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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
589 図書館巡り 4 タイトルの無い本
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中央図書館から直接運ばれた本は、処分するかどうかの最終判断を、街が管理する五ヶ所の図書館の長が月に一度集まり決定する事になってる。
ただ最近では例の話題が必ず上がり、処分対象の本を最終審査するのが遅れている。
南区の図書館の隣に建つ書庫に運ばれた最終審査を待つ本の減りが遅いのを、南区の図書館司書数人は不思議に思っていた。
中央図書館から運ばれて来る本の数は、ここ数年殆ど変わらない。
なのに今年は最終審査が遅れ、毎月数冊ずつ次の最終審査に持ち越しになり、少しずつ溜まってしまっていた。
南区の図書館を訪れてから一時間半が経ち、カズは案内図がある一階に移動。
すぐ後にビワが来て、レラともその数分後に合流する。
図書館に隣接する食堂兼休憩所で、ビワが作った弁当を出して昼食にする。
午後もカズは図書館内を調べ、ビワとレラはそれぞれ好みの本を探して時間を潰す。
昼食後、二時間を掛けて南区の図書館を四階まで調べたが、やはり隠し部屋があるような空間もなく、そういった仕掛けもなさそうだった。
最初に隠し部屋が見付かったのが、この南区の図書館だったらしいのだが、これでは確かに勘違いやデマだと言われるのも分かる。
しかし隠し部屋から持ち出された証拠があるので、隠し部屋に入るためには、何か決められた方法があるのだと考えた。
今度カズは肩掛け鞄に手に入れて、魔力を込めたままアーティファクトの古書に触れ、館内を歩き回りながら変化がないか調べながら一階に向かう。
四階から三階に移動し、更に二階へと下りる。
ここまで特に変わった事はなく、二階を回っているとビワと不意に目が合い、ちょいちょいと手招きをされた。
「どうしたのビワ?」
「もうちょっと近くに」
他の人達の迷惑になるからと、小声で聞こえる距離まで近付いてとカズに言う。
互いの顔の距離が20センチくらいまで近付くと、ビワが正面の書棚にあるタイトルがない本を指差した。
「この本がどうかしたの?」
「どうとかは分からないんですが、なんか気になるというか……」
「何の本か見た?」
「少しだけ。服などを作る時に使う生地が掲載されてました。古い本なので、これといって珍しい物は何も」
「古いだけで特に珍しくもない本か」
「なんか変なこと言ってごめんなさい」
「いや。……ちょっと俺も見てみるよ」
ビワが気になると言った本に手に取った瞬間、肩掛け鞄に入れてあるアーティファクト古書の魔力が揺らいだように思えた。
気にはなったが確認は後にして、手にした本の中を見る。
パラパラと数頁めくり中を見るが、ビワが言ったようにこれといって変わってるものが載ってるわけではなかった。
「……他に気になった本はあった?」
「ないです。その本もたまたま目に入って、手に取ったんです」
「わかった、ありがとう。一階をもう一度見たら宿に戻ろうと思うんだけど、ビワはどう? まだこの図書館にいたい?」
「結構見れましたので大丈夫です。それにこれ以上長居しては、夕食の時間が遅くなります。そうしたら、レラが機嫌を損ねると思います」
「それはあり得る。じゃあ二十分くらいしたら、一階の案内図の所で」
「はい」
本を書棚に戻すとカズは一階に下りて一回りし、レラを見付けて一緒に案内図の所に移動する。
既に来ていたビワと合流し、三人は南区の図書館を出て、街の中心部分に向かう乗り合い馬車に乗車する。
どの乗り合い馬車に乗車しても、乗客はやはり持っている本を開き読み始めるので、馬車内は紙のめくれる音がするくらいでとても静か。
砂利や草の上を車輪が通過する音や、馬の蹄の音が大きく聞こえてくる。
馬車内で会話を禁止されてる訳ではないが、状況的にどうも会話し辛い。
小声で会話をしても、馬車内では他の乗客に聞こえてしまう。
なので話をする場合は、ビワが仕事で使っているのメモ帳の予備を出し、それに書いてを会話をする事に。
街の中心部分に戻ると二人を宿屋まで送り、夕食に使う食材をビワに聞き、それを【アイテムボックス】から出して渡す。
その後カズは、一人で冒険者ギルドに向かった。
新たな隠し部屋の情報が入ってないかを確かめるのと、ギルドの通信手段を使ってアレナリアから連絡が来てないかを確認するため。
ランクの低い冒険者の場合はそこそこな料金が掛かる。
カズはAランクでアレナリアはBランク、更にはパーティーメンバーなので、余程遠くでもなければ料金は掛からない。
冒険者でなくても利用出来る通信手段だが、利用料金は結構高めになる。
