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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影

292 根掘り葉掘りと

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 王妃との話しを終えたカズは、トラベルスパイダーの頼みを果たすべく、自室に居るルータの元へと向かった。
 部屋には執事のジルバも居たので、ルータと共に同行してもらうことにした。
 マナキ王から話を聞いていたのか、カズが転移魔法を使うことが知られていたので、移動手段を隠す必要もなかった。
 一応他言無用とは伝えたが、意味をなすかは分からない。
 カズが〈ゲート〉を使用して、先に王都の東にある砂漠手前の森へと移動した。
 【マップ】と〈サーチ〉を使い、トラベルスパイダーを見つけると、ルータとジルバを連れてトラベルスパイダーと会わせた。
 ルータがトラベルスパイダーと会うと、以前に一度だけ会った事があると分かった。
 そのため話は順調に進み、ルータはトラベルスパイダーの願いを聞き入れた。
 あとは王都のどこにトラベルスパイダーを住ませ、危険ではないように管理をしていくかということだった。
 カズはまた怒られそうだと思いながらも、フローラに頼んで見ることをルータに提案した。
 するとルータ自らが、第2ギルドマスターのフローラに正式な依頼をすると言う。
 住み場所や受け入れ方法が決まるまで、トラベルスパイダーにはこのままこの森で待ってもらうことにして一旦別れた。
 屋敷に戻ったルータは、フローラ宛に手紙を書くと、それをカズに届けるよう頼んだ。
 カズは第2ギルドへと行き、ルータからの手紙をフローラに渡した。
 初めは苦い顔をしていたフローラだったが、貴族からの正式な依頼では断れず、ルータ宛に方法を模索するので、時間がほしいと返事を書いてカズに持たせたのだった。

 ギルドを出たカズは屋敷に戻る前に、一度倉庫街にある家に行くことにした。
 レラは朝から子供達にぜがまれていたので、屋敷に残って相手をしてあげるように言って置いてきた。
 三ヶ月近くも家を空けていたので、庭には雑草が大量に生えていた。
 家の中を見て回ったが、特に盗られたり荒らされた様子はなかった。
 家を空ける前に、侵入者から魔力を多く吸収する設定にしてあったので、例え入って来たとしても、長居することは出来なかったのだろう。
 家の所有者であるカズは、地下の部屋に転移をし、台座にある水晶に触れて魔力を流して、部屋に溜まったほこりと庭の雑草を取り除いて家の設定を変更した。
 
 家をいつでも住める状態にしたカズは、街で適当に昼食を済ませてから、ルータ宛の手紙を渡すためオリーブ・モチヅキ家へとゲートを使い戻ることにした。
 街と貴族区を繋ぐ門から入らないのは、あれからまだ二日しかたってないので、門を警備する衛兵にカズが無罪になった情報が入ってる分からず、少し不安だったからだ。(そんな事はないと思うが)
 屋敷に戻ったカズは、ルータに手紙を渡すとビワとレラを探した。
 王妃とその子供達は、昼食を済ませたあと城に戻ったようで、既に屋敷には居なかった。
 子供達の相手をして疲れたのか、レラはビワと一緒にメイド達の休憩室で休んでいた。
 二人を見つけカズは声を掛けた。

「ビワの邪魔してるんじゃないだろうな。レラ」

「してないもん。お子ちゃまの相手は疲れたから、ここで休んでるんだけだもん」

「そうか、それはお疲れさん。ところで二人が良ければ、リアーデに行こうと思ってるんだけど」

「キッシュの所? 記憶が戻ったか確かめるのに」

「それもあるけど、借家の大家さんにお詫びをしてこようかと思って。急に出て来て迷惑をかけたから」

「そういうことなら、私は行きたいです。手紙を残したけれど、直接あってお礼も言いたいです」

「じゃあ決まりね。マーガレットさんの許可が出れば、俺はいつでもいいから」

「私、奥様に話してきます」

「あちしも言いに行く」

 レラはビワと一緒に、マーガレットの元へ外出許可をもらいに行った。
 二人が戻るのを椅子に座り待っていると、キウイとミカンが休憩室にやって来た。

「カズにゃん発見にゃ」

「他に誰も居ないから、これはちょうどいいね。とりあえずミカンは飲み物入れるね」

「にゃちきは熱くないので頼むにゃ」

 テーブルを挟んでカズの向かい側に座るキウイ、ミカンは三人分のハーブティを入れ、それを出すとキウイの隣に座りカズを黙って見る。

「な、何かな? ミカン」

「カズお兄ちゃん。どんな感触だった?」

「感触……なんの話?」

「カズにゃんがビワと、熱っ~いキスをした話にゃ」

「……ッ! それを誰…レラだな」

「カズにゃんはにゃちきじゃなくて、ビワを選んだのかにゃ」

「選ぶって何さ」

「ねぇねぇ、どんな味だった? 酸っぱい? 甘い? 大人の味?」

「そうやってミカンは。どうせマーガレットさんが読んでる本の影響でしょ」

「それもあるけど、ミカンももう17歳だから、大人の感覚が知りたいの」

 誰から教わったのか知らないが、わざとらしく不慣れにも悩ましげ表情を浮かべ、カズに上目遣いでお願いするミカン。
 お互い椅子に座っているのに、そこで上目遣いをすると、睨んでるように見えなくもないんじゃないかとカズは思ったが、ミカンには黙っていた。

