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四章 異世界旅行編 3 セテロン国
389 安価な防寒着 と ギルドでの聴取
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ミルキーウッドの樹液が取れる森は、セカンドキャニオンより気温が低いと聞いたアレナリアは、昼食前にいった服屋に戻り、一般的な防寒着を人数分買ってから宿に戻ってそれをカズに渡した。
「これ、俺の?」
「そうよ。それでこっちが私とビワの分。レラのは大きさがないから、そこはまたビワに作ってもらうわ」
「コートに付与した暖房機能じゃ寒い?」
「そうじゃないの。十分暖かいわよ。ただこのコートだけだと人の目を引くのよ」
「買ってきた防寒着に比べれば目立つかも知れないけど、そこまで派手じゃないと思うけど」
アレナリアが購入してきたのは、街でも着ている人をよく見かけるほど手軽な金額で買える、とてもポピュラーな防寒着。
『モコモコシープ』と言われ、寒い場所を好む毛の多い羊、その毛が使われている。
昔は野生のモコモコシープを捕まえ毛を刈っていたが、今は専門で放牧している村があり、一定量の毛を入手出来るため、安価で買いやすく、数多く出回るようになっていた。
その毛を詰めて作られた厚い目の上着は、軽く保温性に優れており、コストパフォーマンスとても文句なし。
と言っても中には寒冷の耐性がある獣やモンスターの毛皮を使い、中にモコモコシープの毛を詰めた高価な物もあったりもする。
街人が着ているような物は銀貨五枚(5,000GL)から八枚(8,000GL)が一般的だが、高価な物になると金貨十枚(100,000GL)なんて物もある。
「これから先もっと冷えると、コートだけじゃ寒そうに見えるのよ。派手どうこうじゃなくて、薄着に見えて目立つの」
「ああ、そういうことか」
「一応、コートの上から着れる大きさのを買ったけど」
「いいんじゃないか。街で見かけた人の中にも、コートの上から着てたからな。室内に入ったら防寒着を脱げばいいんだし、人目のない所なら、今まで通りコートだけで良いだろう」
「ええ」
「明日レラの分を作りますね」
「どれくらいで出来そう?」
「早くても二、三日でしょうか」
「別に急いでる訳でもないから、ゆっくり作ってくれていいわよ。ギルドからの呼び出しもまだだしね」
「あ、そうそう。ギルドから使いの人来たっけ。明日来てくれってさ」
「そうなの。わかった。行くのは私一人だけ?」
「俺も行こう。卵と樹液採取の依頼がないか、依頼書を見ておきたいから。レラがプリンプリンとうるさいからさ」
「ビワとレラだけで留守番させて大丈夫?」
「ギルドから紹介された宿だから大丈夫だろうけど、一応部屋には防御結界を掛けていくよ」
「あちしもプリンの材料探しに出掛けたい~」
「レラの服を作るんだから、明日はビワと一緒に留守番してなさい。お昼には戻って来れると思うから」
仕方がないと承諾して、レラはビワと留守番することにした。
夕食を済ませると、ビワはレラ用の防寒着を作るため、買った小さい防寒着一枚を分解しだす。
残念ながら街で防寒着の材料だけを買うことが出来なかったので、レラ用の防寒着を作るには、縫ってある糸を切り、生地と中の綿を分ける必要があった。
手間は掛かるが、街に滞在中ビワは特にやることがないので、手持無沙汰にならずちょうど良かったかも知れない。
◇◆◇◆◇
カズは出掛ける直前に、勝手に外を出歩かないようにとレラに言い、宿泊する部屋に〈バリア・フィールド〉を使用し、アレナリアと共に宿屋を出て冒険者ギルドに向かった。
「レラ、採寸するからコート着て」
「採寸するのにコート着るの?」
「コートの上から着るようにするからよ。昨夜アレナリアさんが言ってたでしょ」
「そんなこと言ってたような、言ってなかったような」
「レラらしいわね。とりあえず測らせて」
「寒くないんだから、あちしはコートのままで良いのに。上から着てコート隠すなんて、ダサダサじゃない?」
「ならレラは、その上にコート着る?」
