わらず舞っているが、魔術を使えるおかげで相手の居場所を確実に探ることができる。
 相手にそれを悟られるかもしれないが、対策されるよりも早く倒せばいいのだ。


 ―――あそこだわ!


 炎の玉が飛んでくる位置に目星をつけていたため、すぐに相手の居場所が分かった。

 アイラは素早く距離を詰めると、手加減はせずに思い切り剣を振るう。
 剣は相手の銅を捉えた。相手はそのまま飛ばされるように倒れ、ぐったりして動かなくなる。


 普通の剣ならば銅が斬れていただろうが、大会用の剣なので打撲で済むだろう。
 ただ、アイラはいつものように腕も補助魔術で強化していたため、もしかしたら骨が折れてしまったかもしれないが。

 倒れて動かない、対戦相手だった騎士を見ながら、それでも仕方ないとアイラは割り切った。


 この騎士を倒しても、まだ会場内は魔術が飛び交っているようだ。
 こうなる前に様子がおかしい参加者が何人かいたので、その参加者がまだ暴走しているのかもしれない。


 アイラは一度赤毛の騎士の元へ戻ろうとしたが、その必要は無かった。
 焦ったような顔をしたその人が、駆けつけて来てくれたからだ。


「騎士さま、この人は気絶させました。けれど、闘技場内はまだ混乱しています。砂埃のせいで、敵と味方の判別がつきません」

「………」

「警備に魔術師の方もいたはずですが、それならこの事態をすぐにでも収められるはずです。けれど混乱したままということは、何か妨害されている可能性が…」


 早口で話していたアイラは、途中で言葉を区切った。先ほどから一言も、赤毛の騎士は言葉を発してくれない。

 この非常事態でも、口を利くのも嫌なのか、とアイラは途端に悲しくなった。
 問いただしたくなる気持ちをぐっと抑え、努めて冷静に言葉を続ける。


「……とにかく、私と騎士さまで協力して、騒動の根源を倒しましょう。騎士さまの剣が頼りです」


 そう言いながら、アイラが剣を見る。
 惚れ惚れするほど、美しく輝く剣だったが、どこかで見たような気がした。
 けれど、そんなわけがないと視線を赤毛の騎士へ戻す。


「それと、微力ながら私の補助魔術を、騎士さまへ使用してもよろしいですか?」

「………」


 アイラの提案に、赤毛の騎士は初めて口を開いた。けれど、言葉は出てこない。
 眉を下げ、何かと葛藤するように顔を歪ませたあと、静かに頷いた。

 そんなに補助魔術をかけられるのが嫌なのだろうかと、アイラはまた悲しくなる。


 アイラは魔術を唱え始めた。赤毛の騎士へ意識を集中し、なるべく早く補助魔術をかけていく。
 そして、すぐに気付いた。


 ―――待って。この魔力の感覚は…。


 補助魔術をかけ終えると、アイラは信じられない思いで赤毛の騎士を見た。
 どうして?なぜ?という疑問がぐるぐると巡る。

 そんなアイラの視線を受け、赤毛の騎士は全てを諦めたかのように微笑んだ。


「……説明は、あとでさせてもらおう」

「………!」

「君の提案通り、まずはこの混乱を収める。……俺に、ついて来れるか?」


 どうして気付かなかったのだろうと、アイラは思った。
 この声は紛れもなく、聞き覚えのあるものだ。

 アイラは唇を震わせながら、なんとか「はい」と返事をした。
 そんなアイラに、赤毛の騎士は優しく笑う。それは、初めて会ったあの日と同じ笑顔だった。


 赤毛の騎士が走り出し、アイラは後を追う。まずは爆発音が一番響いている場所へ向かうようだ。
 それにしても、砂埃が酷い。まるで、魔術で意図的に起こされているような、そんな気がした。


