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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
529 二つの驚き、成長速度 と 終えた採取依頼
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大峡谷から東に道無き荒野を移動し、日が暮れる前に〈ストーンウォール〉を使い強風を防ぐための四方を囲む石壁を作る。
焚き火をして自分とフジの夕食を用意して、食べながら話をした。
先ずフジが母親のマイヒメから離れて、カズを探しに来たのは、マイヒメがフジがひとりでも生きていけるよう鍛る為だと。
マイヒメとフジの親子と会わなくなって二年くらいは経つだろう? 70センチ程とカズの腰くらいだったのが、今では倒したワイバーンとほぼ同じくらの大きさになっていた。
翼を最大まで広げると、肉付きのいいワイバーンよりも大きく見える。
やはりフジもモンスター、短期間で成熟した大きさまで成長するのが早いのだろうとカズは考え、この時脳裏には産まれたばかりの馬や牛が、その日の内に立ち上り歩く姿が浮かんでいた。
フジが念話を使って話しているということは、カズがスキルを付与し、テイムモンスターの証明である、オリーブ王国の王都冒険者第2ギルド登録のバードリングを装備しているからだ。
しかしフジの脚にはバードリングは無い。
例えあったとしても、バードリングに大きさを自動で調整する機能はなかった。
なのでバードリングが脚に食い込むか、強度を越えて壊れるのどちらかの筈だと、カズはフジに問い掛けた。
するとフジが嘴で柔らかい羽毛の中から、そのバードリングを取り出した。
バードリングには紐が通され、それはフジの首にかけてあった。
なんでもキツくなって脚から抜けなくなり壊れる前に、白真に言われて王都の冒険者第2ギルドマスターの、フローラ・クラルス・ナトゥーラの所に行き、このようにしてもらったのだと。
脚の大きさに合わせて新しくする提案もあったらしいのだが、主が作り付けてくれた物のままでいいと、フジが言ったらしい。
フジと話が出来てるのは、バードリングに付与された念話によるものなのだから、新しくしては話ができなくなるとフローラはすぐに気付き、今のように頑丈な紐を通して、フジから離さないようにしてくれたのだと。
フジも飛ぶ際は、羽毛の下に紐とバードリングを潜らせて、落とさないように注意しているのだと言う。
「大きさを調整して脚に付けるか? それとも、そのままにするか?」
「『落としたら困るから、前みたいに脚に付いてる方がいい』」
「わかった」
カズはフジのバードリングを受け取り《錬金術》と《加工》のスキルを使い、大きくして形状を変えて、一部に伸縮性のある革を加えた。
「今度のは革の部分が伸びるから、すぐに使えなくなって事はないだろ。それと、今居るこの帝国のギルドに、フジを登録する必要があると思うんだ。でないと、討伐対象にされてしまうかも知れない」
「『バードリング付けてるのに?』」
「バードリングは王国で登録した時のだ。問題が起こってからでは遅いから、ギルドに話してみるつもりだ」
「『別にいいよ。お母さんに言われた通り、あるじに会えたから』」
「その主っていうの、やっぱり慣れないな。俺を呼ぶ時は名前にしてくれ。マイヒメもそう呼んでたろ」
「『カズ? わかった。カズ』」
ビワの手料理が食べたくて、早々と帝都中央に戻ろうと思っていたが、思いがけないフジとの再会から、この日はフジと一緒に野宿する事になった。
テイムしているフジに乗って、移動したとサイネリアへの言い訳が出来たので、丁度良いタイミングの再会だったと、カズは思った。
◇◆◇◆◇
翌朝ストーンウォールで作った風避けの壁を《解除》し、フジの背にうつ伏せで乗り、地上から肉眼では認識出来ないくらいの高度まで上昇して、帝都中央へと向かい飛行する。
