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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影

290 奥手な孫と積極的な祖母

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「そう……これで満足かしら、

「なんだ寂しいのかい? なら子種でも貰っておきな」

「……なッ! なんでそうなるのよ!」

「何を恥ずかしがってんだい。強い男の子種なら欲しいと思うもんだろ。300歳を過ぎてるのに一人も子供を作らないから、駄目なんだよ。平和な時代というなら、幾らでも作れば良いのに」

「すぐそういう話をする」

「なんだ嫌なのかい? だったらカズ、私に子種を残してくかい」

 カズの肩に手を回し、胸を押し付け、顔に吐息を吹き掛けるアイア。 

「歳はかなり離れてるが、体ならフローラにも負けないよ。テクなら経験の違いを感じさせてやるから」

「な、な、な、何をやってるのおばあちゃん! ギルドマスターの部屋で止めてよ!」

 両手で机をドンと叩き、立ち上がったフローラが、赤い顔をしてアイアを怒鳴る。

「ここでなければいいんだね。じゃあ仮眠室でやろうかカズ」

「いや、それは、ちょっと」

「なんだ、こんないい女の誘いを断るのかい。それとも私じゃ満足させられないとでも?」

「そうは言ってないんですが……」

「だったら良いだろ。危険人物扱いしたお詫びだと思ってくれればいいさ」

「フローラさん……」

 フローラを見て助けを求める。
 くっついているアイアを引き離し、カズの腕を引き寄せるフローラ。

「もうッ! そんなに男に飢えてるなら、街に行って探してくればいいでしょ」

「フローラには関係ないさね。カズが嫌じゃなければ、構わないだろ」

「カズさんは駄目! おばあちゃんの毒牙にかけるわけにはいかないの。カズさんもハッキリと断りなさい」

「俺にその気はないので。すいませんが他を当たってください」

「だって。分かったなら、カズさんには手を出さないの」

「あの、それでフローラさん」

「何よ」

「そろそろ離れてくれませんと、その…胸が……(柔らかい)」

 アイアを引き離してカズを強く引き寄せた事で、装備を外し薄着になったフローラの胸の谷間に、カズの腕が挟まれた状態になっていた。
 服の上からでも、柔らかく弾力のあるフローラの胸の感触が、挟まれた腕にしっかりと伝わる。

「きゃ、ごめんなさい」

「い、いえこちらこそ(まだ感触と温もりが……)」

「奥手だか積極的だか、わからない娘だね」

 顔を赤くながら、ゆっくりと定位置の椅子に座るフローラ。
 カズはボーッと突っ立って、フローラの胸の余韻を感じていた。

「私が冒険者をしてた頃なんて、強敵と戦った日は戦闘の熱が冷めず寝れなくて、疲れ果てるまでやったもんだがね」

「だからそういう話は止めてよ。おばあちゃんの時代と違うんだから。お母さんもそういう話は嫌がってたでしょ」

フローラあんたの母親も奥手だったからね。私の血を引いてるのに、なんでだか」

 カズに近付き耳打ちをするアイア。

「旅に出る前に一度でいいから、フローラの所へ夜這いに行きな。気付かれても、カズなら力ずくで。私が許すよ」

「夜這…し、しませんよ」

「おばあちゃん!」

「はぁ、なんだいカズも奥手なのかい。こりゃあフローラの子は、またまだ見れないようだね」

「今日はもう解散。これ以上おばあちゃんと話してると、私おかしくなっちゃう」

「そりゃあどうなるか、面白そうじゃないか」

「面白くない!」

「じゃ、じゃあ俺はオリーブ・モチヅキ家に戻ります。急に出て来てしまったので〈ゲート〉」

 一足先に二人の前から姿を消すカズ。

「ほう。あれがカズの使ってる転移かい」

「ほらおばあちゃんも一旦宿屋に戻るなりして。他の話は明日にでも」

「しょうがないね、分かったよ。久し振りに来たんだ、街でも散策して男でも引っ掛けるか」

「もう勝手にして」

「そうするよ。あんたも寝る前に、独りで慰めたりもしたいだろ」

「早く出て行けこのババァ!」

「明日また来るよ」

 フローラに怒鳴られたアイアは、第2ギルドから街へと男あさりに向かった。

「はぁ……モルトに重要な書類以外は、回さないでもらってよかったわ。起きたらそれだけはやらないと」

 フローラは仮眠しへと移動すると、簡易ベッドに横になった。
 相当疲れが溜まっていたらしく、すぐに寝てしまった。
 カズがアイアが言葉を真に受けて寝込みを襲っても、すぐには起きないくらいの深い眠りにフローラは入っていた。

