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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

623 魔力操作の抜き打ちテストと指導

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 屋敷の正門前で警備をしていた二人の女性騎士が、カズとアレナリアに気付き一人がカミーリアを呼びに行った。
 正門前で待っている間に「あれから魔力操作の訓練はしてるの?」と、残った一人の女性騎士にアレナリアが話し掛ける。

「たまにしてます。でも、わたしも含め何人かはコツがつかめず。慣れてきてる人もいるんですが」

「まだ数回しか教えてないものね。そうねぇ……アイリス様と会うまでまだ時間もあるでしょうし、これから時間の取れる人を見てあげるわ。あなたは警備をしてるんじゃ無理よね」

「午前中は担当時間なので。残念ながら」

「そう。なら、終わったら見てあげるわ」

「いいんですか?」

「いいかしら、カズ?」

「ああ。用事があるのは、俺だからな。アレナリアは見てやるといいんじゃないか」

「って事だから、あなたは午後ね」

「はい。お願いします」

 女性騎士は嬉しそうに頭を下げて、アレナリアにお礼を言う。
 魔力操作の訓練をする約束をすると、正門を離れた女性騎士がカミーリアを連れて戻る。
 思っていた通りアイリスは書類仕事公務中で、今日の分が終るのは昼頃になるとカミーリアから伝えられた。
 それを聞いたアレナリアが「あなた達がどの程度魔力操作が出来ているか、これか抜き打ちで見させてもらうわ」と言う。

「今から!?」

「ええ、そう。確認して一定以上の基準に達していなければ、これから特別訓練をするけどいいかしら?」

 カミーリアは急な申し出に即答しかねた。
 だがせっかくアレナリアが指導してくれると言うならと、アイリス主人に報告をして、その後警備や決められた仕事をしている者以外の女性騎士に話を伝え、急きょ魔力操作のテストと訓練を始めた。
 
 魔力操作はアレナリアが女性騎士達の主人であるアイリスに頼まれた仕事なので、カズは口を挟まず隅で見学した。
 先ずは魔力を流して操作出来るかを見た。
 一定量の魔力を安定して操作出来る者もいれば、魔力が強弱して不安定になってしまう者もいる。
 次は剣に魔力を込めて維持させる事が出来るかを確認した。
 魔力を安定して操作出来た者でも、維持させる事ができず、霧散させてしまう者が半数以上いた。
 訓練にはカミーリアも参加しており、どちらもそこそこ出来ていた。

「三組に分けるから、カズも手伝って」 

「ん、ああ」

「私は魔力操作する方を見るから、カズは魔力を維持させる方をお願い」

 アレナリアは基礎の魔力操作が不安定な六人を、カズは魔力込めて維持させるのが安定しない三人を指導する。
 カミーリアとどちらも出来る二人は、剣に魔力を込めたまま、限界まで維持させ続ける。

 アレナリアの方は魔力を操作するだけなので、魔力が多く消費する事はないが、カズが見ている者達は、込めた魔力を維持できず霧散させてしまい、魔力をどんどん消費してしまい、すぐにへばってしまう。
 カミーリア達の魔力消費は少ないが、五分以上維持させると、集中力が切れて込めた魔力が不安定になってしまう。
 込めて維持させるだけでこれでは、実際に使用する時には、一分どころか三十秒も無理だろう。

 魔力を消費し過ぎで息の上がった者には、カズが魔力を補給して訓練を続けさせた。
 魔力操作と維持は慣れるしかない。
 これが出来るようになれば、意識せずに魔力消費を抑えて、長時間維持が可能になり戦闘が有利になる。
 それこそ男の騎士と打ち合っても、力負けする事はない。
 相手も同じ様に魔力を込めて剣を振るってくれば別だが、出来るようになって損はない。
 これらが出来るようになれば、次は高速魔力操作。
 剣が当たる瞬間だけに、魔力を瞬時に流して込めれるようになれば、威力は数段上がり防御としても使えるとカズは説明した。
 女性騎士達はレラと違い、真面目に訓練を続け、気が付くと既に二時間以上経過していた。