見覚えのある裁縫と刺繍街バイアステッチを、アッという間に通過して、眼下の先には魔導列車最西端の駅があるクラフトの街が、すぐそこに見えていた。
このまま飛び続けると、昼前には帝都中央に着く速度だ。
「そんなに速く飛ばなくてもいいんだぞ。フジ」
「『そんなに速く飛んでないよ』」
「だったらもうちょっとゆっくり飛んでくれ(これで速く飛んでるつもりはないのか)」
「『わかった』」
フジが速度を落とし、カズに指示された眼下に見える魔導列車の線路を目印に飛行すること三時間、帝都の中央駅が見えた。
「急に帝都にフジが姿を現したら大変だから、人気のない場所で待っててくれ。悪いが呼ぶのは日が暮れてからになる」
「『暗くなったら、この辺りまで来ればいい?』」
「そうしてくれ。念話で呼ぶから」
「『わかった。カズをどこに降ろせばいいの』」
「俺はここで降りるから大丈夫だ」
フジの背から飛び降りて、飛翔魔法の〈フライ〉を使用する。
帝都中央の冒険者ギルド本部目指して降下していくと、帝都上空の一部の景色が歪んでいるように見えた。
が、今は気に留めずに、冒険者ギルド本部近くの、人気のない路地裏にゆっくりと着地する。
誰にも見られてない、という確信はないので、誰かがこの路地裏に来る前に、急ぎギルド本部へと入るカズ。
ギルドに入って来たカズに気が付いた受付の女性職員が、書類に目を通しているサイネリアの肩を叩き、ギルドの出入口の方を指差す。
「えッ!」
現在資源の潤沢ダンジョンに向かっている、もしくは早ければ到着している筈のカズがそこに居り、次の瞬間二人の視線が合わさる。
目を見開いたサイネリアは早足で受付から出ると、カズの鼻先に立てた左手の人差し指一本を突き付ける。
「なんでこんな所にいるんですかッ!」
ギルド内で大きな声を出さないように、サイネリアは体が密着するくらいまでカズに近付いた。
声を押さえながらもその言葉からは、焦りと怒りが感じと取れた。
それは当然の事だ。
無理に頼んだとはいえ、国からの大事な採取依頼を受けた本人が、何故かここ帝都中央の冒険者ギルド本部に居るのだから。
あまりの出来事からか、サイネリアは自分の胸をカズに強く押し当てているのに気付いてない。
声を押さえているサイネリアの話が聞こえるほどギルド内は静かというわけではないが、明らかに様子のおかしいサイネリアを、そこに居る半数の者が見ていた。
「なんでと言われても、頼まれ…」
「そうです! 時間の限られた大事依頼を頼んだんですよッ! なんでまだ出発してないのよッ! 今からでも急いで行きなさいッ!」
カズの言葉を遮って、サイネリアの口調は荒くなり、無理だとしても力ずくでギルドの外に出そうと、顔をカズの胸に埋めながら全身で押す。
サイネリアが全力で押しても、カズはびくともしない。
ただサイネリアの足が後ろに滑るだけ。
抱き付く形でカズを押すサイネリアの胸は更に変形し、服が乱れて少しだけ開いた服の正面上部(胸元)から、胸の谷間がカズには見えていた。
ただしサイネリアの埋まる顔があるので、見えるのは顔を動かした時に本の一部だけ。
下着と衣服があれど、胸の柔らかい感触はハッキリと伝わってきていた。
「早く行きなさいよッ!」
「あの、だから終わって戻って来たんです」
「早く行き……はひ?」
カズの言った事が理解できず、サイネリアは押す力を抜いて、埋めた顔を上げてカズを見る。
お互いに顔を見合う今の状況を端から見ると、長年会っていなかった恋人と再会したかのよう。
「すみませんが、とりあえず離れてもらえませんか。その、胸が当たって……」
カズは自分が悪くはないと思ってはいるが、胸の感触を味わい谷間をガン見してしまった罪悪感から、つい丁寧な口調で話してしまう。
我に返ったサイネリアは、今の自分が何をしているのか気付き、顔を赤くしてサッとカズから離れ、乱れた衣服を整える。
「し、失礼しました。それで、なんでしたっけ?」
「頼まれた素材採取が終わったので、その報告を」
「そうですか。終わられたんですか。……はい? 終わ…え、えェェェ!!」
突然の大声がギルド一階に響き渡り、その場に居た全員が二人に目を向けた。