レラは厚着の上着を着た上から、オーバーコートを着る自分を思い浮かべ、ぶくぶくと太っているように見えるのが嫌だった。
なので黙ってビワの言う通りに採寸され、その後ビワの縫い物を見ながら、時折自分の要望を言ってたりしていた。
一方宿屋を出たカズとアレナリアは、冒険者ギルドの近くで〝春風の芽吹き〟の姿を見つけた。
四人はま二人に気付いていない。
声は聞こえないが、タルヒとノースが何やら言い合っているのが見えていた。
「どうせ呼ばれた先は同じなんだ、ギルドで会うんだから待つ必要ないだろ」
「今朝も魔力操作がうまくいかなかったからって、苛立たなくてもいいでしょ」
「それはノースの方だろ。オレより先に魔力操作の訓練方法を教えられて、未だに魔力を纏えないんだろ」
「リーダーはそんなんだから、友達出来ないんだよ」
「てッ、ノースおまえ」
「二人共やめないか! アレナリアさん達が来たぞ」
頬を膨らませて明後日を向くノースと、気まずそうに頭をぽりぽりと掻くタルヒ。
アレナリアが喧嘩の理由を聞くと、タルヒとノースに代わりルクリアがそれに答え、アレナリアはそれを聞いて呆れた。
「ギルドでの話したって、状況報告でしょ」
「おそらくは」
「なら昼前には終わるわね。その後で魔力操作の訓練見てあげるわよ」
喜びもあったが、厳しくされるのだと感じたノースは、手放しで喜べなかった。
「ってことだから」
「わかった。俺は貼ってある依頼書を見たり、情報収集してから宿に戻るよ」
「私も日が暮れる前には戻るわ」
この日の予定を決めると、六人は冒険者ギルドに入っていった。
〝春風の芽吹き〟とアレナリアの五人は、ギルド職員の案内で三階の一室に案内された。
カズは依頼書の貼ってある掲示板を見て、コロコロ鳥の卵とミルキーウッドの樹液に関する依頼がないかを探す。
〝春風の芽吹き〟とアレナリアが通されたのはギルドの会議室。
部屋の中央には長方形のテーブルがあり、その回りに椅子が十数脚並べられている。
ギルド職員四人と通された五人が左右に別れ、向かい合って座る。
先ず最初にギルド職員から、三日も待たせたことへの謝罪の言葉が出た。
大船スカイクラウドと渡船の調査と、船員や乗客からの話を聞いていたとの事だった。
本来は国が調査に動くだろうが、帝都から距離があるため、今回は冒険者ギルドが代行して動いているのだと。
そして今回は、問題となったワイバーンと戦闘をして、見事討伐をした五人に話を聞きたいと呼ばれた。
話はアレナリアと〝春風の芽吹き〟を代表してリーダーのタルヒが、ワイバーンを目撃した時の状況から討伐に至るまでの話をすることになった。
話が始まると、途中途中ギルド職員からの質問が五人に投げかけられた。
最初の内の質問は、先に話を聞いていた船員や乗客からの話と照らし合わるため。
自分達の都合の良いように嘘を言ってないかを調べていた。
これはアレナリアや〝春風の芽吹き〟だけではなく、先に話を聞いていた渡船の船員と大船スカイクラウドの船員が、乗客の豪商や貴族に買収され、お互い口裏を合わせていないか確めるためでもあった。
アレナリアと〝春風の芽吹き〟がワイバーンを倒したという功績を、わざわざ無駄にしてまで嘘はつかないだろうとギルド職員は考えていた。
そのためワイバーンを討伐した五人の話は信用性があると考えていた。
無論全員の話が噛み合わなければ疑われることはあるが、それはアレナリアや〝春風の芽吹き〟に向くのではなく、他の者になるだろう。
だが話が大きく違うことはなく、現状を見てないギルド職員でも、当時の有り様が手に取るように解ったので、ワイバーンが現れてから襲われるまでについての聴取は終わった。
続けてワイバーンとの戦闘の話に移った。
一通りワイバーンを倒し切るまでの話を聞いたギルド職員四人は、一言「少し失礼する」と言い、一同会議室を退室して、部屋の外で相談しだす。
ほんの五分程で相談を終えて会議室に戻って来ると、代表者のギルド職員が咳払いをして、アレナリアだけに質問をした。
「話を聞いた結果、パーティーや個人のランクからして〝春風の芽吹き〟だけでワイバーンを倒すのはほぼ不可能と判断した」
実力をつけてきたパーティーに対して悪いと思ってはいたギルド職員達だが、それはそれとして、ハッキリと感じたことを口にした。