「がんばっていますね」

 アレナリアとカズが待つ間に、騎士達に魔力操作を教えていると報告を受けていたアイリスが、本日の書類仕事公務を終えて見に出て来た。
 女性騎士は訓練の手を止め、現れたアイリス皇女に頭を下げる。

「もうそんなに時間が経ったのね。ここまでにしましょう。午後も時間はあるから、訓練したい人は見てあげるわ」

 アレナリアの提案に、それならばと半数が訓練を申し出た。
 残り半数は屋敷の警備や他に任務があるので、訓練に参加する事はできないのだと。
 せっかくなら昼食を一緒にと誘われ、男性だけどカズも特別にと、女性騎士達の宿舎で昼食を取る。
 昼食後カズはカミーリアの案内で、アイリスの執務室に移動し、アレナリアは魔力操作の訓練に。
 午前中参加できなかった女性騎士達が数人増え、その中には正門前で警備をしていた女性騎士も来ていた。
 コツがつかめないと言っていた他の女性騎士も来たので、アレナリアは午後から参加した数人を優先的に指導してあげた。

 その頃カズは異空間収納アイテムポケットを付与した品物をアイリスに見せ、収納出来る容量を伝えた。
 刺繍ししゅうが入った布製のショルダーバッグだけは、破損してしまうので付与ができなかったと説明した。

「レオラちゃんのリュックよりは少ないのね」

「無理に容量を増やそうとしたら、バッグが壊れかねませんので、壊さないよう慎重に付与したんです」

「約束は一つだったけど、二つ出来たんですよね。選ばなかった方は、せっかく付与したのに使えなくしてしまうの?」

 アイリスはどちらも欲しいという表情をしていた。
 付与に成功して両方使えるのを確認したカズは、容量の少ない方の付与を解除する事はしなかった。

「入手した経路は内密にしてください」

「もちろん。カズさんの事は伏せて、レオラちゃんから貰った事にしておくわ」

「それをちゃんとレオラ様に説明しておいてくださいよ。あとでどういう事だ、と責められたくはありません」

「大丈夫。話しておくわよ」

「大きく破損したら、収納効果が使えなくなってしまいますので気をつけてください。入っていた物は取り出せなくなりますので、注意してください」

「両方いいのね」

 フジの住み家の登録やらレラの件など、お世話になった事もあり、何時かまた何かあれば力になってもらおうと考えて渡す事にした。

「どうぞ、お納めください」

「ありがとう。さっそく皆に使って慣れてもらうわ。付与できなかったかわいらしいバッグは、カミーリアにあげるわ」

「よろしいのですか?」

「ええ。あなたにお似合いよ。また買い物を頼む時は、それを持ってカズさんと出掛けてくるといいわよ。カズさんが一緒なら、アイテムポケット付与のバッグこちらは必要ないですものね」

 何かにつけてカミーリアとカズをくっつけようとするアイリスの考えは、全く変わっていなかった。
 カミーリアはまた二人で出掛けられればと、少なからず思って、カズを視線をチラリと向けた。
 カズは愛想笑いをしてアイリスの話を聞き流し、カミーリアの視線には気付かないフリをした。
 このまま長居をしたら隣にカミーリアを座らせ、アイリスが侍女と趣味の話をして盛り上がる。
 なんて事にでもなったら、今度は苦笑いをして、アイリスの気が済むまで聞いていなければならない。
 そうなってはたまらないと、カズは早々に退散することにする。

「お約束の物を届けたので、俺はそろそろ失礼して、アレナリアの手伝いとして騎士の方々の訓練を(腐女子の皇女相手はちょっとキツイな。ネタにされてる俺とカミーリアが居る前でも、この二人は平気で話すからな)」

「あ、ちょっと待って」

「な、なんでしょう?」
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