人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

620 本の街での広がる噂

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 レオラは手提げバッグを手に取り、手近にあった花瓶を収納する。
 手提げバッグの口に花瓶をかざすと、花瓶は手提げバッグの中に吸い込まれるように消える。

「これなら、ばあでも重たい物や大きな物を収納しやすい」

「アイテムボックスと同じで、生きてるものは入りません。出し入れは使ってなれてください。出し入れの際に魔力を使いますが、微々たるものなので大丈夫だと思います」

「ちょっと、ばあも使ってみろ」

 レオラは手提げバッグをカーディナリスに渡し、ワゴンに乗っていた飲み物が入った容器や、カップなどを出し入れしてみる。
 出し入れに魔力を消費するとカズから聞いたが、カーディナリスの使う様子から、問題ないとレオラは判断した。

「どうだ、ばあ。このポーチがいいか? それともこっちの手提げバッグが使いやすいか?」

「わたくし自身で使うとしたら、こちらの小さなポーチでしょうか。花の刺繍が気に入りました」

「なら決まりだ。ばあにはこれを、アタシは手提げバッグとリュックを貰う」

「三つですか」

「ちゃんと金は払う。何か問題はあるか?」

「構いませんけど、約束した事を」

「わかっている」

「姫様、わたくしが頂いてよろしいのでしょうか? こちらとても高価な物では」

「ばあが選んだポーチそれ自体は、金貨一枚10,000GLもしないだろ」

 レオラはカズに顔を向け、小物入れポーチの値段を聞く。

「そんなにしません。銀貨六枚6,000GLくらいです。リュックは革製なので少し高く金貨二枚20,000GLで、手提げバッグは銀貨三枚3,000GL弱です」

「聞いたろ。それほど高価な物ではない。そのポーチやこのリュックは、カズ達が買ってきた物だ。そうだろ」

「手提げバッグは俺が適当に選びました。その赤い花柄のポーチはビワが、もう一つはレラが選びました。リュックはアレナリアが」

「このように多くの物を入れる事の出来る特別な物は、それこそ金貨数十枚もするとのだと。知らぬ合間に、デパートでこのような物が、それほど安く売っているとは知りませんでした」

「そうだった! ばあには言ってなかったが、その収納効果は、カズが付与して作ったものだ。だからデパートどころか、魔道具アイテムを取り揃えてる店に行っても、なかなか見る事はないぞ」

「そんなスゴい…わたくしが頂いても、本当によろしいのでしょうか?」

「構わないさ。アタシからのプレゼントだ」

「ありがとうございます。姫様」

「個人の魔力を記録できますので、しておきましょうか。そうすれば記録した以外の人には、ただのポーチでしかありませんから」

「ほう。そんな事も出来るのか。ならこっちも頼むぞ」

「わかってます。ただし記録するには、本人がいないとできません」

 カズはこの場にいない、アスターとガザニアにも使用出来るようには、できないと説明する。

「あとからでも記録は可能か?」

「大丈夫です」

 それを聞いたレオラは、取りあえず革製のリュックには自分とグラジオラスの魔力を、ポーチにはカーディナリスの魔力を、カズに言って記録させた。
 手提げバッグはあえて誰でも使える状態のままにした。
 カズが魔力の記録を終えると、カーディナリスとグラジオラスに、この事は内密にするようにと話した。
 この調子で知る人物が増えていくのではと少し不安はある。
 だがレオラを信じて付与出来る事を教え、その物を与えてしまったのだから、今更考えてもしょうがない。

