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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
542 テイムモンスターと対面する者達
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カミーリアが戻るまでの間に、レラはこそっと部屋を物色しようと、あくどい顔をしてクローゼットの取っ手に手を掛ける。
「勝手に開けるな。怒られるぞ」
「ちょっとだけだから大丈夫」
カズの注意も聞かず、レラはクローゼットを開けて入ろうとする。
そこにカミーリアが慌てて戻って来る。
「あ! やっぱり開けてる」
「だから言ったろ。たまには怒られとけ、レラ」
「なんで止めないの! カズ」
「一応は止めた。ってか、俺なのか」
「そうだ、そうだ! カズがちゃんと止めなかったからだあ」
「レラは三日飯抜きだな」
「なんですとおぉー!」
久々の飯抜きの言葉に、レラは急いでクローゼットから離れ、カミーリアにすがり付き謝る。
そこまで謝られるとは思ってなかったカミーリアは、逆に自分が悪いことをした思い、レラを許してしまう。
そのレラは「にっしっし」と、してやったりと笑い、カミーリアから言質取ったとからね、とカズを見る。
「なぁカミーリア、使ってないガラスビンはあるか? 高さが40センチくらいの」
「食堂にはあるかと」
「ならそのビンを一つ持って来てくれ。レラを放り込んでおくから」
「は? バカじゃないの! そんなことしたら、死んじゃうじゃん!」
「いつまでも小さな子供みたいに言うこと聞かないおバカさんは、いっぺん死んでみてもいいんじゃないか」
「この頭が考え、この口が言うのか!」
レラはカズの頭に取り付き、脳天をポコポコと叩く。
「お仕置きでもビンに閉じ込めるのはかわいそうかと。レラもそんなにカズを叩かなくても」
「いいのいいの、何時もの事だから。どうせあちしが叩いても、全然痛くないんだよ」
「痛くはないが、うるさい」
再度レラの襟を掴み、カミーリアのベッドに頬り投げると、レラはそのまま布団に潜った。
「そろそろ向こうに戻ろう。アイリス様とレオラ様の話が終わっているかもしれない」
「そうですね」
カミーリアの自室を出ようとするカズに「置いてくなッ!」と、布団から飛び出してカズの後頭部にしがみつく。
布団に入られるのなら、レラよりカズの方が…と、駄目と分かってはいてもカミーリアはつい考えてしまう。
屋敷に戻る途中レラが色々な花が植えられた庭を見付け、勝手に見に飛んでいった。
無闇に花を取ったり荒らさなければ、好きに見て良いとカミーリアに言う。
屋敷の客室で待つよりレラは大人しくしてるので、このまま庭に置いてあるベンチに座って時間を潰す事にした。
昼食後に花が咲く庭、ベンチに座りぽかぽか陽気で眠くなるのは、隣に座ったカミーリアも同じだった。
うとうとしていたところに、フジから「『もう行っていいの、カズ?』」と、念話が繋がり眠気が飛び「『もう少しだから、池の近くまで来ててくれ』」と、フジをキビ村近くの仮住まいから呼び寄せた。
「気がないと聞いたが、仲はよさそうじゃないか」
「せっかく良い雰囲気だったのに、レオラちゃんが話し掛けちゃうから」
フジとの念話連絡が切れたところで、レオラがアイリスと共に屋敷から出てきた。
二人がこんなことを言っている原因は、カズが念話でフジと話をしている時に、カミーリアかカズに寄り掛かって寝てしまったからだ。
たまたまそこにレオラとアイリスがやって来て、その光景を見た事で、何か勘違いする発言になった。
「そんなんじゃないです。それと、そろそろフジが来ます。場所はどうします?」
