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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

684 三度の試用 と 伸びる身長

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 今回はカズの話をちゃんと聞き逃さないようにして、言われた通りやろうと、レラは自分に言い聞かせた。

「最初から倍以上の大きさになろうとしないで。先ずは2、3センチくらいによう(身長が一割のびれば結構違うからな)」

「うん」

「変化がないと思って、最初に自分で決めた以上の魔力を使わないように」

「わかった」

 再度大きさは憧れか欲望かアイテムを左の二の腕に付け、自身の身長が伸びることを想像して願い、魔力を少しずつ流していく。
 レラは飛び回る時に使う程度の魔力を使用して、どの程度大きくなるのか試してみた。
 カズの説明を聞いた限りでは、これで少なくとも1センチ、伸びれば4センチくらいは大きくなると思っていた。

 大きさは憧れか欲望かアイテムに魔力を流してニ分が経過あたりで、レラの体が変化しているのが見て分かるようになった。
 レラ自身も視線が高くなったのに気付き、自然と笑みがこぼれる。
 五分程で変化は止まり、レラの身長は元より8センチも伸びた。

「どのくらい魔力使った? 二割くらいか?」

「飛んでる時くらいだから、一割も使ってないよ」

「俺が使った時より変化が大きいみたいだな。妖精の秘宝を模して作ったアイテムだから、レラと相性が良いのかも」

「この後はどうすればいい。もっと大きくなれるか試してみる?」

「とりあえずその状態で三十分くらい様子を見てみよう。魔力は流さなくていいぞ。アイテムの方が自動で維持する魔力を使用するはずだ。気持ち悪くなったり、変な気がしたら、すぐに外しなよ」

「うん。これくらいなら、いつもみたいに飛べるかな?」

「試してみるなら、五分くらいしてからにした方がいい」

「そうする」

 レラは動きに違和感がないかを確かめていた。
 やっている事は、ただ歩いたり走ったりしているだけなのだが、その表情はなんとなく嬉しそう。
 特に問題なさそうだと感じたレラは、何時ものように半透明な羽に魔力を込め、ふわりと浮かび上がる。
 今度は飛ぶ速度や高度を変えて、違和感がないかを確かめる。
 
「どうだ?」

「いつもと同じだよ」

「魔力が減ってる感じは?」

「それも同じ」

 問題なく使えるのを証明したいからと、無理してるようにも思えないが、一応他の可能性を考えて確認する必要があるとカズは考えた。

「そろそろ下りて来て、一度それを外してみてくれ。今はわからなくても、外したら急に魔力を消費した影響が出るかも知れない」

「そうなの? なら下りるから受け止めて」

「受け止める?」

 ヒュ~んと急降下したレラは、カズの周りをくるりと一周する。

「どーん。へへへ」

 カズの胸に勢い良く飛び込み、見上げた顔はとても楽しそう。
 抱えるレラは大きくなっているので、体重も少しだが重くなっている。
 これが不意打ちで飛び込み、位置が少しでもズレていたら、鳩尾みぞおちに直撃して予想以上のダメージを受けるだろう。
 レラが小さかろうと、魔力を帯びているので、子供の体当たりよりも威力があるので注意が必要なのを忘れてはいけない。

「検証中のアイテムを使ってるんだから、むちゃするなよ」

「このくらい大丈夫だって」

 カズの胸元から地面に下り、レラは大きさは憧れか欲望かアイテムを左の二の腕から取り外すと、伸びた身長は少しずつ縮み元に戻る。

「ダルいとか関節が痛いとかないか?」

 腕や腰や首を回して問題ない事を確かめると、次は背中の半透明な羽を動かしてふわりと浮かび上がり、魔力に関して異常がないかを確認する。

「痛いとかは全然ないよ。魔力はお昼前にやった魔力維持を、十分する方が減る感じかな」

「二、三十分休憩してから、次を試そう。使ったレラの感じだと、どのくらい行けそうだ」

「う~ん……アレナリアくらい。と、言いたいけど、まだ二回目だからさっきの倍くらい?」

「それがいい。隠し部屋の知性ある本インテリジェンス・ブックも少しずつならしていった方が良いって言っ…書いてたからな。その方が負担が少ない。レラ自身の具合いにもよるが、今日は試しても三回までにしよう」