「もう一つのポーチは、姉上にやりたいが構わないか?」

「いいですよ(だろうと思った)」

「話はしてある。明日にでも持っていってくれ」

「わかりまし…ん? 話してある。もう渡す事が決定してるじゃないですか」

「姉上に話したら、小さな物なら欲しい言ってた。作る際に失敗する事もあるから、どんな物かはわからないと言ってはある。このポーチなら喜ぶだろ」
 
「出来た現物を見てから話してくださいよ。できなかったら、どうするつもりなんです」

「その時は出来るまで作ってくれるだろ」

「また勝手なことを」

「そう言うが、先日地下調査に入ったろ。その時にアタシがやるはずだった書類を姉上に頼んだんだ。その礼は必要だろ」

「そこがアイテムポケットを付与したポーチこれですか」

「調査にはカズが一緒だと知ったら、またフジでの空中散歩で手を打つと言われたが、そっちにするか?」

「そもそもレオラ様の頼みで、地下に行ったんですよね。なんでレオラ様のやるはずだった書類仕事を代わってくれたアイリス様に、俺がお礼をしないとならないんですか?」

「そこはあれだ。カズはアタシの専属冒険者で、一緒に地下調査に行ったんだ。カズが姉上に礼の品を渡してもおかしくないだろ」

「これまた勝手な事を」

「姉上はアタシではなく、カズの方に要求してきたんだ。姉上がカズに要求するとしたら、一つしかないだろ」

 レオラはフジでの空中散歩の事を言っている。

「ハァ…もういいです。用は済んだので、俺はもう行きます」

「そうか。なら、ギルドによって行ってくれ」

「ギルドに? まあ出ついでなので、よってきますよ(何かの依頼かな?)」

 迎えはアレナリアが来るとだけビワに伝え、カズはレオラの屋敷を出て、冒険者ギルド本部に向かった。
 本の街の隠し部屋や地下空間の調査やらで、カズは最近ギルド本部に顔を出していなかったので、行き詰まってる依頼でも言ってくるのではと考えた。

 一ヶ月以上は来てなかった帝都の冒険者ギルド本部の前まで来たカズは、サイネリアと出掛けた件を思い出した。
 サイネリアにパールのネックレスをプレゼントしてから、なんとなく顔を合わせづらくて来てなかったんだと、ギルドに入るのを少し躊躇ためらった。
 覚悟を決めて何時も通り受付に顔を出し、個室へと行きサイネリアが来るのを待つ。
 どうな顔をして会えばいいのだろうかと、少し緊張して落ち着かない。
 そこへ個室の扉が叩かれ、サイネリアが入って来る。

「久しぶりですね。カズさん」

「そうで…だね。レオラ様の頼みで帝都を離れてたもんで(いつもと変わらないや。気にしてたのは、俺だけか)」

「それで地下空間を発見したんですか?」

「もうその情報が回ってるんだ」

「他にも同じ様な地下空間があるとかで、ギルドに調査の依頼が下りてきました。わたしはその後で、レオラ様からお話を聞きました。カズさんが本の街で、その事が書かれた本を見つけたと」

「レオラ様から頼まれてね。色々と図書館とかを回って探してたんだ(隠し部屋の事は話してないみたいだな)」

「本の街のギルドには行かれたんですよね。こちらに確認の連絡が来ましたよ」

「ああ。なんかギルドカードを提示したんだけど、ランクを詐称してるんじゃないかって疑われてね。レオラ様専属の冒険者だと知られて、大変だったよ」

「みたいですね」

「レオラ様が本の街で何をしたか知ってるの?」

「一応は。本の街のギルドではトラウマみたいですからね」

「居たまれなかった。自分で行かずに、俺に行かせた理由がわかったよ」

「レオラ様らしいといえば、らしいですよね。そうそう、あとこんな話を知ってますか。なんでもまた南区の図書館で、利用者が消えていなくなっという噂を知ってますか?」

「へ、へぇそうなんだ。知らなかった。俺が本の街を出た後かな(人の噂もなんとやら。知らないフリしてれば、そのうち忘れ去られるだろ)」

「カズさんが関わってるなんて事ないですよね?」

「知るわけないよ。俺は本を探してたんだから(隠し部屋の事は秘密だから、これは話せないな)」

「そうですよね。毎回カズさんが関わってる事なんて、さすがにないですよね」

「あるわけないよ……」
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