 オリーブ・モチヅキ家の庭へとゲートを使い移動したカズは、屋敷の外に停められた馬車と、その近くで話す執事とメイドの姿が目に入った。
 二人の方へと歩いて行くと、カズに気が付いた二人が声を掛ける。

「おやカズ殿」

「急に呼び出しがあり、王城に出掛けられたと聞いたのですが、戻られたんですね」

「ええ。お城での用件は済んだんですが、他にやることができてしまい、それを終わらせてから戻ってきたんです。レラもこちらに預けっぱなしですから」

「カズさんが戻られたら、奥様がお話があると仰っていたので、とりあえずお屋敷の中へどうぞ」

「マーガレットさんが?」

わたくしは馬車を移動させますから、アキレアはカズ殿を奥様の元まで案内を」

「はい。カズさんを御案内しましたら、すぐに戻って参ります」

「そうしてください」

「では参りましょうか。カズさん」

「はい(この後、誰か来るのかな?)」

 カズをマーガレットの居る部屋へと案内したアキレアは、先程居た屋敷の入口へと戻って行く。
 
「お久し振りですね。カズさん」

「お久し振りです。ルータさん。今回は色々と、こちらに御迷惑をお掛けして」

「何を言いますか。カズさんの頼みならば、我が家はいつでも」

「ありがとうございます」

「妻やメイド達から話は聞きました。ルマンチーニが原因で、国を危機にさらしたと」

「そうなんですが、取り憑かれ洗脳されてた訳ですから、あまり攻め立てても」

「妻を呪いで苦しめたのもそうだと」

「確かのようです。しかしそれをどこで?」

「フリートと一緒に来たの。父親がやったことを謝罪したいって」

「それでマーガレットさんは?」

「私はもうこの通り元気だからって言って、許してあげたわ」

「息子ドセトナはともかく、ルマンチーニは許さんよ、私は。カズさんも衛兵本部に投獄されて、食事もまともに与えられなかったとか」

 いつも温厚なルータだが、珍しい不機嫌な顔をしている。

「よく御存知で。牢に入れられてたのは、二十日間くらいですかね。食べ物に関してはアイテムボックスが使えたので、こっそりとバレない程度に食べてましたから平気でした。それにもう終わった事ですし、後は国の判断に任せます」

「カズさんも酷い目にあってきたのに、許すって言ってるのよ。だからあなたも許してあげましょう」

「……百歩譲っても、国の裁定次第。重い罰なら許すことを考えるとしよう」

「今日はやけに頑固ね」

「大事な家族を…マーガレットを苦しめたんだ。そう簡単には許せない」

「嬉しいわ。ありがとう。あ・な・た」

 ルータの言葉を聞いて、笑みがこぼれるマーガレット。

「そうだわ。エビネさんだけど、フリートが来たからホップさんの所に連れて行ってもらったの。うちのメイドになるかは、二人で相談して決めてもらうように」

「働いてくれると思いますが、ルータさん的には?」

「私は別に構わないよ。例えトリモルガ家で働いてたって、エビネ彼女には関係ないからね。それはそれこれはこれだ。それに私はトリモルガ家が嫌いな訳ではなく、ルマンチーニと馬が合わないから嫌いなんだ」

 それは良かったと、ホッと胸を撫で下ろすマーガレットとカズ。

「そうだカズさん、妻から話を聞きましたよ。モンスターが王都で働きたいとか」

「ええ、そうなんですよ。なんでも以前に人と交流してたとかで、言葉も通じます」

「どんなモンスターなんですか? 危険は本当にないんですか?」

「危険がないとは言い切れません。もしルータさんと働くのであれば、何かしらの契約をして、危害を加えないようにしませんと。ちなみに、トラベルスパイダーという3m程の蜘蛛のモンスターです。いざとなったら、ジルバさんが本気を出せば倒せるはずです(ステータス的には)」

「トラベルスパイダーですか……一度会ってみたいです」

「本当ですか! それなら明日にでも連れてきます」

「そうして…いや、聞いた話の現状からすると、モンスターを連れて来るのは不味いですね」

「あぁ……それもそうか(俺は平気でも、貴族区でモンスターが現れた事態が大事なんだよな)」

「もし宜しければ、王都の外で会いましょう」

「そうしてもらえれば。明日、ルータさんの都合が良ければお連れします」

「ええ、よろしく頼みます。私しも少し気になる事があるので」

「はい」

 ちょうど話の区切りがついた頃、ルータを呼びにジルバがやって来た。
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