「男の俺より、横に居る同性のキウイに聞いた方がいいんじゃない」

「そこでにゃちきにふるのかにゃ! そういう話は、カズにゃんの方が詳しいに決まってるにゃ」

「いやいや、俺は遊び人じゃないから」

「にゃちきだってそうにゃ」

「あ~あ。カズお兄ちゃんには、もうミカンの色仕掛けは通用しないか」

「元々ミカンの色仕掛けに惑わされた覚えはないんだけど。それに大人ならそういう質問を軽々しくするもんじゃないと思うけど」

「じゃあミカンはまだ子供でいいや。だからキスの味だけ教えて」

「子供にはまだ早い。そうだろキウイ」

「にゃちきに同意を求めないでほしいにゃ」

「だ、そうだ。ミカン(よし、うまく話を流せたぞ。これでこの話は終わるだろ)」

 話の対象をキウイに移して、ミカンの話を終わらせることができたと思ったカズは、自分の前に置いてあるハーブティの入ったカップを手に取り口に運んだ。

「ふ~ん。それてビワお姉ちゃんとキスしたとき舌は入れたの?」

「ブッは! ゴホッゴホッ」

 ミカンからの思いもよらぬ返しに、カズは口に含んだハーブティを吹き出した。

「カズにゃん汚いにゃ」

「こ、ごめん。ミカンがいきなり変なこと言うから」

「かわいい妹の質問に答えてくれないの? カズお兄ちゃん」

「誰が誰の妹なのさ。そういう冗談はよくない思うよ。他の人が聞いたらどう思うか」

「それは大丈夫だよ。他にこんな話するのは、奥様とメイドの皆だけだから。あ、でもメイド長には話さないよ。怒られちゃうから」

「待った待った。なんで女性だけの中に、男の俺が入ってるのさ」

「だってほらね、男の人の意見も聞きたいから。それにこんなこと話せるの、カズお兄ちゃんしかミカンには居ないの」

「……キウイなんとか言って」

 カズはキウイに助けを求める。

「駄目だにゃミカン」

「いいぞキウイ。ミカンに言ってやって」

「いいかにゃ。詳しい話はビワが来てから聞くにゃ」

「そうそうビワが来てから……なんですと!」

「カズにゃんはにゃちきじゃなくて、ビワを選んだにゃ。だったらビワにも話を聞くにゃ」

「そんことはしなくていいから」

 珍しく大人しくしていたキウイだったが、ミカンと一緒になって、ここぞとばかりに。

「二人でにゃちきの実家まで行って、義理の親両親にも紹介したのに、にゃちきは遊ばれてるにゃ。ぐすん」

 キウイは目元に手を当てて、態とらしく泣く真似をした。

「カズお兄ちゃんのすけこまし。何股かけてるの? は! まさかミカンもその一人に」

「ミカンにそんなことしないから。それにすけこましってどこで覚えたのさ」

「大丈夫にゃ。にゃちきはカズにゃんが何股かけてても。だからいつでも会いに来てにゃ。美味しい物をいっぱい持って」

「本音が駄々もれだぞキウイ。それにだ、キウイの実家に行ったのは、ナツメとグレープっを送って行ったからだろ。誤解を招く言い方やめてくれ」

「そうだったかにゃ~」

 そっぽを向いて知らないふりをするキウイ。

「二人はカズさんに申し訳ないと思っているんですよ」

 声のする方に顔を向けると、三人の声を聞き付けたアキレアが休憩室に入ってきた。

「俺、二人に何かされました?」

「冷たい態度で接したからだと思いますよ」

「冷たい態度? あ、俺のことを忘れていた時の。あれには原因があるから、二人が気にすることないんだよ。もちろんアキレアも」

「私はついでですか」

「いや、そういう訳じゃ……」

「冗談です」

「……」

「カズさんがこう言ってくれてるんだから、二人は気持ちを切り替えるように。でなけれは、カズさんにご奉仕でもしたらいいんじゃないかしら」

「ご奉仕かにゃ? ……にゃふふふ」
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