「別に気にしないさ。オレ達も実際にそう思ってる」
気にしないと口では言うものの、面と向かって言われるのは、流石に少し傷つくタルヒだった。
「これ、俺の?」
「そうよ。それでこっちが私とビワの分。レラのは大きさがないから、そこはまたビワに作ってもらうわ」
「コートに付与した暖房機能じゃ寒い?」
「そうじゃないの。十分暖かいわよ。ただこのコートだけだと人の目を引くのよ」
「買ってきた防寒着に比べれば目立つかも知れないけど、そこまで派手じゃないと思うけど」
アレナリアが購入してきたのは、街でも着ている人をよく見かけるほど手軽な金額で買える、とてもポピュラーな防寒着。
『モコモコシープ』と言われ、寒い場所を好む毛の多い羊、その毛が使われている。
昔は野生のモコモコシープを捕まえ毛を刈っていたが、今は専門で放牧している村があり、一定量の毛を入手出来るため、安価で買いやすく、数多く出回るようになっていた。
その毛を詰めて作られた厚い目の上着は、軽く保温性に優れており、コストパフォーマンスとても文句なし。
と言っても中には寒冷の耐性がある獣やモンスターの毛皮を使い、中にモコモコシープの毛を詰めた高価な物もあったりもする。
街人が着ているような物は銀貨五枚(5,000GL)から八枚(8,000GL)が一般的だが、高価な物になると金貨十枚(100,000GL)なんて物もある。
「これから先もっと冷えると、コートだけじゃ寒そうに見えるのよ。派手どうこうじゃなくて、薄着に見えて目立つの」
「ああ、そういうことか」
「一応、コートの上から着れる大きさのを買ったけど」
「いいんじゃないか。街で見かけた人の中にも、コートの上から着てたからな。室内に入ったら防寒着を脱げばいいんだし、人目のない所なら、今まで通りコートだけで良いだろう」
「ええ」
「明日レラの分を作りますね」
「どれくらいで出来そう?」
「早くても二、三日でしょうか」
「別に急いでる訳でもないから、ゆっくり作ってくれていいわよ。ギルドからの呼び出しもまだだしね」
「あ、そうそう。ギルドから使いの人来たっけ。明日来てくれってさ」
「そうなの。わかった。行くのは私一人だけ?」
「俺も行こう。卵と樹液採取の依頼がないか、依頼書を見ておきたいから。レラがプリンプリンとうるさいからさ」
「ビワとレラだけで留守番させて大丈夫?」
「ギルドから紹介された宿だから大丈夫だろうけど、一応部屋には防御結界を掛けていくよ」
「あちしもプリンの材料探しに出掛けたい~」
「レラの服を作るんだから、明日はビワと一緒に留守番してなさい。お昼には戻って来れると思うから」
仕方がないと承諾して、レラはビワと留守番することにした。
夕食を済ませると、ビワはレラ用の防寒着を作るため、買った小さい防寒着一枚を分解しだす。
残念ながら街で防寒着の材料だけを買うことが出来なかったので、レラ用の防寒着を作るには、縫ってある糸を切り、生地と中の綿を分ける必要があった。
手間は掛かるが、街に滞在中ビワは特にやることがないので、手持無沙汰にならずちょうど良かったかも知れない。
◇◆◇◆◇
カズは出掛ける直前に、勝手に外を出歩かないようにとレラに言い、宿泊する部屋に〈バリア・フィールド〉を使用し、アレナリアと共に宿屋を出て冒険者ギルドに向かった。
「レラ、採寸するからコート着て」
「採寸するのにコート着るの?」
「コートの上から着るようにするからよ。昨夜アレナリアさんが言ってたでしょ」
「そんなこと言ってたような、言ってなかったような」
「レラらしいわね。とりあえず測らせて」
「寒くないんだから、あちしはコートのままで良いのに。上から着てコート隠すなんて、ダサダサじゃない?」
「ならレラは、その上にコート着る?」
レラは厚着の上着を着た上から、オーバーコートを着る自分を思い浮かべ、ぶくぶくと太っているように見えるのが嫌だった。
なので黙ってビワの言う通りに採寸され、その後ビワの縫い物を見ながら、時折自分の要望を言ってたりしていた。
一方宿屋を出たカズとアレナリアは、冒険者ギルドの近くで〝春風の芽吹き〟の姿を見つけた。
四人はま二人に気付いていない。