「そうでした。では、お屋敷を出て少し移動しましょう」
アイリスが指定した場所は、池に流れ込む川がある屋敷から数十メール離れた場所。
清んだ水が流れ込む川は、人魚族のアイリスにとってはとても大切。
なので池から川の1キロ上流まで、アイリスの所有地となっており、許可のない者は近付く事が出来ない。
そのため大きなテイムモンスターを連れて来たとしても、大事になることはなく問題ない。
レオラの同行者はアスターとグラジオラスの二人で、計三人。
アイリスの方はお付きの侍女と女性の使用人が一人、カミーリアと他の女性騎士が二人の、計六人。
そこにカズとレラを合わせた十一人は、池に水が流れ込む場所まで歩いて移動する。
川の近くまで移動して十数分が経ち、フジが池の上空までやって来た。
日傘を差すアイリスが顔を出して、下降して来るフジを見る。
だんだんと大きくなるその姿に、目が離せない。
それは一緒に来た侍女や女性騎士、カミーリアやアスターとグラジオラスも同様だった。
フジが地上まで十数メールの位置まで来ると、女性騎士二人は顔を強張らせてアイリスの前に立ち、腰の剣に手を掛ける。
カミーリアとアスターとグラジオラスの三人も、目の前のテイムモンスターに緊張の色が隠せなかった。
ただレオラだけは、地上に降り立ったフジを冷静に観察していた。
腰の剣に手を掛けた二人の女性騎士と、フジの間にカズに入る。
それを見たレオラがフジに触れて、危険はないから警戒を解くよう言い、二人の女性騎士は腰の剣から手を離した。
「レオラちゃんだけズルいわ。わたくしも」
レオラがフジの頭を撫でたのを見て、自分も触れたいと言い出すアイリスに、侍女が危ないから駄目だと制止する。
「レオラちゃんが一緒にいてくれるから大丈夫」
フジか降り立ってから、カズは念話を繋ぎっぱなしにし、レオラが触れる際も頭を下げるようにフジに伝えていた。
アイリスが侍女とやり取りをしている間も、カズはフジに念話で話し掛けている。
「『傘を差しているのがアイリス皇女だ。フジに触りたいらしい。悪いが撫でさせてやってくれ』」
「『いいよ』」
「姉上が触っても大丈夫だな」
「フジはおとなしいから大丈夫です」
「だとさ姉上」
興味津々で触れたいが、やはりモンスターということもあり、アイリスは恐る恐る下げたフジの頭を撫でた。
一度触れて大人しいフジに安心したアイリスは、一緒に来た侍女や女性騎士にも触ってみるように誘う。
侍女は青ざめて遠慮し、女性騎士の二人は騎士の代表としてカミーリアの名を上げる。
「なッ、こんな時だけ私を!」
頭ではカズのテイムモンスターだと理解していても、そう簡単に大きなモンスターを正面から触れられない。
「今度、私がお前達にモンスターを相手にした戦い方を教える。カミーリアだけじゃなく、そっちの二人もフジを正面から触ってみろ」
嫌だと断りたいが、レオラ皇女からの命令では断ることが出来ず、顔をヒクつかせながら少しずつフジに近付いて行く。
「気を抜いているが、二人もだぞ」
自分達は関係ないと、ホッとしていたアスターとグラジオラスにもフジに触ってみろとレオラに言われ、二人も同様に顔を引き攣らせる。
二十分以上の時間を掛けて、五人の騎士は格上のモンスターに初めて触れた。
冷や汗を流し息を荒くした五人を見て、レオラは訓練方法を練りそうと考えた。
全員がなんとか慣れたところで、アイリスがフジに乗り飛んでみたいと言い出す。
当然お付きの侍女は止め、カズも背中に乗るのは危険だからと言い、レオラも許可は出さなかった。
それを分かっていたらしく、アイリスは一緒に来た使用人と騎士二人に、この時の為に取り寄せておいた物を取りに行かせた。
気が進まない様子の三人だったが、仕える皇女に言われて断ることも出来なかった。
