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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

682 改装した小屋の強化

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 何時来ても騒音が無く静かで、木漏れ日を見ながらそよ風が頬をすり抜けるのは、とても気持ちが良い。
 獲物を狩に言っているのか、住み家にフジの姿はなかった。
 改装していた小屋に変化はなく、あとは排水をどうするかで止まったままになっている。
 フジが戻って来るまでの間に、レラの魔力操作がどれほどのものか見ることにする。

 基本の魔力操作で使う紙風船が、アイテムボックス内で数個肥やしになっていたのを発見したので、先ずはそれを使うことにする。(何時作ったのかは覚えてない)
 レラからするとかなり大きな紙風船になるので、空気を入れて膨らめるのはカズがする。
 外では風で飛んでいってしまうので、フジが戻って来ても分かるように、フジの寝床に移り始める。
 レラにこれからやる事を教え、膨らめた紙風船を渡した。
 両手で大きく抱え、紙風船に魔力を徐々に流す。
 十数秒すると、紙風船はゆっくりと上昇する。
 数十センチ上昇するのを見て、カズは合図を出し降下させる。
 それを何度か繰り返す。

 次は一定量の魔力を、長時間維持させるのを見る。
 と言っても、安定しているか調べるだけなので、今回は三十分以上持てば良しとすることにした。
 全身に魔力を均等に行き渡らせるより、レラ専用のナイフを使ってやってもらう事にした。
 ただ素振りをするわけでもなく、鞘に納めたまま持っているだけ。
 気を抜くと込めている魔力が抜けてしまうので、慣れていなければ結構集中力がいる。
 何時も訓練で使って慣れているから、これも簡単に出来るとレラは思っていた。
 しかし鞘に納めた見えないナイフに魔力を込めて維持するのが、ここまで大変だとは思っていなかったらしく、表情は時間が経つにつれて険しくなる。

 レラが魔力の維持をしている間に、カズは【アイテムボックス】から入手して大きさは憧れか欲望かアイテムを取り出し、試しに付けて使用してみる事にした。
 形状は指輪にも腕輪にも見える。
 大きさが自動で調節される機能がついているので、指なり腕なり足首なり、自分の使いやすいところに装着すればいい。
 とりあえず左腕を選び付ける。
 指輪サイズだったのが、左腕にはめようとしたら大きくなり、左腕に通すとキツくも緩くもなくピタリとはまった。
 金属製だが動きが阻害されることはなく、重さもこの程度なら、慣れてしまえば特に気にならないだろう。

 集中するレラの気を散らさないよう、視界に入らない位置に移る。
 左腕の大きさは憧れか欲望かアイテムに魔力を少量だけ流し、体が大きくなるかを試す。
 使用した魔力が少な過ぎたのか、一分程待ったが特に変化があったようには思えなかった。
 そこでもう少し魔力を大きさは憧れか欲望かアイテムに流してみた。
 ……やはり変わりはないのかと、左腕に落としていた視線を上げて気付く。
 天井が近くに感じて、手を上げてみると、低い所ならあと少しで届きそうだった、
 ゆっくり変化が表れた事で分からなかったが、十数センチ身長が伸びたらしい。
 なのでこのまま少し様子を見ることにした。

 五分経過して十分が過ぎたところで、もう一度同じ位置で手を上げてみるが、指先から天井までの距離はあまり変わっていなかった。
 大きさは憧れか欲望かアイテムを使用した際の二回だけで、あとは魔力を流してない。
 しかし微量で分かり辛いが、魔力が大きさは憧れか欲望かアイテムに持っていかれてる。
 現状を維持する目的で、装着者の魔力を使用しているようだ。

 今度はこの持っていってる魔力を切って、元に戻るか検証する。
 体感的には分かり辛いが、五分程で元の身長に戻ったと思う。
 最後に大きさは憧れか欲望かアイテムを取り外せるかを試すと、問題なく外す事が出来た。
 ただ使用する前の大きさには戻らなかったので、最後に使用した時のままになるらしい。
 使うのに慣れれば、部分的に巨大化させることが出来るらしいが、今回それはしない。
 身体にどれ程負担が掛かるか不明なので、部分変化はレラにさせないように言っておくことにする。
 今回はこれにて大きさは憧れか欲望かアイテムの検証を終了して、レラの魔力の維持が終わるのを待つ。

 フジはまだ戻って来ず、そよ風で揺れる木々や草花の音が聞こえる。
 カズが大きさは憧れか欲望かアイテム検証を終えてから十数分、自分専用のナイフに魔力を込めるレラの様子が変わる。

「ふぬ~……たはっ! もう無理。これが限界」

 レラは集中力が切れて、地面に大の字で倒れた。

「どうだったカズ。三十分くらいは出来たと思うんだけど」

「スゴいじゃないかレラ。四十五分は維持出来てたぞ」

「マジで! アレナリアとアイりんの所に行ってやった時は、長くても三十分もできなかったのに」

「誰も邪魔が入らなかったのと、真面目にやってきた成果が出たんだろ。レラはそのまま休んでるといい。俺は昼まで小屋の中をいじってる。アイテムを試すのは、昼飯の後にしよう」

「ならちょっと昼寝してるよ」

 レラは日向ぼっこをしながら昼寝をし、カズ小屋の中でちょっとした棚を付けたりと改装をする。
 ただあまり物音を立てないよう、できるだけ静かに作業する。

 一時間と少しで作業を終え、まだ実際に試してなかった事をする。
 これが駄目なら小屋を改装した意味がなくなる。
 何時もは上着の内側や、手近な場所にアイテムボックスを開き、中から物を取り出すか、入れるかしているが、今回はこの小屋を収納できるか試す。
 先ずは改装した小屋を頑丈にするために、皇族の屋敷や国の重要な建造物には、硬化する付与されている。
 それと似たようなスキルがインテリジェンス・ブックアーティファクトの古書に記載されていた《鋼鉄化》の強化スキルを小屋に使う。

 帝国で使っている硬化する効果は、付与する際の魔力量に寄って強度は変わり、これが出来る国お抱え魔法使いや付与師に依頼すると、カズが改装した小屋くらいでも金貨数百枚は掛かる。
 貴族がこれを依頼するとしても高額過ぎて、屋敷は外壁だけで内側まではしない。
 しかしそれは一握りの貴族だけで、他の貴族は移動の際に身を守るために、所有している馬車に付与するくらい。
 それでも金額二百枚2.000.000GLは掛かる。
 一度付与すれば永続的に効果があるというわけではない。
 定期的に効果の状態を調べて、魔力を補給して維持しなければならない。
 付与をした者にも寄るが、効果の持続期間にも差が出る。
 それがどれ程のものなのかは、付与した者しか分からないのかも知れない。
 
 カズは改装した小屋に触れて《鋼鉄化》のスキルを使う。
 試しに多少壊れても、すぐに直せる扉を叩いて確かめる。
 トントン……ドンドン……ガンガン……ドカドカ……シュッ…ドンッ!
 徐々に力を込めて強めていき、最後は拳大の石を投げてぶつけた。
 鋼鉄化というだけあって、石が当たった部分が汚れ、気にもならない程度のかすり傷がついただった。
 レラが寝ているので静かに作業するつもりが、少々五月蝿くしてしまったが、レラが目を覚ますことはなかった。
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