「そんだけ」

「今はなんともないが、あとから来るかも知れないだろ」

「心配してくれてるの」

「何言ってんだ。当たり前だろ」

 自然と出るカズの言葉に、レラは今日一番の笑顔を見せた。
 その後やる気になったレラは、二回目に続き三回目とカズの言うことを聞き、無理せず少しずつ大きさは憧れか欲望かアイテムを慣らしていく。
 三回目を終えようとしたところで、出掛けていたフジが戻って来た。
 カズにはすぐに気付いたが、身長が倍以上になっているレラの姿を見て、不思議そうに首を傾けた。
 レラに起きている事をフジに説明すると「カズが言うならそうなんだ」と、それ以上疑問に思う事なく簡単に受け入れた。
 フジは成長が早いモンスターで、見た目は成体したライジングバードと見間違えそうになるが、まだ生まれて数年しか経ってない子供。
 カズが言うことを疑う事なく聞いてしまうのは、カズに変装した悪人を本人と認識しまった場合、全て言うことを聞いてしまいという事になるので、少々危険だと感じた。
 フジにそのあたりのことも、教えていかなければならないと考えた。
 夕方までレラを休憩させ、帰りに近くのキビ村に移動し、特産の黒糖を大量に仕入れてから帝都の川沿いの家に戻った。

 アレナリアとビワは既に戻って来ていた。
 何時もブロンディ宝石商会に行くと、夕食はブロンディ親子と済ませてくるのだが、今日は客が来るようだったらしく、そうはせずに戻って来たのだと。
 ビワからは、例の場所に行くので明日ビワと共に来るようにと、レオラからの伝言を。
 カズはレラが大きさは憧れか欲望かアイテムを使用した成果と、それについての注意をアレナリアとビワに伝えた。
 アレナリアが「見てみたいわ」と言ってきた。
 レラの体力や魔力に問題がなくても、寝ている時に何か変化があるかも知れないので、カズが却下した。
 夕食後順番に風呂に入り、この日もカズはレラと一緒に三階の小部屋で寝る。
 万が一の場合には、即座に対処できるようにと。


 ◇◆◇◆◇


 深夜何事もなく、静かで穏やかな朝を迎えた。
 起きて寝惚けながら朝食を取るレラの様子から、疲れや魔力の変化は感じられなく、何時もと変わらない様子だった。
 レラ本人も問題はない、と。
 カズはビワと共にレオラの屋敷に行くので、レラの事はアレナリアに任せた。
 くれぐれも大きさは憧れか欲望かアイテムを使用する際は気を付ける事と、無茶な使い方をしないようにと注意をしてレラに渡した。
 少し不安を感じながらも、ビワと共にレオラの屋敷に向かった。

 カズとビワが出掛けてから数十分して「どんな風になるのか見てみたいから、さっそく使って」と、アレナリアがレラに頼んだ。
 レラは前日に試した三回目の大きさになる事にして、大きさは憧れか欲望かアイテムを左の二の腕に装着した。
 少しずつ慣らすようカズに言われていたのを守り、十数分掛けてゆっくりと倍以上の身長になる。

「スゴいわね。本当に大きくなった」

「でしょ。まだ小人族くらいだけど、すぐに使い慣れて、アレナリアを越してやるもん」

「そうなっても長く維持できないのなら、カズとするのは無理よ」

「出来るようになるもん! そしたらバインバインになったあちしの胸で、すんごい事してあげるんだもん。アレナリアには絶対にできないことを」

 レラはにんまりと笑い、アレナリアも対抗して笑うが、頬がピクピクと動いてしまい、平静を保てられてない。
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