アイリスの頼みで何かを取りに行った騎士を待つ間に、カズは用意しておいたバレルボアの肉をフジに与える。
本当にカズの言うことを大人しく聞き、レラと戯れるフジを見て、恐る恐るしていた者達も段々と見慣れてきていた。
「勝手に開けるな。怒られるぞ」
「ちょっとだけだから大丈夫」
カズの注意も聞かず、レラはクローゼットを開けて入ろうとする。
そこにカミーリアが慌てて戻って来る。
「あ! やっぱり開けてる」
「だから言ったろ。たまには怒られとけ、レラ」
「なんで止めないの! カズ」
「一応は止めた。ってか、俺なのか」
「そうだ、そうだ! カズがちゃんと止めなかったからだあ」
「レラは三日飯抜きだな」
「なんですとおぉー!」
久々の飯抜きの言葉に、レラは急いでクローゼットから離れ、カミーリアにすがり付き謝る。
そこまで謝られるとは思ってなかったカミーリアは、逆に自分が悪いことをした思い、レラを許してしまう。
そのレラは「にっしっし」と、してやったりと笑い、カミーリアから言質取ったとからね、とカズを見る。
「なぁカミーリア、使ってないガラスビンはあるか? 高さが40センチくらいの」
「食堂にはあるかと」
「ならそのビンを一つ持って来てくれ。レラを放り込んでおくから」
「は? バカじゃないの! そんなことしたら、死んじゃうじゃん!」
「いつまでも小さな子供みたいに言うこと聞かないおバカさんは、いっぺん死んでみてもいいんじゃないか」
「この頭が考え、この口が言うのか!」
レラはカズの頭に取り付き、脳天をポコポコと叩く。
「お仕置きでもビンに閉じ込めるのはかわいそうかと。レラもそんなにカズを叩かなくても」
「いいのいいの、何時もの事だから。どうせあちしが叩いても、全然痛くないんだよ」
「痛くはないが、うるさい」
再度レラの襟を掴み、カミーリアのベッドに頬り投げると、レラはそのまま布団に潜った。
「そろそろ向こうに戻ろう。アイリス様とレオラ様の話が終わっているかもしれない」
「そうですね」
カミーリアの自室を出ようとするカズに「置いてくなッ!」と、布団から飛び出してカズの後頭部にしがみつく。
布団に入られるのなら、レラよりカズの方が…と、駄目と分かってはいてもカミーリアはつい考えてしまう。
屋敷に戻る途中レラが色々な花が植えられた庭を見付け、勝手に見に飛んでいった。
無闇に花を取ったり荒らさなければ、好きに見て良いとカミーリアに言う。
屋敷の客室で待つよりレラは大人しくしてるので、このまま庭に置いてあるベンチに座って時間を潰す事にした。
昼食後に花が咲く庭、ベンチに座りぽかぽか陽気で眠くなるのは、隣に座ったカミーリアも同じだった。
うとうとしていたところに、フジから「『もう行っていいの、カズ?』」と、念話が繋がり眠気が飛び「『もう少しだから、池の近くまで来ててくれ』」と、フジをキビ村近くの仮住まいから呼び寄せた。
「気がないと聞いたが、仲はよさそうじゃないか」
「せっかく良い雰囲気だったのに、レオラちゃんが話し掛けちゃうから」
フジとの念話連絡が切れたところで、レオラがアイリスと共に屋敷から出てきた。
二人がこんなことを言っている原因は、カズが念話でフジと話をしている時に、カミーリアかカズに寄り掛かって寝てしまったからだ。
たまたまそこにレオラとアイリスがやって来て、その光景を見た事で、何か勘違いする発言になった。
「そんなんじゃないです。それと、そろそろフジが来ます。場所はどうします?」
「そうでした。では、お屋敷を出て少し移動しましょう」
アイリスが指定した場所は、池に流れ込む川がある屋敷から数十メール離れた場所。
清んだ水が流れ込む川は、人魚族のアイリスにとってはとても大切。
なので池から川の1キロ上流まで、アイリスの所有地となっており、許可のない者は近付く事が出来ない。