念話を使えばわざわざギルドの通信手段を使う必要はないが、アレナリアがヒューケラと一緒に行動しているので、今回はこの方法で連絡を取る。
緊急の場合は念話で連絡してくるように言ってあるので、アレナリアの心配はしてない。
ギルドに着くと、アレナリアから連絡が来てないかを聞く為に、受付の女性職員の所に行く。
「すいません。クラフトにいる仲間から連絡が来てるか聞きたいんですが」
「冒険者の方ですか?」
「そうです」
「でしたらパーティーを組んでいるならパーティー名と、その仲間の名前を教えてください。それとギルドカードの提示は忘れないで」
少し投げ遣りな仕事をしてる様な態度をする受付の女性職員に、カズは“ユウヒの片腕”と、連絡をして来てる筈のアレナリアの名前を言いギルドカードを渡した。
「……Aランク」
高ランクらしからぬ話し方をするカズと、ギルドカードを交互に見る女性職員は、本人のギルドカードかと少し怪しむ素振りを見せた。
「確認をしますので、少々待って下さい」
「わかりました(あ、言葉遣いを気をつけるんだったっけ)」
「ちょっと離れるから、少しお願い」
受付の女性職員は他の女性職員に仕事を一時的に代わってもらい、カズのギルドカードを持って奥の部屋へと入っていく。
受付の女性職員が戻るまで、カズは掲示板に貼られてる依頼書を見にいく。
一日、二日では隠し部屋に繋がりそうな依頼が出ることはない。
不要となった本の片付けに、本の重さで抜けた床の修理など、本の街ならではの依頼が多い。
今回は日時の制限と、目的があって来たので、依頼を受けたりはしない。
何か役に立ちそうな情報があるかと依頼書を見に来たが、やはりそう簡単には得られたりしなかった。
別に期待をしていた訳ではないので、特にがっかりしたりはしない。
十数分で奥の部屋に行った受付の女性職員が戻り、声色を変えてカズを呼ぶ。
「お待たせして申し訳ありません。何度か確認いたしましたが、カズ様宛の連絡は入っておりませんでした」
いったいこの数分で何があったのかと、カズは女性職員の態度の変わり様に驚く。
それもその筈だった。
受付の女性職員が奥の部屋へと行ったのは、Aランク冒険者のギルドカードが盗難、あるいは偽造されてないかを上司に相談に行っていた。
カズ達パーティーが現在拠点として登録している帝都の冒険者ギルド本部に、上司はAランク冒険者のギルドカードの盗難もしくは偽造について緊急の連絡を入れた。
しかしそのどちらでもないと分かったうえに、レオラ専属の冒険者と知らされたからだった。
「そうですか。二、三日中に連絡があると思うので、また来ます」
「は、はい。承知しました」
緊張して顔が強張る女性職員が居る受付を離れ、カズは冒険者ギルドを出てビワとレラが待つ宿屋に戻る。
ただ最近では例の話題が必ず上がり、処分対象の本を最終審査するのが遅れている。
南区の図書館の隣に建つ書庫に運ばれた最終審査を待つ本の減りが遅いのを、南区の図書館司書数人は不思議に思っていた。
中央図書館から運ばれて来る本の数は、ここ数年殆ど変わらない。
なのに今年は最終審査が遅れ、毎月数冊ずつ次の最終審査に持ち越しになり、少しずつ溜まってしまっていた。
南区の図書館を訪れてから一時間半が経ち、カズは案内図がある一階に移動。
すぐ後にビワが来て、レラともその数分後に合流する。
図書館に隣接する食堂兼休憩所で、ビワが作った弁当を出して昼食にする。
午後もカズは図書館内を調べ、ビワとレラはそれぞれ好みの本を探して時間を潰す。
昼食後、二時間を掛けて南区の図書館を四階まで調べたが、やはり隠し部屋があるような空間もなく、そういった仕掛けもなさそうだった。
最初に隠し部屋が見付かったのが、この南区の図書館だったらしいのだが、これでは確かに勘違いやデマだと言われるのも分かる。
しかし隠し部屋から持ち出された証拠があるので、隠し部屋に入るためには、何か決められた方法があるのだと考えた。
今度カズは肩掛け鞄に手に入れて、魔力を込めたままアーティファクトの古書に触れ、館内を歩き回りながら変化がないか調べながら一階に向かう。
四階から三階に移動し、更に二階へと下りる。
ここまで特に変わった事はなく、二階を回っているとビワと不意に目が合い、ちょいちょいと手招きをされた。
「どうしたのビワ?」
「もうちょっと近くに」
他の人達の迷惑になるからと、小声で聞こえる距離まで近付いてとカズに言う。
互いの顔の距離が20センチくらいまで近付くと、ビワが正面の書棚にあるタイトルがない本を指差した。
「この本がどうかしたの?」
「どうとかは分からないんですが、なんか気になるというか……」
「何の本か見た?」
「少しだけ。服などを作る時に使う生地が掲載されてました。古い本なので、これといって珍しい物は何も」
「古いだけで特に珍しくもない本か」
「なんか変なこと言ってごめんなさい」
「いや。……ちょっと俺も見てみるよ」
ビワが気になると言った本に手に取った瞬間、肩掛け鞄に入れてあるアーティファクト古書の魔力が揺らいだように思えた。