このままここで注目を浴び続けるのはごめんだと、カズは面食らっているサイネリアを背中を押して、そそくさと逃げる様にして、何時も使う小部屋へと階段を上がり向かった。
焚き火をして自分とフジの夕食を用意して、食べながら話をした。
先ずフジが母親のマイヒメから離れて、カズを探しに来たのは、マイヒメがフジがひとりでも生きていけるよう鍛る為だと。
マイヒメとフジの親子と会わなくなって二年くらいは経つだろう? 70センチ程とカズの腰くらいだったのが、今では倒したワイバーンとほぼ同じくらの大きさになっていた。
翼を最大まで広げると、肉付きのいいワイバーンよりも大きく見える。
やはりフジもモンスター、短期間で成熟した大きさまで成長するのが早いのだろうとカズは考え、この時脳裏には産まれたばかりの馬や牛が、その日の内に立ち上り歩く姿が浮かんでいた。
フジが念話を使って話しているということは、カズがスキルを付与し、テイムモンスターの証明である、オリーブ王国の王都冒険者第2ギルド登録のバードリングを装備しているからだ。
しかしフジの脚にはバードリングは無い。
例えあったとしても、バードリングに大きさを自動で調整する機能はなかった。
なのでバードリングが脚に食い込むか、強度を越えて壊れるのどちらかの筈だと、カズはフジに問い掛けた。
するとフジが嘴で柔らかい羽毛の中から、そのバードリングを取り出した。
バードリングには紐が通され、それはフジの首にかけてあった。
なんでもキツくなって脚から抜けなくなり壊れる前に、白真に言われて王都の冒険者第2ギルドマスターの、フローラ・クラルス・ナトゥーラの所に行き、このようにしてもらったのだと。
脚の大きさに合わせて新しくする提案もあったらしいのだが、主が作り付けてくれた物のままでいいと、フジが言ったらしい。
フジと話が出来てるのは、バードリングに付与された念話によるものなのだから、新しくしては話ができなくなるとフローラはすぐに気付き、今のように頑丈な紐を通して、フジから離さないようにしてくれたのだと。
フジも飛ぶ際は、羽毛の下に紐とバードリングを潜らせて、落とさないように注意しているのだと言う。
「大きさを調整して脚に付けるか? それとも、そのままにするか?」
「『落としたら困るから、前みたいに脚に付いてる方がいい』」
「わかった」
カズはフジのバードリングを受け取り《錬金術》と《加工》のスキルを使い、大きくして形状を変えて、一部に伸縮性のある革を加えた。
「今度のは革の部分が伸びるから、すぐに使えなくなって事はないだろ。それと、今居るこの帝国のギルドに、フジを登録する必要があると思うんだ。でないと、討伐対象にされてしまうかも知れない」
「『バードリング付けてるのに?』」
「バードリングは王国で登録した時のだ。問題が起こってからでは遅いから、ギルドに話してみるつもりだ」
「『別にいいよ。お母さんに言われた通り、あるじに会えたから』」
「その主っていうの、やっぱり慣れないな。俺を呼ぶ時は名前にしてくれ。マイヒメもそう呼んでたろ」
「『カズ? わかった。カズ』」
ビワの手料理が食べたくて、早々と帝都中央に戻ろうと思っていたが、思いがけないフジとの再会から、この日はフジと一緒に野宿する事になった。
テイムしているフジに乗って、移動したとサイネリアへの言い訳が出来たので、丁度良いタイミングの再会だったと、カズは思った。
◇◆◇◆◇
翌朝ストーンウォールで作った風避けの壁を《解除》し、フジの背にうつ伏せで乗り、地上から肉眼では認識出来ないくらいの高度まで上昇して、帝都中央へと向かい飛行する。
見覚えのある裁縫と刺繍街バイアステッチを、アッという間に通過して、眼下の先には魔導列車最西端の駅があるクラフトの街が、すぐそこに見えていた。
このまま飛び続けると、昼前には帝都中央に着く速度だ。
「そんなに速く飛ばなくてもいいんだぞ。フジ」
「『そんなに速く飛んでないよ』」
「だったらもうちょっとゆっくり飛んでくれ(これで速く飛んでるつもりはないのか)」