「……騎士さま!」


 迷った末、アイラは呼び方を変えずに赤毛の騎士を呼ぶ。


「少し乱暴なやり方ですが、魔術で水の塊を作り、雨のように上から降らせます!砂埃が収まれば、周囲がよく見えるはずです!」


 そう言いながら、アイラは既に立ち止まって両手を前に突き出していた。
 魔術を唱え、水の塊を作り出していると、赤毛の騎士がアイラの元へ駆け寄ってくる。

 するりと指を絡められ、ドクンと心臓が高鳴った。


 ―――ああ。ランツ村のときと同じだわ。あのときと同じ、心地良い魔力が体を満たしてくれる…。


 あっという間にアイラの魔力が膨れ上がり、水の塊もどんどんと大きくなっていく。
 その塊を闘技場の上空へと飛ばし、ぎゅっと圧縮させてから、一気に弾け飛ばした。


 ザアッ、と無数の水滴が上空から降り注ぐ。
 砂埃が収まると、すぐに周囲の惨状が目に入った。

 地面の至るところが抉れており、倒れている参加者が複数いる。その中には、第一騎士団の先輩騎士もいた。

 立っているのは数人で、皆びしょ濡れになっており、隙が生じている。
 その中で一人の男性を素早く倒したのは、デレクだった。


「アイラ!あと三人は敵がいる!」


 その叫び声に、赤毛の騎士がいち早く反応した。どう見分けたのか、一人の男性の元へ瞬時に近付くと、みぞおちに剣の柄を打ち込み気絶させる。

 そのとき、一人の男性が闇雲に光の矢を放った。狙いが定められなかったのか、四方八方に散らばっていく。


 何本かは観客席の方に飛んで行き、悲鳴が上がった。けれど、見えない壁によって光の矢は弾かれる。
 おそらく、魔術師が試合開始前に観客席の前にかけていた防護壁の魔術だ。


 観客が防護壁で守られているなら、アイラが守るべきは闘技場内の参加者たちだと判断する。

 赤毛の騎士は、近くの光の矢を剣で薙ぎ払い、次の魔術を唱えようとしている人物へ向かって行った。
 デレクは魔術を避けながら、倒れている参加者を担いで移動させようとしている。


 他のボロボロだが動ける参加者は、逃げるように出入り口へ向かっていた。
 逃げもせず、その場に立ったまま魔術を唱えようとしているのが敵だ。

 赤毛の騎士が今倒そうとしている他に、あと二人いる。


「デレク!倒れている参加者をお願い!」


 アイラはそう叫びながら、近くの一人に向かって駆け出した。
 相手は虚ろな目をアイラに向け、ぶつぶつと魔術を唱えている。その手のひらから、氷の粒が飛んできた。


「………っ、」


 大会用の剣は役に立たないため、アイラはその場に投げ捨てる。
 大きく跳躍すると、魔術を唱えて水の玉を飛ばし、相手の目元を狙ってぶつけた。

 相手は反射的に目を瞑り、魔術が途切れる。目の前に着地したアイラは、みぞおちに肘を入れた。

 相手が崩れ落ちたことを確認してから、アイラは残りの敵を振り返る。
 最後の一人の元に、既に赤毛の騎士が向かっていた。


 赤毛の騎士ならばすぐに倒してくれるだろうと、アイラは僅かに気を緩ませた。

 そこを狙ったのだろうか。
 赤毛の騎士に倒される直前、その参加者はアイラを目掛け、ありったけの魔力を込めた魔術を放った。


 轟々と燃える巨大な炎の玉が、真っ直ぐアイラへ向かってくる。
 命を落としたあの日の記憶が一瞬で蘇り、アイラの体は固まった。


「―――アイラ!!」


 誰かが名前を呼ぶ。辺りを悲鳴が包む。
 アイラの体は濡れているのに、焼け付くような熱さを感じていた。


 ―――ああ…あの日の運命からは、やはり逃れられないんだわ…。



 アイラは冷静にそう思い、全てを諦めたように炎を見つめた。
 けれど、あの日とは違う今の人生で与えられたものが、アイラにはたくさんあった。


 炎の玉が、跡形も無く消える。
 同時にアイラを囲むように、たくさんの人物が姿を現していた。騎士団の仲間たちだ。


「―――…」


 アイラを護ってくれる頼もしい仲間たちが、今の人生にはいる。

 そのことを実感し、アイラの瞳から涙が零れ落ちた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...