気にはなったが確認は後にして、手にした本の中を見る。
パラパラと数頁めくり中を見るが、ビワが言ったようにこれといって変わってるものが載ってるわけではなかった。
「……他に気になった本はあった?」
「ないです。その本もたまたま目に入って、手に取ったんです」
「わかった、ありがとう。一階をもう一度見たら宿に戻ろうと思うんだけど、ビワはどう? まだこの図書館にいたい?」
「結構見れましたので大丈夫です。それにこれ以上長居しては、夕食の時間が遅くなります。そうしたら、レラが機嫌を損ねると思います」
「それはあり得る。じゃあ二十分くらいしたら、一階の案内図の所で」
「はい」
本を書棚に戻すとカズは一階に下りて一回りし、レラを見付けて一緒に案内図の所に移動する。
既に来ていたビワと合流し、三人は南区の図書館を出て、街の中心部分に向かう乗り合い馬車に乗車する。
どの乗り合い馬車に乗車しても、乗客はやはり持っている本を開き読み始めるので、馬車内は紙のめくれる音がするくらいでとても静か。
砂利や草の上を車輪が通過する音や、馬の蹄の音が大きく聞こえてくる。
馬車内で会話を禁止されてる訳ではないが、状況的にどうも会話し辛い。
小声で会話をしても、馬車内では他の乗客に聞こえてしまう。
なので話をする場合は、ビワが仕事で使っているのメモ帳の予備を出し、それに書いてを会話をする事に。
街の中心部分に戻ると二人を宿屋まで送り、夕食に使う食材をビワに聞き、それを【アイテムボックス】から出して渡す。
その後カズは、一人で冒険者ギルドに向かった。
新たな隠し部屋の情報が入ってないかを確かめるのと、ギルドの通信手段を使ってアレナリアから連絡が来てないかを確認するため。
ランクの低い冒険者の場合はそこそこな料金が掛かる。
カズはAランクでアレナリアはBランク、更にはパーティーメンバーなので、余程遠くでもなければ料金は掛からない。
冒険者でなくても利用出来る通信手段だが、利用料金は結構高めになる。
念話を使えばわざわざギルドの通信手段を使う必要はないが、アレナリアがヒューケラと一緒に行動しているので、今回はこの方法で連絡を取る。
緊急の場合は念話で連絡してくるように言ってあるので、アレナリアの心配はしてない。
ギルドに着くと、アレナリアから連絡が来てないかを聞く為に、受付の女性職員の所に行く。
「すいません。クラフトにいる仲間から連絡が来てるか聞きたいんですが」
「冒険者の方ですか?」
「そうです」
「でしたらパーティーを組んでいるならパーティー名と、その仲間の名前を教えてください。それとギルドカードの提示は忘れないで」
少し投げ遣りな仕事をしてる様な態度をする受付の女性職員に、カズは“ユウヒの片腕”と、連絡をして来てる筈のアレナリアの名前を言いギルドカードを渡した。
「……Aランク」
高ランクらしからぬ話し方をするカズと、ギルドカードを交互に見る女性職員は、本人のギルドカードかと少し怪しむ素振りを見せた。
「確認をしますので、少々待って下さい」
「わかりました(あ、言葉遣いを気をつけるんだったっけ)」
「ちょっと離れるから、少しお願い」
受付の女性職員は他の女性職員に仕事を一時的に代わってもらい、カズのギルドカードを持って奥の部屋へと入っていく。
受付の女性職員が戻るまで、カズは掲示板に貼られてる依頼書を見にいく。
一日、二日では隠し部屋に繋がりそうな依頼が出ることはない。
不要となった本の片付けに、本の重さで抜けた床の修理など、本の街ならではの依頼が多い。
今回は日時の制限と、目的があって来たので、依頼を受けたりはしない。
何か役に立ちそうな情報があるかと依頼書を見に来たが、やはりそう簡単には得られたりしなかった。
別に期待をしていた訳ではないので、特にがっかりしたりはしない。
十数分で奥の部屋に行った受付の女性職員が戻り、声色を変えてカズを呼ぶ。
「お待たせして申し訳ありません。何度か確認いたしましたが、カズ様宛の連絡は入っておりませんでした」
いったいこの数分で何があったのかと、カズは女性職員の態度の変わり様に驚く。
それもその筈だった。
受付の女性職員が奥の部屋へと行ったのは、Aランク冒険者のギルドカードが盗難、あるいは偽造されてないかを上司に相談に行っていた。
カズ達パーティーが現在拠点として登録している帝都の冒険者ギルド本部に、上司はAランク冒険者のギルドカードの盗難もしくは偽造について緊急の連絡を入れた。
しかしそのどちらでもないと分かったうえに、レオラ専属の冒険者と知らされたからだった。
「そうですか。二、三日中に連絡があると思うので、また来ます」
「は、はい。承知しました」
緊張して顔が強張る女性職員が居る受付を離れ、カズは冒険者ギルドを出てビワとレラが待つ宿屋に戻る。
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