声は聞こえないが、タルヒとノースが何やら言い合っているのが見えていた。
「どうせ呼ばれた先は同じなんだ、ギルドで会うんだから待つ必要ないだろ」
「今朝も魔力操作がうまくいかなかったからって、苛立たなくてもいいでしょ」
「それはノースの方だろ。オレより先に魔力操作の訓練方法を教えられて、未だに魔力を纏えないんだろ」
「リーダーはそんなんだから、友達出来ないんだよ」
「てッ、ノースおまえ」
「二人共やめないか! アレナリアさん達が来たぞ」
頬を膨らませて明後日を向くノースと、気まずそうに頭をぽりぽりと掻くタルヒ。
アレナリアが喧嘩の理由を聞くと、タルヒとノースに代わりルクリアがそれに答え、アレナリアはそれを聞いて呆れた。
「ギルドでの話したって、状況報告でしょ」
「おそらくは」
「なら昼前には終わるわね。その後で魔力操作の訓練見てあげるわよ」
喜びもあったが、厳しくされるのだと感じたノースは、手放しで喜べなかった。
「ってことだから」
「わかった。俺は貼ってある依頼書を見たり、情報収集してから宿に戻るよ」
「私も日が暮れる前には戻るわ」
この日の予定を決めると、六人は冒険者ギルドに入っていった。
〝春風の芽吹き〟とアレナリアの五人は、ギルド職員の案内で三階の一室に案内された。
カズは依頼書の貼ってある掲示板を見て、コロコロ鳥の卵とミルキーウッドの樹液に関する依頼がないかを探す。
〝春風の芽吹き〟とアレナリアが通されたのはギルドの会議室。
部屋の中央には長方形のテーブルがあり、その回りに椅子が十数脚並べられている。
ギルド職員四人と通された五人が左右に別れ、向かい合って座る。
先ず最初にギルド職員から、三日も待たせたことへの謝罪の言葉が出た。
大船スカイクラウドと渡船の調査と、船員や乗客からの話を聞いていたとの事だった。
本来は国が調査に動くだろうが、帝都から距離があるため、今回は冒険者ギルドが代行して動いているのだと。
そして今回は、問題となったワイバーンと戦闘をして、見事討伐をした五人に話を聞きたいと呼ばれた。
話はアレナリアと〝春風の芽吹き〟を代表してリーダーのタルヒが、ワイバーンを目撃した時の状況から討伐に至るまでの話をすることになった。
話が始まると、途中途中ギルド職員からの質問が五人に投げかけられた。
最初の内の質問は、先に話を聞いていた船員や乗客からの話と照らし合わるため。
自分達の都合の良いように嘘を言ってないかを調べていた。
これはアレナリアや〝春風の芽吹き〟だけではなく、先に話を聞いていた渡船の船員と大船スカイクラウドの船員が、乗客の豪商や貴族に買収され、お互い口裏を合わせていないか確めるためでもあった。
アレナリアと〝春風の芽吹き〟がワイバーンを倒したという功績を、わざわざ無駄にしてまで嘘はつかないだろうとギルド職員は考えていた。
そのためワイバーンを討伐した五人の話は信用性があると考えていた。
無論全員の話が噛み合わなければ疑われることはあるが、それはアレナリアや〝春風の芽吹き〟に向くのではなく、他の者になるだろう。
だが話が大きく違うことはなく、現状を見てないギルド職員でも、当時の有り様が手に取るように解ったので、ワイバーンが現れてから襲われるまでについての聴取は終わった。
続けてワイバーンとの戦闘の話に移った。
一通りワイバーンを倒し切るまでの話を聞いたギルド職員四人は、一言「少し失礼する」と言い、一同会議室を退室して、部屋の外で相談しだす。
ほんの五分程で相談を終えて会議室に戻って来ると、代表者のギルド職員が咳払いをして、アレナリアだけに質問をした。
「話を聞いた結果、パーティーや個人のランクからして〝春風の芽吹き〟だけでワイバーンを倒すのはほぼ不可能と判断した」
実力をつけてきたパーティーに対して悪いと思ってはいたギルド職員達だが、それはそれとして、ハッキリと感じたことを口にした。
「別に気にしないさ。オレ達も実際にそう思ってる」
気にしないと口では言うものの、面と向かって言われるのは、流石に少し傷つくタルヒだった。
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