「『わかった』」
フジが速度を落とし、カズに指示された眼下に見える魔導列車の線路を目印に飛行すること三時間、帝都の中央駅が見えた。
「急に帝都にフジが姿を現したら大変だから、人気のない場所で待っててくれ。悪いが呼ぶのは日が暮れてからになる」
「『暗くなったら、この辺りまで来ればいい?』」
「そうしてくれ。念話で呼ぶから」
「『わかった。カズをどこに降ろせばいいの』」
「俺はここで降りるから大丈夫だ」
フジの背から飛び降りて、飛翔魔法の〈フライ〉を使用する。
帝都中央の冒険者ギルド本部目指して降下していくと、帝都上空の一部の景色が歪んでいるように見えた。
が、今は気に留めずに、冒険者ギルド本部近くの、人気のない路地裏にゆっくりと着地する。
誰にも見られてない、という確信はないので、誰かがこの路地裏に来る前に、急ぎギルド本部へと入るカズ。
ギルドに入って来たカズに気が付いた受付の女性職員が、書類に目を通しているサイネリアの肩を叩き、ギルドの出入口の方を指差す。
「えッ!」
現在資源の潤沢ダンジョンに向かっている、もしくは早ければ到着している筈のカズがそこに居り、次の瞬間二人の視線が合わさる。
目を見開いたサイネリアは早足で受付から出ると、カズの鼻先に立てた左手の人差し指一本を突き付ける。
「なんでこんな所にいるんですかッ!」
ギルド内で大きな声を出さないように、サイネリアは体が密着するくらいまでカズに近付いた。
声を押さえながらもその言葉からは、焦りと怒りが感じと取れた。
それは当然の事だ。
無理に頼んだとはいえ、国からの大事な採取依頼を受けた本人が、何故かここ帝都中央の冒険者ギルド本部に居るのだから。
あまりの出来事からか、サイネリアは自分の胸をカズに強く押し当てているのに気付いてない。
声を押さえているサイネリアの話が聞こえるほどギルド内は静かというわけではないが、明らかに様子のおかしいサイネリアを、そこに居る半数の者が見ていた。
「なんでと言われても、頼まれ…」
「そうです! 時間の限られた大事依頼を頼んだんですよッ! なんでまだ出発してないのよッ! 今からでも急いで行きなさいッ!」
カズの言葉を遮って、サイネリアの口調は荒くなり、無理だとしても力ずくでギルドの外に出そうと、顔をカズの胸に埋めながら全身で押す。
サイネリアが全力で押しても、カズはびくともしない。
ただサイネリアの足が後ろに滑るだけ。
抱き付く形でカズを押すサイネリアの胸は更に変形し、服が乱れて少しだけ開いた服の正面上部(胸元)から、胸の谷間がカズには見えていた。
ただしサイネリアの埋まる顔があるので、見えるのは顔を動かした時に本の一部だけ。
下着と衣服があれど、胸の柔らかい感触はハッキリと伝わってきていた。
「早く行きなさいよッ!」
「あの、だから終わって戻って来たんです」
「早く行き……はひ?」
カズの言った事が理解できず、サイネリアは押す力を抜いて、埋めた顔を上げてカズを見る。
お互いに顔を見合う今の状況を端から見ると、長年会っていなかった恋人と再会したかのよう。
「すみませんが、とりあえず離れてもらえませんか。その、胸が当たって……」
カズは自分が悪くはないと思ってはいるが、胸の感触を味わい谷間をガン見してしまった罪悪感から、つい丁寧な口調で話してしまう。
我に返ったサイネリアは、今の自分が何をしているのか気付き、顔を赤くしてサッとカズから離れ、乱れた衣服を整える。
「し、失礼しました。それで、なんでしたっけ?」
「頼まれた素材採取が終わったので、その報告を」
「そうですか。終わられたんですか。……はい? 終わ…え、えェェェ!!」
突然の大声がギルド一階に響き渡り、その場に居た全員が二人に目を向けた。
このままここで注目を浴び続けるのはごめんだと、カズは面食らっているサイネリアを背中を押して、そそくさと逃げる様にして、何時も使う小部屋へと階段を上がり向かった。
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