そのため大きなテイムモンスターを連れて来たとしても、大事になることはなく問題ない。
レオラの同行者はアスターとグラジオラスの二人で、計三人。
アイリスの方はお付きの侍女と女性の使用人が一人、カミーリアと他の女性騎士が二人の、計六人。
そこにカズとレラを合わせた十一人は、池に水が流れ込む場所まで歩いて移動する。
川の近くまで移動して十数分が経ち、フジが池の上空までやって来た。
日傘を差すアイリスが顔を出して、下降して来るフジを見る。
だんだんと大きくなるその姿に、目が離せない。
それは一緒に来た侍女や女性騎士、カミーリアやアスターとグラジオラスも同様だった。
フジが地上まで十数メールの位置まで来ると、女性騎士二人は顔を強張らせてアイリスの前に立ち、腰の剣に手を掛ける。
カミーリアとアスターとグラジオラスの三人も、目の前のテイムモンスターに緊張の色が隠せなかった。
ただレオラだけは、地上に降り立ったフジを冷静に観察していた。
腰の剣に手を掛けた二人の女性騎士と、フジの間にカズに入る。
それを見たレオラがフジに触れて、危険はないから警戒を解くよう言い、二人の女性騎士は腰の剣から手を離した。
「レオラちゃんだけズルいわ。わたくしも」
レオラがフジの頭を撫でたのを見て、自分も触れたいと言い出すアイリスに、侍女が危ないから駄目だと制止する。
「レオラちゃんが一緒にいてくれるから大丈夫」
フジか降り立ってから、カズは念話を繋ぎっぱなしにし、レオラが触れる際も頭を下げるようにフジに伝えていた。
アイリスが侍女とやり取りをしている間も、カズはフジに念話で話し掛けている。
「『傘を差しているのがアイリス皇女だ。フジに触りたいらしい。悪いが撫でさせてやってくれ』」
「『いいよ』」
「姉上が触っても大丈夫だな」
「フジはおとなしいから大丈夫です」
「だとさ姉上」
興味津々で触れたいが、やはりモンスターということもあり、アイリスは恐る恐る下げたフジの頭を撫でた。
一度触れて大人しいフジに安心したアイリスは、一緒に来た侍女や女性騎士にも触ってみるように誘う。
侍女は青ざめて遠慮し、女性騎士の二人は騎士の代表としてカミーリアの名を上げる。
「なッ、こんな時だけ私を!」
頭ではカズのテイムモンスターだと理解していても、そう簡単に大きなモンスターを正面から触れられない。
「今度、私がお前達にモンスターを相手にした戦い方を教える。カミーリアだけじゃなく、そっちの二人もフジを正面から触ってみろ」
嫌だと断りたいが、レオラ皇女からの命令では断ることが出来ず、顔をヒクつかせながら少しずつフジに近付いて行く。
「気を抜いているが、二人もだぞ」
自分達は関係ないと、ホッとしていたアスターとグラジオラスにもフジに触ってみろとレオラに言われ、二人も同様に顔を引き攣らせる。
二十分以上の時間を掛けて、五人の騎士は格上のモンスターに初めて触れた。
冷や汗を流し息を荒くした五人を見て、レオラは訓練方法を練りそうと考えた。
全員がなんとか慣れたところで、アイリスがフジに乗り飛んでみたいと言い出す。
当然お付きの侍女は止め、カズも背中に乗るのは危険だからと言い、レオラも許可は出さなかった。
それを分かっていたらしく、アイリスは一緒に来た使用人と騎士二人に、この時の為に取り寄せておいた物を取りに行かせた。
気が進まない様子の三人だったが、仕える皇女に言われて断ることも出来なかった。
アイリスの頼みで何かを取りに行った騎士を待つ間に、カズは用意しておいたバレルボアの肉をフジに与える。
本当にカズの言うことを大人しく聞き、レラと戯れるフジを見て、恐る恐るしていた者達も段々と見慣れてきていた。
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